4話
メイに抱きしめられてる間に指輪の光は強くなっていた。胸が締め付けられるるような思いと繋がっているようだった。
ふとメイの背後から物音が聞こえる。何か大きなものが蠢いたかと思うとメイにナナと共に突き飛ばされた。
大きな物は地面に落ちていた斧を掴み、振りかぶる。メイはとっさに先ほどの魔法を放った。しかしその動きは止まらない、そのまま彼女の体を袈裟懸けに分断した。
「なん…、ばけ…の」
メイの体が崩れ落ちる。僕は小さな悲鳴をあげ、その光景を見つめている。
「メイさん……?」
返事はない。その体はもう動かない。メイの血が辺りに広がる。
一目惚れだった。メイは可憐で優しくて、メイに拾ってもらってから今日までの数日幸せで夢のような日々だった。
アンドリューも、キャリーも、ナナでさえ受け入れてくれた。僕の心にヒビが入る。
指輪がより強い光を発した。
大きな物が僕に向かって手を伸ばし、声を発した。
「指輪……ようやく……ようやく……このために俺は全てを犠牲にして……やっとだ!」
その言葉に僕は悟った。彼らは自らの指輪を狙ってこの村を襲撃した。僕のヒビは広がり、砕けた。
大きな物が再び斧を振るう。その刃は僕の左腕にめり込み、そのまま切断する。僕は痛みを感じずに、朦朧とする意識の中指輪を見つめていた。
指輪の光が少しずつ弱まってゆく。
少しずつ、少しずつ。
そして、消えた。
大男は少年に近づいて、指輪に手を伸ばす。
しかし、その手が指輪に触れたとたん動きが止まる。逆に少年が再び動き始める。その体の傷は塞がり、ぼんやりと緋色に光っていた。
そして。
大男の体が爆散した。
僕に触れた男が砕け散る。感情は揺るがない。ただ虚しさだけが残った。
ふと近くにいるはずのナナを見ると、彼女は暗い目で僕を見つめていた。
「あ……」
「返して……」
僕が声をあげようとすると、彼女が呟く。
「私の家族……返してよぉ……あんたの……せいで……ママも、パパも、お姉ちゃんも!」
悲痛な声で僕に訴える。しかし僕には何もできない。
「あんたがそんなもの持ってるから!なんで私の家族が!なんでよ!なんで!」
僕は何も答えられない。胸の痛みは増してゆく。
彼女が叫びを聞いたのかまた他の襲撃者たちが集まってくる。
集う襲撃者たちは少年に向かって襲いかかる。だが誰1人近づけなかった。1人1人破裂してゆく。体の中に爆弾でもあったかのように。
逃げ出す者も現れたが、少年の視界から外れないうちに破裂していく。
やがて、そこには少年と少女の2人だけになった。
少女はただ怯えた目で少年を見つめていた。
翌日、村を訪れた商人が少女を保護する。夥しい数の死体と血痕に囲まれながらその少女はただ1人、佇んでいた。