私の考えた乙女ゲーム。
まず、この作品は、お酒の席で友人と楽しく考えた作品です。
なので、特に中身もオチもありません。
オッサンが相手の乙女ゲームがあったらこんな感じ?とか、話しながらメモしたのを、深夜のテンションで書き上げお届けさせていただきます。
なので、苦情はお辞め下さい。
世の中、就職難のご時世。
様々な会社から《不採用》の通知を受け取った日々。
周囲がドンドン内定を出し喜びに染まる中、焦りに焦った私。
やけくそで応募した、ゲーム制作会社に就職出来てしまってから早数年。
良く分からない分野であるにも関わらず入社してしまい、男ばかりの社内で、
日々、怒声を浴びながら、必要書類のコピーやらコーヒー入れやら、文字の添削やらの下っ端作業を馬車馬の如くこなし、
やっとまともな仕事が回ってきたと思ったらコレだ。
やってられない。
そうだ、飲もう。
今日は飲もう。
盛大に飲んでやろう。
私に仕事を渡した上司も仕事の内容に困惑していたし、私がこの仕事を受け取った時の《絶望の表情》を見ていたのだから、明日、多少酒臭くても許してくれるだろう。
もう、本当にどうしたら良いのか分からない。
困りに困った私は、先輩からのアドバイスを求めて、夕飯を奢りながら先ほどまで話を聞いていた。
が、何の解決にもなりゃしねぇ。
むしろ、謎が増えただけだった。
そりゃそうだ。
我社はバトル物、冒険物のゲーム会社なのだ。
それなのに、
【女性がいるんだし、乙女ゲームの企画書出してみてよ。明日まで。】
って、頭いかれてんだろ、社長さんよ。
やったことねーよ、乙女ゲーム。
どうしろってーんだよ。
私は飲んだ。
そう、飲み続けた。
考えながら、飲み続けた。
そして、寝坊した。
急いで身支度を整え、ノーメイクで走る。
そんな私が小脇に抱えているのは
昨日、泥酔と眠気との戦いの中、書いては消してを繰り返して、なんとか形にした人生初の企画書である。
正直、酒の抜けた今となっては【正気か?お前・・・。】と言われるだろう品だとは分かっているが、たった1日で、それとなく形として整えたことは褒められるべきだと思う。
全力疾走で汗だくになりながら、ようやく会社に到着した。
勿論、寝坊での遅刻である。
私は怒られることを覚悟した。
が、皆は私に優しかった。
恐らく、皆も上司から話を聞いたのだろう。
私が【乙女ゲームの企画書を1日で書いて来い】なんて馬鹿みたいな社長命令を課せられたことを。
きっとそうだ。
眉無し、ノーメイク&ちょん髷ヘアーで爆走してきた哀れな女の姿に同情したなんてことはない筈だよ。
うん。
前髪上げてたの忘れてた。
既に私のHPは残ってないが、企画書は提出しなければならない。
二日酔いの頭に怒号を響かせられるのは正直ツライが、出さない訳にもいかない。
【当たって砕けろ!!】
とばかりに、私は人生初の自作の企画書を提出した。
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《乙女ゲームの企画書》
タイトル
【オジ様と恋しちゃえっ!!~マニアック編~】
以降、このゲームの名称を省略し《オジマニ》と称する。
まず、この《オジマニ》はファンタジーの世界が舞台である。
王族を中心とした貴族社会で成り立つ世界で、魔法や妖精、亜人、奴隷が存在する世界である。
そんな中、主人公は下町で食堂を営む優しい両親の娘。
看板娘の主人公は元気が良すぎる上に働き者で、友達と遊ぶことも少なく、男性とのお付き合いなんて考えたこともないような若い女の子。
そんな主人公が数々の《オジ様》と出会い、そして恋に落ちていく・・・。
※ハーレムを作るも良し、一人だけを溺愛するも良し、貴方のお好きにどうぞ。
【オジマニの特徴】
他社のゲームは煌びやかな王子様や魔法使いや近衛騎士、龍人やエルフ(亜人)などが相手に設定されることが多く《美形》《天才》《金持ち》という決定事項の上、《俺様》《腹黒》《ショタ》《チャラ男》などの若さゆえの設定が多数存在している。
それに対し《オジマニ》はオッサンを相手に恋していく斬新なゲームである。
《登場人物》
・主人公(15歳)
下町で両親が経営している食堂の看板娘。
家族構成は父(38歳)、母(35歳)、兄(18歳。将来、食堂を継ぐ)
・オッサン①
王子様、かと思いきや、王子様の御付きの料理人(42歳)
王子様は好き嫌いが多く、最近は食事を残されることが多いので、下町でも有名な、主人公の両親の経営する食堂に料理の偵察に来る。
気弱なタイプで敬語の少しヤツレ気味の優男。
我儘な王子様のせいで、日々、胃痛と戦う少し可哀想なオジ様。
台詞抜粋
『すみません、お嬢さん。』『い、胃が、、、。』『・・・少し照れてしまいますね。』
・オッサン②
近衛の団長、ではなくて、既に引退した老兵さん(56歳)
やることが無くて暇だからと、下っ端の若いのを育てる為に毎日 軍の訓練場に行く元気なオジ様。
のん兵衛で、酒の肴を求めて食堂に酒盛りに来るようになる。
熱血野郎なので、若い兵からは疎まれることもある。
豪快で些細な事は気にならない性格、鍛え上げた肉体だが、普通の兵隊レベル。
主人公から《酒臭い》と言われると落ち込む、少し可愛いオジ様。
台詞抜粋
『すまん!嬢ちゃん!もう一杯!』『歳にはかてねーなぁ。』『ガハハッ!照れんぜ!!』
・オッサン③
領主様?そんなはずないでしょう、炭鉱場の親方さん(52歳)
炭鉱場近くの食堂が無くなったので、主人公のいる食堂に通う事になった。
炭鉱場の皆から頼りにされていて、皆の父親のような人。
生傷が絶えず、炭鉱場で鍛えたゴツゴツとした分厚い手の持ち主。
喧嘩っ早いが情に厚く、騙されやすい所もあるのが難点だが、男から好かれるタイプのオジ様。
台詞抜粋
『悪いな。嬢ちゃん。』『今日も邪魔するぞ。』『オッサンを揶揄うなよ・・・。』
・オッサン④
宰相さん?まさか。研究職の下っ端さん(40歳)
自分のやりたい事しかしないので、未だに下っ端の地位にいる変わり者のオジ様。
食事に興味のない人なので、同じ職場の人が無理矢理連れてくる。
メニューを決めるのが面倒な人で、主人公に《いつもの》と頼む日々を送ることになる。
ヒョロヒョロで、日焼けなんかした事の無い真っ白な身体がコンプレックス。
皆には内緒だけど、動物(特に小動物)が大好きなオジ様。
台詞抜粋
『すみません、娘さん。』『眠い。眠い。帰りたい。』『なんで、私なんか・・・。』
・オッサン⑤
剣士!?んな訳ないでしょう、町の鍛冶屋のオジ様(43歳)
寡黙でゴツくて、人とほぼ話をしないタイプのコミュ障なオジ様。
声が小さいので、ちゃんと注文を聞き取れる主人公がいる時間帯を狙って来るようになる。
亜人や地位、年齢の差別はしないけど【女は護るもの】という少し古い考えの持ち主。
ハンマーを振るう右手が太いのと、目と耳が少し悪く、声も小さい。
自分から話はしないけど、話を聞くのも頼られるのも好きなオジ様。
台詞抜粋
『・・・悪い。お嬢』『・・・いや、大丈夫だ。』『・・・好きにしろ。』
・オッサン⑥
貴族のボンボン??違う違う、貴族の専属庭師のオジ様(48歳)
貴族のお家で雇われているからか、笑顔が絶えず、ニコニコとお話しするオジ様。
奥様のリクエストに答えるために、日々、お庭の手入れを精一杯頑張っているが、歳が歳なので後継者を育てつつ、忙しい日々を送っている。
なので、仕事が休みの日にだけ来店する。
庭師の仕事のおかげで細マッチョ、優しいタイプで沸点は高いが、怒ると怖い人。
自分の事を《オジサン》と呼ぶ、懐の深いオジ様。
台詞抜粋
『ごめんね、お嬢さん』『いい加減、歳だからね、オジサン。』『駄目だよ。オジサン、本気にしちゃうから』
・オッサン⑦
あれ?もしかして、お医者様ですか?いいえ、違います。なんとも怪しい薬師さん(38歳)
《フヒヒ・・・。》という言葉と共に、得体の知れない薬を売り歩くオジ様。
好奇心が旺盛なのか、食事は毎日日替わりで注文していく。
薬師としての腕は確かだが、言動共に怪しく、もっさい外套を着ているので、身体的特徴は不明。
とある薬を作りたくて頑張っているらしい。
話しかけてくる主人公が面白いのか、割と構ってくるオジ様。
台詞抜粋
『申し訳ないねぇ、おじょーさん。』『この薬、試しに飲んでみてくれないかい?』『フヒヒヒヒ!面白い子だねぇ!』
・オッサン⑧
ファンタジーで有名な虎や狼の獣人さん?いんや、鷹の獣人さん(年齢不詳)
貴族との喧嘩が原因で奴隷落ちしていたが、厳しい掘削場で働きまくって自分で自分を買い取った強者なオジ様。
お金に余裕がないので、主人公のお父さんと交渉して、買い出しの荷物持ちを手伝う代わりに食事を提供してもらってる。
普段は咥えタバコの気だるげな感じだが、獣人な上に掘削場で鍛え上げられた筋肉は相当なもの。
瞬間湯沸かし器の様な性格も変わっておらず、何かあると怒っちゃう。
猛禽類の目はこわーい!
でも、主人公ちゃんは小さくて傷つきやすそうなので、接する時には少し緊張しちゃう、優しさもあるオジ様。
台詞抜粋
『すまねぇ、お嬢』『めんどくせぇ。』『おい、本気か?本気なら相手してやんぜ。』
さあ、貴女は どのオジ様と恋をする?
【オジマニの問題点】
歳の差婚が流行っている昨今とはいえ、こんなオッサン達を相手に恋をしたい乙女達がいるかは不明。
よって、売れるかどうかは市場調査が必須だと思われます。
また、ビジュアルは美形か平凡か悩ましいところです。
(※今まで格ゲーやRPGで美形の青年や美少女を描いてきた先輩方に、《乙女ゲームのヒーローの役割をこなすオッサン》が描けるものなのか、謎です。)
オッサンの数を減らす際には、似たような性格のオッサンの中から選別すべきだと思われます。
ここまで《オジマニ》と名称してきましたが、《オジ様》というより《オッサン》な気がしなくもないので、【オッサンと恋しちゃえっ!!~マニアック編~】《オッサマニ》でも良い気がしてきました。
これが私の限界です。
これで無理なら、我が社の先輩方(野郎共)に企画書を出すように命令してください。
宜しくお願い申し上げます。
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以上、私が書き、提出した企画書だ。
見て分かっていただけただろう。
最初の段階から既に泥酔状態だ。
こんな企画書、あってたまるか!という状態である。
そもそも、私は企画書なんざ書いたことないし、形式さえ知らん。
更に、乙女ゲームをやったことがない為、様々なゲーム会社の乙女ゲームのサイトを巡り【他社とは違うものを!】で行きついた先が《オッサンをヒーローにする》という謎の思考回路。
完全に酔っ払いのなせる業である。
そんなこんなで、罵声を浴びせられるのを覚悟していた私だったのだが・・・。
何故か、社長は気に入ったらしい。
曰く、
【いいじゃん!!オッサンが相手だなんて斬新だし、このゲームが売れれば、自分も恋される側になれるのかと思えてドキドキしちゃうしね!】
なんて、ウキウキと話を進めちゃった、このオッサン。いや、社長さん。
その結果、我が社の社員(独身拗らせたオッサン共)は
【このゲームが流行れば、オッサンの俺達も恋される側になれるかもしれない!】
【《オッサン心》なら俺達に任せておけ!】
【ボイスは豪華にいくぞ!渋い声、美声を集めろ!!】
【絶対に、このゲームを売ってみせる!!】
と、謎のやる気を発揮し、全力でこのゲームを仕上げることになる。
更には、このゲームの売り上げ結果によって、世の中には《オッサン》を愛する女性が、かなりの数、存在することが発覚することになる。
しかも、第二弾の製作まで決定し、私は腰を抜かすことになる。
第二弾も泥酔状態で企画書を書いた私は悪くない。と、思いたい。
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お読みいただき有難うございました。