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目覚め


その昔、1人の神が、1つの星を造った。その神はその星に植物と生物を造り、そして人類を造った。その後、その星の上空に神の住まい、天空浮遊島アレスタトリアを造り深い眠りについた。


そして、時代は、約7000年後に飛ぶ。


第一章 契約守護獣

王都アルトリアにあるアルトリア契約守護獣学園は、国中の守護獣使いのひよっこ達が集まる学園だ。この星には魔獣と呼ばれる凶悪な生物がいる。その魔獣と戦うために守護獣使い(ビースト・ガーディアン)という限られた者にしかなることができない職業が存在する。そんな世界の中にある、とある学園の学生寮の一室で・・・。

「ふっふっふ。この魔導書があれば伝説の守護竜と契約できるわ!!」

紫色の長い髪を持つ少女は一冊の本を手にしていた。

「この本、禁帯出ってかいてあるけど、すぐに返せば問題ないよね♪」

と、その少女は召喚魔法の準備をし始める。

少女の名はセリス。アルトリア契約守護獣学園の生徒だ。長かった冬も終わり、植物の新芽が出るには少し早い時期、学園内では二年生へ進級するため、慌ただ様にみられる。それもそのはず、この学園では、二年生に進級するためには守護獣と契約する必要があるからだ。そしてー。

「♪~♪~」

「よしっ。これで私も落第しなくて済むわ~。」

「さ、始めよっと。」

セリスは魔法陣を描き終え、呪文を唱え始める。その魔方陣にはあらゆる結合部分に、ターフェ鉱石という高価な鉱石が置かれていた。おそらく魔力伝達媒体であろうそれは、かなりの額になることが予想されるほどの量が用意されていた。

「我が名はセリス・ロナルスセント。その名において汝を呼び出し、契約を結ぶことを願う。召喚せよ!其の名は黒紫龍ルナデューク!!」

セリスが呪文を唱えたその瞬間、魔法陣が輝きだし中から何かが

現れた。

それはー。

「Zzz~」

寝ていた。

「えっ!?なんで寝て...って言うか誰っ!?」

予想外の事態にセリスは困惑し、とにかく起こそう、そう思った。

「このっ、起きなさいっ!」

ぺちぺちぺち。

胸ぐらをつかみ両頬を軽くたたく。

「んぁ?」

と、気の抜けた声をはっし、それは目を覚ます。

「やっと起きたわね。で?あなたはだれなのよ?」

それは少年だった。しかし、よく見ると額には濃い紫色で10センチ程の鋭い角があり、腰のあたりには漆黒の鱗に覆われた淡い紫の光を放つ竜のような尻尾がある。そして、体には銀の着物のようなものを纏っていた。

「ふぁぁぁ~。」

その少年はあくびをした。眠たそうにゆっくりと瞼が開かれる。

「ちょっと聞いてるの?」

「ん?ああ、聞いてる聞いてる。で、なんだっけ?」

「聞いてないじゃないの、もうっ、あなたは誰って聞いてるの。私は伝説の竜、黒紫龍ルナデュークを呼んだつもりなんだけど。」

「黒紫龍ルナデューク?」

と、少年が片眼をつぶり、伸びをしながら聞き返す。

「そうよ。あなた知ってるの?」

あぁ、と言いその少年はこう言った。

「知ってるも何も、そいつは俺だよ。」

少年は何でもないかのように答えた。しかしセリスは、この人大丈夫かな?とでも言いそうな顔をし、あからさまに眉をひそめた。

「はぁ?何言ってんの?私にそんな冗談は通じないわよ。」

それもそうだ。竜を呼んだと思ったらそこには見知らぬ少年がいて、しかも自分が竜であると言い出したのだから無理もない。

だが、少年はそれに反論した。

「何言ってんだよ、俺をよく見ろよ。」

「・・・。」

セリスは急に黙り込んだ。

「?どうした?」

その少年が訝しげにきくと、少し顔を赤く染めながら答えた。

「アナタニハ、ソノヨウナシュミガ、オアリデ・・・?」

「ちげーよ!!」

「そうじゃなくて、特徴を捉えろってんだよ!」

セリスはなるほど、そういうことかと納得した顔になりすぐに、でも、と切り出した。

「特徴って、角と尻尾だけじゃない。」

「確かにそうだけどな、その本に載ってなかったか?黒紫龍ルナデュークは黒と紫を基調とした色をしているってさ。」

「確かにそうだけど・・・」

セリスがまだ納得のいかない顔をすると、その少年はこう言った。

「まだ信用してねえな。なら俺が黒紫龍だってことを証明してやるよ。」

というが早いか、今までどこに隠していたのだろうか、部屋を覆い尽くすほどの翼を広げ何かをつぶやき始めた。

「・・・・・・。・・・・・・。・・・・・・。」

すると、少年の右手の周りに紫の光が集まり始め、カッと輝いたかと思うと、手には一振りの剣が握られていた。

「そ、そ、それはッ!!」

セリスの目が驚きに見開かれ、数歩後ずさる。

「龍剣ルナティック!!」

「そうさ、これを持ってるってことが何よりの証拠だろ?なんたってこれは俺の、ルナデュークの固有装備(オリジナルウェポン)なんだからさ。」

「じ、じゃあ本当にあなたが黒紫龍ルナデュークなの・・・?」

まだ信じられない、という風にセリスが声を震わせながら尋ねる。そして、少年はこう言った。

「そうだよ。それで?俺と契約結ぶんだろ?」

「え、いいの?」

「いいぜ、別に。っていうか何のために俺を呼び出したんだよ?」

「まあ、そうだけど・・・・・・」

「じゃあ早くしようぜ、早く、早く。」

「あの・・・・・・。」

と、何かを言いたそうにするセリス。

「ん?どうした?」

「いなさらなんだけど、」

「え、なにが?」

「もう契約されているの。」

一瞬時が止まり・・・・・・

「え・・・・・・。マジ?」

「うん」

少し気まずそうな顔をするセリス。

そしてその少年は言った。

「・・・。」

「・・・。」

「まいっか」

「いいのかいっ」

セリスは思わず突っ込んでしまった。あまりにもあっさりとしすぎたからだ。

「それじゃ、改めてよろしく。あと、俺の名前は長いから省略してルナクでいいよ。」

「私はセリス。アルトリア契約守護獣学園の生徒よ。二年生へ上がるためにあなたを契約守護獣として呼び出したの。」

と、気を取り直して言うセリス。

「へぇ、なるほどそういうわけか。」

「てことはお前16歳か。」

「うん。」

と答えながらセリスは思った。

(こいつのこと、なんてよべばいいのかしら?呼び捨てでルナク?でも一応伝説の竜らしいから様をつけたほうがいいのかな?)

「ん?どうした?」

と、急に黙り込んだセリスのことを不思議そうに見てくるルナク。

(でもまぁ、こんな軽い感じだし呼び捨てでいっか。)

「いや、何でもないわルナク。それより、おなかすいてない?今から食堂に行くのだけれど。」

「お?確かに腹減ったしな。じゃ、その食堂とやらに行こうぜ。」

「でもその前にあなたの着るものをどうにかしないとね。私の持ってる服はそんなにないからぁ、どうしよう?」

「え?これじゃダメなのか?」

と、ルナクが、銀の着物のようなを、ぱたぱたっとさせる。

「それじゃ目立ちすぎるのよ。銀色で無駄に輝いてるしね。」

「えー、これでよくね?てゆーか俺、これしか着るものねえよ。」

と、言いながらルナクは着物に手をかける。

「うーん。絶対にダメっていうわけじゃないし、ま、それでもいっか。ルナク、やっぱり

それでもいいわよ。」

「え、いいのか?」

と、ルナクは少し含みのある言い方で確認をとった。

「うん。道中私がいろいろ聞かれるだろうけど新しい服を買うお金もおまりないから。」

「まあお前がいいっていうんならいいけど。」

とルナクは安心した様子で言った。

「?ルナクがそれがいいって言ったんじゃない。」

「まあ、いいさいいさ。それよりも早く食堂行こうぜ。」

と元気を取り戻したルナクが言う。

「?」

セリスはさっきのやり取りは何だったのだろうか?と疑問に思い首をかしげながらもルナクを学園食堂へ案内するのであった。


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