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コクピットでの会話

前回のあとがきで、ガールズトーク回と言いましたが――

「あれは嘘だ!」(コマンド―風

……大変申し訳ありません。そのような会話回を書こうとしていたら、全然違う方向に進みました。この一週間、仕事ばかりしていて、それが影響していたようです(言い訳

「共生宇宙軍の管制下に入ったよぉ~~」


 電波管制が、民間の物から軍のコントロールに替わりました。デューク達を乗せた高速艇は、連合首都星系第6番惑星の軌道に近づいています。


「軍艦が増えて来たわね。あと1時間くらいで、帰投できるかしら…………ところで――――メリノーさん、全然止まらないわね」


 ナワリンが後部座席に座っているメリノーを見ながら、呆れたような声を上げました。


 執政府の用件があるといって、「ついでだから乗っていくぞ」などと、根拠地まで相乗りしているヒツジ面のお役人――メリノー上級按察官は、手元に置いた端末にせっせと何かを打ち込んでいました。


 彼はデュークの状態が安定してからは、ずっとなにかの作業をしています。休日の設定時間を過ぎて、本来の業務に関するメールが大量に舞い込んでいたのです。


「お仕事だって~~偉い人は大変ね~~」


 ペトラは座席の上でフワフワと浮かびながら、メリノーの白い毛が生えた両手がせわしなく動き、大量の情報を処理しているのを面白そうに眺めていました。


「はぁ~~器用だな~~、こんな風に活動体の指を動かせたらなぁ~~」


 メリノーの指は、一本一本が別々の生き物のように動いています。


 ペトラ達の活動体は細かい作業をするための物でもありますが、どちらかと言うとモノをシッカリと掴んだり、握ったりと、繊細さよりも力強さに重きを置いた形をしています。


「でも、大変よねぇ。私たちだったら、情報を龍骨で処理すればいいから、こんなことしなくてもいいのにね」


 ナワリンの言う通り、龍骨の民は電子情報を直接取り込んで、龍骨やカラダの中の副脳で処理するので、メリノーのように指をカタカタと動かすことは稀でした。


「頭に情報インプラントを入れて、それで処理すればいいのに」


 ナワリンは、そのような技術があることを共生宇宙軍の講義で教わっていたので、メリノーが生身のカラダでカチャカチャカチャカチャと、せわしなく情報を処理するのが不思議でなりません。


 メリノーの頭は動かず、特徴的な縦型の瞳(鯨偶蹄目の眼球)が、クリクリと有機的に動いてもいましたから、自前の頭で考えて仕事をしていることが伺えます。


「執政府のお役人は、脳内インプラントを制限されとるからの――ふはは」


 コクピットの後部に座っている岩石種族のトックスが、ゴツゴツとした口の端に大きな笑みを浮かべながら言いました。


「そうなんですか?」


「セキュリチーの都合じゃとよ」


 トックスは、執政府の上級役職者は、ハッキングを防ぐために脳内インプラントを制限されていると、教えました。


「ん――? 元から頭の中に同じような物入れている種族は、どうするかしら?」


「お前さんら、おフネさんとかか? 物理的に取り出すのじゃよ」


 トックスは頭に指を立てて、ゴォリゴォリとなにかをほじくり返すような仕草をしました。


「うげっ、それって副脳をってこと……」


「そじゃな」


 龍骨の民は、その頭脳である龍骨の他に、航法や戦闘用の副脳を複数持っています。これらは厳重なセキュリティに守られていますが、完全ではありません。


「じゃぁ、スノーおば様なんかは……」


「おフネさんらの執政官かいな? そじゃな、ほとんど摘出しとるんじゃろぉな。だから、飛ぶのもママならぬカラダになっておると聞くぞい」


 トックスは、「連合に尽くすのも大変じゃのォ」と言い、次のような言葉を続けます。


「お嬢ちゃんたちも龍骨の民じゃからな、歳とりゃぁいずれ執政官になるかもしれん――いまから、覚悟しとくんじゃぞい」


「断固、お断りします!」


「私もやだ~~!」


 ナワリン達は、絶対ヤダ! と声を揃えるのでした。龍骨の民が政治に関心がないというのは、もしかしたらお偉いさんになったら跳べなくなるのが嫌だから、なのかもしれません。


 そこでメリノーが、顔を上げました。


「ふぅ――――取り急ぎの処理は終わったぞ! 引継ぎはいつも面倒だ」


 嘆息した彼は、手を合わせて疲れ切った指をモミモミします。そしてグッと拳に力を入れると構えを取って、シュパッシュパッ! と両腕を振るいました。


「衰えておるのぉ」


 メリノーの拳の動きを見ていたトックスが、「なんじゃそれは……」などと眉をしかめました。


「ははは、端末を叩くばかりの仕事ですからな。些事はAIに任せてはおりますが、自分でやらねばならないことも多いのです」


「あ~しんど」と言ったメリノーに、ペトラがどこからか取り出したぬれタオル(おしぼり)を「お疲れ様です~~」と手渡しました。


「おっと、気が利くじゃないか…………ふむふむ…………フガフガ」


 メリノーは、渡されたおしぼりを使い手をもんだ後に、湿った鼻づらが乗る顔面をぬぐいました。ナワリンの龍骨には、「おっさん臭い」というコードが浮かびましたが、口には出しませんでした。


「ところで、メリノーさん。執政府の人が根拠地に用事って、どう言うことです?」


「ん? それは、私の仕事に関係があってね」


「えっと、上級按察官ですよね?」


 ナワリンが龍骨の中にあるコードを確かめます。すると、「上級按察官とは――かなり偉い人。頭低くしておけ」などという、ぼんやりとした情報が浮かぶのです。


「ッ! このコードなによ――――時折いい加減な情報を吐くの、やめて!」


「ははぁ、それは君の祖先の記憶だな?」


 コード――龍骨の民が持つ自然と持っている基本情報は、航宙や戦闘に関わるもの以外は、結構いい加減なものでした。


「君の祖先の誰かが、そのように覚えたものだからな。しかたがない――ん、なんだね、ペトラ君?」


 メリノーがペトラがピシッと腕を上げて、何か言いたそうにしているのに気づきました。彼は、「はい、ペトラちゃん。どうぞ――!」と促します。


「ほ~い! 上級按察官とは~~星系内管理を行う執政府の上級職でぇ~~執政府ならびに執政議会の許可が必要なほど重要な役職~~? だよね?」


「おぅ……そうだ、正解だ」


 ペトラが実にいつも通りの間延びした調子で、コードを読み上げました。でも、その情報は実に正確なものだったのです。


「ふむ、ペトラちゃんのご先祖の方が、そういうことに詳しかったようだな」


「えへへ、ご先祖様に感謝~~!」


「でも、最後に疑問符がついてるから…………あんた、理解していてないわね」


 ナワリンがツッコミを入れますが、ペトラは気にせず、わ~い! と腕を上げてガッツポーズするのでした。


「ははは、ただ、その役職とは関係ないのだよ。私の次の役職が――――うわ、また新しいメールが入ったぞ……」


 メリノーが答えようとした時に、ピッ! と着信音がなりました。手元の端末をチロリ眺めた彼は、また処理作業に取り組みはじめるのでした。


「う~ん、ホント大変そう~~ところでさ~~お師匠様も用事があるんだよねぇ?」


 メリノーが師匠と呼ぶトックスですが、何のために同乗しているのかナワリン達には、よくわかっていません。


「ふぅむ、貨物室(カーゴベイ)で眠っておるおフネさんのせいじゃよ」


 トックスは高速艇の貨物室で、繭に包まり眠りについているデュークの名を上げました。


「へ? デュークとどんな関係があるの?」


「正く言うとなぁ………………ん、んん?」


「どうしたの?」


 トックスが、突然後方を振り返りました。彼のガチガチに固まった顔面に空いた、穴のような鼻がヒクヒクしています。


「な~~んじゃか、焦げた匂いがせんかのぉ?」


「スンスンスン――う~ん、なにかを焦がしたような香りがする~~!」


「え――あ、ホントだ。焦げ臭いわ…………」


 何かが焦げたような香りが、操縦席に漂っていました。そして――


「あ……カーゴベイに火災警報!」


「デュークがいるところ~~⁈」


 ――コクピット内に、アラートが鳴り響き渡るのでした。

次回、貨物室炎上!

原因は――わかりやすいですよね。


さて、Covid19の影響で、リアルがもう色々と大変でした。久しぶりに残業残業残業――! 覚えている方がいるかわかりませんが、第五艦隊ステーションのAI並みに処理せにゃならん事があり、キレッキレッの毎日でした(なお、アレは筆者がモデルです

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