活動体、フネのミニチュア その2
”診療所。現在、休憩中――緊急の場合はノックすること!”
ネストの発着場の近くに、そのような文字の浮かんだ電光プレートが掲げられている部屋がありました。
「ドクはおるか――!」
オライオが部屋の扉をドンドンドン! と勢いよく叩きます。
すると、ガキン! と機械音が鳴って扉が開き始めました。
「おお、オライオか。どうした? ドクはお昼寝中だが」
「なんじゃ、また寝ておるのか……さすがに年じゃなぁ」
診療所の端の方を見ると、随分と古びたフネがグゥスカと寝ていました。
そこにデュークが、口を押えながら、入ってきます。
「おや、デューク。どうした?」
「お口の中が変なの……」
口元を抑えたデュークが、目を歪ませていました。
「痛むのか?」
「うん、ちょっぴり……それから変な感じもする」
「ほぉ、そんな時期か、早いものだな」
「おぅ、ゴルゴン、お前さんで処置できるだろ?」
「ふむ……まぁ、まだ医者としては見習いではあるが。やってみよう」
そう答えたゴルゴンは、沢山のクレーンを――現役時代、共生宇宙軍の工作艦として縦横に振るった腕を持ち上げます。
一般的な龍骨の民に比べて、数が倍ほどもあるクレーンの手の先には、巨大なドリルやら、ハンマーや、注射器のような様々な機能があると思われるアタッチメントが付いています。
「デューク、あーんしなさい」
「ふぇぇぇ、何をするの?」
ドリルがギュルギュルと回転し、ハンマーがギラリと鈍く輝き、鋭い注射器がジョキリと動いています。
デュークは「怖いよぉ」と泣きそうになりました。
「早くしないともっと痛くなるかもしれんぞ?」
「え、そうなの……」
ゴルゴンが穏やかに諭すので、デュークは意を決して口を開きます。
「おっと、ここあるな――では、麻酔を掛けるぞ」
ゴルゴンは注射器をデュークの口内に付き入れます。
プスッ! という音が鳴ると、デュークの口内の感覚の一部がマヒ――
デジタル信号の体内感覚がシャットダウンしました。
「ふがぁ……」
デュークは声を漏らそうとするのですが、口が麻痺してうまく言葉になりません。
「落ち着け。口内の神経回路を遮断するナノマシンを投与しただけだ。もう、痛みは無いから安心しなさい」
ゴルゴンはそう言うやいないや、手にしたハンマーをデューク奥歯――超硬金属で出来たそれにあ思いっきり叩きつけます。
デュークは、ガィィィィン! という響きが起こるのを感じますが、痛みは全くありませんでした。
「ふぉんとだ!」
「さて……」
ゴルゴンはドリルの回転数をギョルルルッ! と上げて口の中に突っ込みます。
そして、口の中でドリルが回転し、ゴリゴリゴリゴリ――!
超硬質な歯が徐々に削れゆく音が鳴り始めました。
「ほががががががが……」
そのようにして、デュークは僅かに涙目になりながらも、処置が終わるのをジッと耐えたのです。