国頼
口論となり揉めていた俺たちのところに姫が襖を開けどこか険しそうな顔で部屋に入ってきてた。
先ほどの可愛らしい顔とは違いなにか残念な面持ちといったところか…
「お主らの話…わらわの床の間まで聴こえおったぞ…」
多分落ちた雷のよう響く寺島の声だろう。
「わらわはお主ら異国の使いにこの国を助けて欲しいのじゃ別に戦を必ずしろと言ってるわけでもない国が助かるのであればわらわは武田のもとにいくだけじゃ…もしわらわのためになどというのなら父上にこの戦をやめさせる。わらわの亡くなった母上と同様にわらわが武田に行くことは母上を失うことのような事であるが…仕方ない…国のためだ…」
亡くなった母上?姫は母親を亡くしたのか…言葉では国を助かればどんな形でもいい例え自分がこの国から離れたとしてもなどといってるが表情声の性質からして本当はこの国に残りたい。大好きな故郷にいたいと願っているように伺えられ普通なら俺たちの部屋なんかにわざわざ来ないはず
「姫…」
今まで黙っていた矢嶋が口を開く
「気持ちはわかりますあなたがこの国からいなくなるだけで事は済みます…ですが僕はあなたにこの国に残って欲しいのです武田軍によってもしかしたらこの国が無くなるかもしれませんですが僕たち3人の力があれば10倍の戦力差をびっくり返せるかもしれません。だからここは僕たちにお任せしてください」
矢嶋も姫の本心を見抜いていていたのか?
すると「おい!」と寺島がまた雷が落ちたかのように矢嶋に向かって反論の弁を述べる
「姫が武田の元に行くって行ってるんだから行かせろよ。誰も死ななくて済むんだ!そしたら俺たちもこの世界で死なないんだぞ!」
死…寺島が恐れていたのは死なのか??死という言葉を強調する所に俺はひっかかる
そういえば寺島も母親を高校三年のときに病気で亡くしたと聞いた。だからラグビーを大学では続けられず高校でやめたとか聞いた事がある。身内の死というのはなんとも言えない気持ちになる事は確かだでもこの世界で生きている俺たちは向こうの現実世界ではどうだ?寝ているだけいつ戻るか分からないしそれに現実世界では死んでるの同然なんだ。
「姫だって別に武田のやつらに殺される訳でもない。それなのになぜ…死者を出すかもしれないのに…なんで…戦うんだ…ぁぁ!!!」大柄の寺島には涙は似合わないと思ってたしかし今の寺島の顔には大粒の涙で頬が濡れている。
なんか言わなければと思ったが誰かのためにとかと思って戦に参戦する気でいた。でも俺がこの世界で死ぬとかそんな事を軽く考えていた自分が言われて初めて忍び寄る死というものに向き合うことにだがしかし矢嶋だけはこの寺島の意見に反論する
「寺島!姫がこのまま国を離れること父上にとって姫は生きてるけど会えない人亡くなった人同然なんだ…だからまだ救えるなら俺は救いたい…お前の母は病気という他人がなんかしても変えられない助けられないもので亡くした。でも姫を助けるには俺らが変えられるかもしれないだぞ!それにこの戦によって俺たちは戻れるかもしれないんだ。だから力を貸してくれ!」
クールな矢嶋がここまで大きな声で言うことなんてあったか?俺は横にいた姫を見ると泣きそうな顔で寺島を見つめている
「本当は…わらわはこの国からでたくないのじゃ…わらわからもたの……」
ここから先は言葉がでなかったのか姫は下を向き泣き崩れ長い髪が顔を覆ように涙を見せないように垂れている。寺島は泣くのをやめて
「わかったよ姫…あんたがそこまでいうなら助けるよ。でもひとつ約束するよ死者を出さない戦法で戦う!これだけは守りたいなぁ矢嶋できるよな!?」
矢嶋はうんと答え寺島の意見に賛同することにした。
でも戦で死者を出さないことなんて…この時代であり得ることなのか?この疑問を抱きながらも俺もうんと頷く
「ありがたい…本当にこの恩は忘れませぬぞ。」
姫は俺たち3人に感謝の意を述べはじめる。姫はひと安心した様子であり俺らを仏のように拝んでいるように思える
「姫!何してるのですか?」
「これはすまぬ。夜叉丸異国の使いの方たちに頼み事をな。」
家来の1人が姫が部屋にいないことに気づき俺らの部屋にやって来て姫を見つけて部屋に戻しに来たのか。
この姫を迎えに来た家来は背が高く若くなおかつイケメンな感じを出している家来で今までの家来とはどこか違うように見受けられる。
「夜叉丸は幼名ですぞ。今は国頼と呼んでくださいよ。ではすぐに戻りますぞ」
家来の国頼は俺らの部屋に入り姫を連れ戻し戻ろうとした際俺らに近づく
「お主ら…歓迎されると思ってるなよ…拙者はお主らの事怪しんでるからな。あと姫に次なにかやったら拙者がお主らを成敗する」
なんだ?かなり威圧的じゃないですか?そう言って姫を連れ戻し戻っていったのであった。