魔法少女マジカル☆ケロリン
どうも初めまして、なろう初投稿になります。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
また、感想、批評、誤字脱字報告は大歓迎です。
それではどうぞ、ごゆるりとお読み下さいまし。
「きゃああああああ!! 助けてええええ!!」
真昼間の繁華街に、悲鳴が響き渡る。
慌てて逃げ出す人の波を嘲笑うかのように、第二の太陽とでも言わんばかりに太陽光を反射するスキンヘッドの男は、黒いスーツ姿で悠々と繁華街を闊歩していた。
「ふはははは! 日本に住む、全ての雀士のツモを無駄ヅモに変えてやるヅモ!」
そして、その男の周りでは、黒い全身タイツに身を包んだ戦闘員が、その片手に持つ竹刀や鉄パイプ、或いはモンキーレンチで、繁華街に立ち並ぶ店のガラスや、自動販売機などの破壊に勤めている。
この破壊活動が麻雀のツモとどう関係があるかなど、誰も理解しえないところではあるが……。
「そんなことはさせないわ!!」
逃げ惑う住民を背にスキンヘッドの男の前に立ちはだかったのは、一人のブレザー姿の女子高生であった。
茶色のセミロングの髪と紺色のプリーツスカートを風に靡かせ、仁王立ちしている。
「何だお前はヅモ!! この怪人無駄ヅモー様が怖くないと言うのかヅモ!!」
スキンヘッドの男――怪人無駄ヅモーはその女子高生を指差し、怒声を放つ。
戦闘員達も破壊行動を一旦中断し、彼女を取り囲むように移動する。
だが、彼女は怯むことはなかった。
「良い度胸じゃないかヅモ! 名を名乗れヅモ!!」
「生憎だけど、怪人に名乗る名前なんて持ち合わせてないわ!」
女子高生はそう言い放つと、ブレザーのポケットからスマートフォンを取り出し、タッチパネルを操作した。
≪声紋センサー起動、コードを音声入力して下さい≫
「けろりん、けろりん、けろけろりーん!」
無機質なガイドボイスの後に続き、女子高生はスマートフォンを掲げ、高らかにそう叫んだ。
≪認証完了。変身プログラムを起動します≫
すると、彼女が身にまとっていたブレザーは緑が基調になり、更にフリルとリボンがあしらわれ、中のブラウスは襟と袖口と裾にフリル、プリーツスカートはこれまた緑を基調としたギンガムチェックの三段フリルのジャンパースカートに、最後にネクタイが大きな真紅のリボンに変わったのである。
「アナタのハートをブロークン!! 正義の魔法少女、マジカル☆ケロリン! さーんっじょう!」
両頬の前でダブルピースし、マジカル☆ケロリンはウインクをした。これが彼女の決めポーズである。
「な!? お前は……マジカル☆ケロリン!!」
無駄ヅモーは、その何とも言えないキュートな変身シーンに圧倒され、三歩ほど後ずさった。
「日本中の雀士が麻雀を楽しめる、よ、う、に、アナタを漏れなく滅殺しますのでー、そこんところ、よろしくネ!」
彼女が指を鳴らすと、先端にデフォルメされたカエル頭が付いたステッキが空から舞い降り、その右手に収まった。
「せ、戦闘員共! あいつをやっつけるヅモ!」
無駄ヅモーがそう叫ぶと、戦闘員達はマジカル☆ケロリン目掛けて走り出す。
だが、彼女は余裕の笑みを浮かべ、竹刀や鉄パイプ、或いはモンキーレンチを振り被って向かってくる戦闘員を次々と殴り倒していく。
「こんな戦闘員括弧笑では、私は倒せないわよ?」
マジカル☆ケロリンは、ステッキをブンブン振り回し、戦闘員全てを地面に叩きつけ、最後に残った無駄ヅモーと再度相対する。
「仕方ないヅモ。なら、私も本気でいかせてもらうヅモ!!」
無駄ヅモーは、スーツの胸ポケットに入っていたサングラスを装着し、雄叫びを上げる。
それと同時に、スーツのジャケットや、中に着ていたシャツが破け散り、無駄ヅモーの三倍増しになった強靭が肉体が露わになった。
「サングラスを装着しただけなのに……パワーが三倍に跳ね上がっただなんて!?」
マジカル☆ケロリンは無駄ヅモーの圧倒され、思わずバックステップで距離を取ってしまった。
「ふはははは!! 降参するなら今の内ヅモ」
無駄ヅモーは腕を組み、仁王立ちする。
「そんなの……するわけないじゃない!」
ステッキを振り被り、彼女は開いた間合いを一瞬にして詰め寄った。
「頭カチ割れろ!! ハードヘッドショット!!」
凄まじい衝撃と共に、振り下ろされたステッキが無駄ヅモーの頭を強打した。
――――と、思われたが、それは彼の腕に阻まれ、傷一つ付けることなく静止していた。
「その程度の攻撃など効かぬヅモ」
そして、もう片方の振り上げらていた拳がマジカル☆ケロリンを突き飛ばす。
「きゃああああああ!!」
彼女は一直線に数十メートルほど吹き飛ばされ、T字路の突き当りにあるビルの壁に打ち付けられた。
幸い、コスチュームから自動展開されたオートケロシールドによって、無駄ヅモーの強烈な一撃は直撃を免れたものの、変身継続時間を示すエムピーが大幅に消費されてしまった。
「くぅ……」
マジカル☆ケロリンは下唇を噛み締め、ふらつきながらも立ち上がる。
「ほぅ……まだやるヅモ?」
壁に打ち付けられたダメージで、彼女の視界は霞み、無駄ヅモーを正確に捉えることが出来なくなっていた。
だが、それでも彼女は諦めない。否、諦めることが出来なかったのである。
日本中の雀士が無駄ヅモばかりし、麻雀を楽しめなくなってしまえば、やがて麻雀をする人が少なくなり、最終的には麻雀というテーブルゲームが滅んでしまう。
そんな未来の方が、彼女には耐えられないものなのであった。
故に、痛む体に鞭を打ち、彼女は立ち上がる。
だが、ステッキを支えにして立っているだけが精一杯で、とても反撃出来るような状態ではなかった。
「私は、絶対に負けない……。負けるわけには……いかないのよ!」
無駄ヅモーを見据え、ケロリンは口の中に溜まった血を吐き捨てる。
「威勢だけはいいなヅモ! そんな威勢も何処まで続くか楽しみヅモ」
無駄ヅモーはゆっくりと近付き、彼女の抵抗などもろともせず、その頭をいとも簡単に摘み上げた。
「ちょっと! はーなーしーなーさーいー!」
そして、少しずつ力を加えていく。
「い、痛い痛い!」
痛みにもがくマジカル☆ケロリンを、無駄ヅモーは舐め回すように鑑賞する。
――――そのときであった。
マジカル☆ケロリンのスマートフォンに着信が入ったのである。
「ちょっとタイム! タイムよ! 電話だから降ろしてー!」
彼女は両手でT字を作り、一時休戦を要求した。
「今いいところだったのにヅモ。……電話なら仕方ないヅモ。なるべく早く済ますヅモ」
無駄ヅモーはその要求に応え、彼女を解放する。
そして、解放された彼女はすぐさまスマートフォンを取り出し、通話に出た。
「もしもし……って、ちょっとぉ、貴方盗み聞きするつもり? ちょっとは気を遣って離れてよ」
「……それは機転が利かなくて悪かったヅモ」
無駄ヅモーは第二の太陽と言わんばかりに輝かしいスキンヘッドをポリポリと掻き、小走りでケロリンと距離を取った。
「もしもし、博士?」
電話の相手は、コスチュームの開発や、デフォルメされたカエルの頭が付いたステッキを用意してくれた天才発明家、アマトノヅチ博士であった。
『おお、マジカル☆ケロリンよ。苦戦してると思ってな、新しい技を開発したんじゃよ』
「新しい……技? それは、一体どんな技なの?」
『エムピーを大きく消費してしまうが、超強力なビームが撃てるすんばらしい技じゃ! 名付けてスターライト・ケロ・バーストじゃ!! さぁ、早くそのスマフォーを操作して技を習得するんじゃ!』
「分かったわ! 博士! それと、スマフォーじゃなくて、スマホよス、マ、ホ!」
『ふむ、若者の言葉は相変わらず難しいのう。それはともかく、グッドラックじゃあ!!』
通話を切ったその指でスマートフォンを操作し、マジカル☆ケロリンはすぐさま新しい技を習得した。
博士の話では超強力なビームを撃てるはずなのだが、それがあのパワー三倍増しの怪人無駄ヅモーに効くかどうかはまた別問題ではある。
だが、彼女はやるしかなかった。やらなければ敗北は決定的なものになってしまう。
≪スターライト・ケロ・バースト、スタンバイ、オッケー≫
スマートフォンが無機質な音声でそう告げる。
「電話終わったヅモー?」
痺れを切らした無駄ヅモーが、ゆっくりと近付いてくる。
両手でデフォルメされたカエルの頭が付いたステッキをしっかりと握り、マジカル☆ケロリンは迎撃態勢を取る。
「仕方ない……。一か八かだけど、やるしかないわね……!」
彼女は自身の言葉に頷き、無駄ヅモーにステッキの先端を向ける。
コスチュームのオートケロリカバーが作動しているお陰で、彼女のコンディションは、まともに戦闘が行える状態にまで持ち直した。
これなら、しっかりとスターライト・ケロ・バーストの狙いを定められる。
「ええ! 電話は終わったわ!」
「なら、戦闘再開ヅモ!!」
無駄ヅモーはその体格に似合わないほど高速で接近し、その剛腕を振り被る。
「良い動きね! でも、動作に僅かにでも隙があるなら!」
マジカル☆ケロリンのデフォルメされたカエルの頭が付いたステッキの先端(つまり、デフォルメされたカエルの頭)が、無駄ヅモーの顎を突いた。
その威力の凄まじく、常人の三倍増しの体格であっても軽々と宙に浮き、無駄ヅモーは背中から地面に叩き付けられたのである。
「どれだけ体を鍛えても、顔だけは鍛えることが出来ないわ! それが貴方の弱点よ!」
そして、デフォルメされたカエルの頭が付いたステッキの先端を向け、マジカル☆ケロリンは不敵な笑みを浮かべた。
「こ、小癪な……ヅモ」
「さあ、これでトドメよ!! スターライト・ケロ・バースト!!」
彼女がそう叫ぶと、ステッキの先端に付いたデフォルメされたカエルが無駄ヅモーの方へと顔を向け大きく口を開き、光を蓄える。
「びぃいいいいいいいいむっ!!」
そして、デフォルメされたカエルの口から、瞬く間に超強力なビームが発射され、道路を削りながら無駄ヅモーを呑み込んでいく。
「こ、小癪なぁああああああヅモォオオオオオオ!!」
超強力なビームは数秒ほどで消え、跡には光に飲み込まれ黒焦げになった無駄ヅモーが倒れていた。
「お…おのれ……マジカル☆ケロリンめぇ……ヅモォ……」
無駄ヅモーは内側から光を発し、爆発四散した。
「これで日本中の雀士のツモが守られたわ! 今日もみんな、ハッピーデイズ!」
エムピーが切れ、変身が解けたマジカル☆ケロリン――もとい、一人の女子高生は天高く拳を掲げた。
ここまで読んで頂き、どうもありがとうございました。
作品自体は数年前に書き上げていたものだったのですが、FF14の休憩がてら加筆修正し投稿に至りました。
しょうもないものを読ませてしまったという自覚はあります、ゴメンナサイ。でも、また性懲りもなくつまらんものを投稿する次第です。
そのときは是非、また読んで下さると幸いです。
では、これにて失礼致します。