活動体、フネのミニチュア その3
「よし……取り出すぞ」
摩耗したドリルを差し替えること数回、バキン! という硬質な音が鳴りました。
「口の中のものを吐き出しなさい」
「モグモグ……ペッ!」
デュークがペッと、口内のものを吐き出すと、白い膜に覆われた数メートルほどの塊がゴロリとネストの床に転がりました。
ゴルゴンはそれをつまみ上げ、ハサミでジョキジョキと切り始め、中にあったものを取り出します。
「ほぉ、よく育っておるな」
「ほぉ、真白じゃのぉ」
「なぁにそれ?」と
デュークがゴルゴンの手元を覗き込むと――
「あ、小さなフネだ。これって、もしかして!」
「そうだ、お前自身の活動体だ」
――デュークの姿がそのまま小さくなったような活動体があったのです。
「龍骨の民は、体内で活動体を生成するのだ」
「知らんうちに、こうやって生えてくるんじゃよ」
幼生体が成長すると、ある時期にカラダのどこかに活動体が生えてきます。大体歯の辺りに現れて来る事が多いようです。
「へぇ、僕ってこんな形をしてるんだねぇ~~すごい~」
デュークは自分のミニチュアをマジマジと眺めて、感心しました。
「これって僕のカラダの一部なんだよね?」
「そうだ、思念波を使えば思い通りになるのだ」
「どうやるの?」
「まずは、目を閉じて念じるのだ」
ゴルゴンが「試してみなさい」と言うので、デュークは自分の活動体を床にそっと置き、目を閉じてかすかな響きを持つ思念波を発しようとします。
「動け――」
でも、デュークのミニチュアはピクリとも動きません。
「うごかないや」
デュークは思念波をもっと大きくしなければいけないのかなと思いました。
「うごけ――!」
気合の入った思念波が放射されている――のかもしれませんが、それでも活動体は動いてくれません。
そんな様子をじっと眺めるゴルゴンが言いました。
「動けではない。動かすものではない。中に入るような、そこに自分を移すようなイメージを持ちなさい」
「自分自身……」
ゴルゴンのアドバイスを受けて、デュークは思念波を用いながら、活動体の中に潜り込むようなイメージを持ちました。
「僕自身――活動体は僕自身――」
すると、何かがブワリと広がり、ドクン! とした震えが起きます。
「なにこれっ⁈」
デュークは不思議な感覚が自分の龍骨の上を走っていくのを感じました。
「活動体との間に思念波のリンクが出来たな。よし、目を開けるのだ」
デュークは恐る恐るバイザーを開けたのです。




