活動体、フネのミニチュア その4
「うわぁ、なんて大きなフネなんだ……」
デュークの視覚素子に、大きなフネが二隻、くっきりと映っています。
「あっ、これって……ゴルゴンじいちゃんとオライオじいちゃん!」
一本一本に個性があるクレーンを何本も備えた工作艦と、やや古びた商船型――それは、いつも見慣れたおじいちゃんたちの姿でした。
「でも、いつもよりずっと大きい……山みたいだよ……」
ゴルゴンが朗らかに笑います。
「ははは、私たちが大きくなったのではないぞ。お前の身体が小さくなったのだ」
「あっ――」
デュークは自分の身体を見下ろして、ようやく気づきました。
ふわふわ、もこもこした感触。そして、視点の低さ。
今の自分は、あのミニチュア――活動体の中にいるのです。
「そっかぁ……僕、活動体になってるんだ」
デュークは、初めて味わうこの身体の軽さと視界の広さに、わくわくしながら周囲を見渡します。
天井は遠く、ネストの壁も遥か向こう。
作業場に並んだ工具や機械が、自分よりもずっと巨大に見えました。
「ネストが広いよ! いつもと全然ちがって見える――!」
「ふむ。では、後ろを振り返ってみなさい」
ゴルゴンの声に従って、デュークは活動体をクルリと旋回させます。
すると――
「……あいたっ!」
ポコン、と舳先が何かにぶつかりました。
「なんだこの壁?」
目の前には、白くて高い壁がそびえていました。
その高さ、およそ50メートル。横幅は、目測で250メートル以上。
「でっか……壁っていうか……」
デュークはペシペシと叩いてみます。ツルリとした感触が伝わってきました。
「少し下がって、確かめてみると良い」
ゴルゴンの言葉に従い、活動体のスラスタを吹かして後退します。
ゆっくりと視界が引いて――
「あっ……これ、フネだ!」
それは壁などではなく、一隻の巨大なフネの船腹でした。
全長250メートル。高さ50メートルの、まさしく山のような艦体――
「これって……」
デュークは、はっとして目を見開きます。
「……僕だ――――!」
自分の巨大な本体を、外から見上げる。
その圧倒的な存在感に、デュークは思わず声を漏らしました。




