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超空間へ

「ぜは――――ッ! ぜは――――ッ!」


 超加速の後、デュークは荒い排気――液体水素を溶かした冷却材を漏らしていました。12個の縮退炉から漏れ出るエネルギーは推進器官を大加熱させ、放熱板だけでは排熱が不足していたのです。


「ぜはっ………………加速は凄いけれど……これ、危険すぎる……ぜはぁ……あ、後方から接近する物体――――ナワリン達が追いついてきたな」


 加速をやめたデュークのところへ、ナワリン達が追いついてきたようです。


「ああ、やっぱり息切らしてるじゃない。全部の縮退炉をリンクさせたら、そうなるわよ。とっても危険なのよ!」


「推進器官が完全に暴走してたよぉ~~龍骨にダメージ入ってないな~~?」


「うん、一応、大丈夫……かな?」


 超加速の影響は排熱だけではなく、デュークは龍骨が少しばかり悲鳴を上げるのを感じていました。彼のカラダはまだ若いのでそうそう壊れるものではありませんが、艦体にダメージを与える行為は慎むべきでしょう。


「あら、お腹ぽっこりさんが、直ってるわね」


 ナワリンがデュークのお腹を見ると、ポコンとしていた部分が元に戻っていました。


「全力で航行したおかげで、縮退炉の位置が調整されたのかもしれない。おかげで、通常航行の推力比も直ったよ。普通に飛ぶ分には問題なさそうだ」


 デュークはクレーンを使って自分のお腹をポンポンと叩き、推進器官から伸びるノズルをフリフリさせ、プラズマを吹き出しました。その勢いは彼の巨体に十分な加速与えています。


「それは、怪我の功名というやつね」


「でも、無理しちゃ駄目だよ~~若いうちにガタが来るよ~~!」


「う、それは嫌だな。これからは、気をつけるね」


 龍骨の民のカラダは冗長性に優れたものですが、いつも全力加速をしていては、すぐに壊れてしまいます。デュークは、カラダの調子に折り合いをつけながら宇宙を飛ぶということを学びました。


 さて、そのようにして、デュークが自分のカラダの調子を改めていると、速度の乗った彼らは、すぐ星系外縁部に到達します。


「超空間航路の管制センターはっと……あそこか。フネが少ないから、すぐに超空間に入れるね」


 管制センターからは、超空間に入るのに適した地点のデータが届きました。それと合わせて、超空間内の状況も伝わります。


「中は、時化(しけ)ってるって~~」


「このあたりの超空間は、難所だって聞いたよ」


「エーテルの乱流がたくさんあるのねぇ」


 デュークらはセンターからもたらされた情報を確認するのですが、超空間航路の天候はあまりよろしくないようでした。


「まぁ、とにかく入ってみよう」


 三隻は、いつもの通り、色を龍骨に乗せて、素数を数え始めます。しばらくすると、超空間の入り口がズバッと開くと――


「うわっ!」


 ――入った途端に、エーテルの大波が押し寄せて来るのです。デュークは慌ててスラスタを調整しました。


「ものすんごい、がぶってる~~!」


「これは想像以上ね……エーテルの濃度が高すぎるわぁ」


 ペトラとナワリンも波に正対するようにカラダを調整しつつ、周囲の状況を確かめてるのですが、思ったよりも超空間の状況はよくありません。濃いエーテルが艦体にビシビシと当って痛みを感じるほどなのです。


「うーん、次の星系の出口はあっちか……でも、直接進むのは危険だなぁ。乱流に巻き込まれたら、とんでもないところに流されそうだ」


 デュークはエーテルに満たされた航路の道筋を確かめ、直接進むルートは危険だと判断しました。


「そうねぇ……あそこに伸びるエーテルの流れを伝って、エーテル溜まりまで行ってみるのはどう?」


 ナワリンは、目的地の方向からは微妙にズレた流れを指しました。その流れに入れば随分と時間がかかるかもしれませんが、流れの先が見えているのです。


「大きく迂回するけれど、それがいいかも~~!」

 

 ペトラもエーテルの流れを見極めて、それが正しい進路だと感じました。


「そうだね、先が見えているってのは大事だね」


 デュークは煌めいているエーテル流の先を見つめて、艦首を頷かせたのです。


「じゃぁ、行ってみようか」


 デュークたちは、エーテル流に近づくと、本流に巻き込まれないように慎重にカラダの位置を修正しながら、流れに沿って飛び始めました。


 初めて超空間に入ったときは、先導艦――フユツキの力を借りて航行していた彼らですが、もう自分たちだけで進むことができるまで成長していたのです。

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