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僕も歩けば異世界に行く  作者: 神崎新
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謎の模様2

 

 僕が向かったその町は結構な田舎町で、人の影がない。

 静かでいいのだが、少々静かすぎる気もする。

 周りは自然に囲まれていて空気が美味しい。

 なんで人があまり住まないのか不思議なくらい良い所だ。


 「確かここの家か・・・・・・」


 僕は一軒の前で止まりそう呟いた。

 その家は小さな平屋でいまにも潰れそうな感じだ。

 築50年は経っているだろう。


 その家のインターホンを押すとしばらくして1人の老人が現れた。

 その老人は杖を使っているためどうやら足が弱いらしい。

 見た目からして70代くらいだろうか。

 その老人はいきなり杖を僕の方に向け、


 「誰じゃ貴様!」


 いきなり大声でそんな事を言い出した。


 「依頼を受けた『何でも屋』の者ですけど」


 僕がそう言うとその老人は不思議そうな顔をして、


 「はて、儂にそんな知り合いがいたかのう」

 

 どうやらこの人はボケ老人らしい。

 相手にするのが面倒くさそうだ・・・・・・


 「あなたが依頼者のモウさんですか?」


 「ああ、確かに私はモウだが、お前さん前にどこかで会ったかのう?」


 「多分会ったことはありませんよ、僕はあなたからの依頼を受けて来ただけですから」


 老人は首をかしげて何かを考えているみたいだ。

 これはなかなか話が進まないぞ。

 僕がそう思っているといきなり老人は口を開き、


 「なんだお前はキナじゃないか久しぶりだな」


 「いやだからちげーよ!!」


 キナって誰だよ!

 僕と似ているのか?

 だとしても間違えるなよ。


 「だから僕はあなたから依頼をもらってですね」


 「ああ、なんだその話か、それならそうと早く言ってくれればいいのに」


 初めからそう言っているだろ!

 この人と喋っているだけで相当な体力を消耗してしまう。

 無事に依頼を解決できればいいのだが......そうはいきそうもない。


 「まあ、こんな所でもなんですし、中に入ってください」


 老人はそう言うと僕を家の中に入れてくれた。

 

 家の中はほとんど何もなく、かなりの殺風景さだ。

 老人は僕を居間に入れてくれ椅子に座るよう促した。

 老人は僕の前の椅子に座ると、


 「お前誰じゃ!?」


 「もういいわ!!」


 一体どんだけ忘れっぽいんだよ、そんなんじゃ自分のことすら忘れてしまうだろう。

 

 「それで、依頼の内容なんですけど」


 そう言うと老人は疲れたような表情になり、肩を落としながらゆっくりと口を開いた。


 「依頼の内容は紙に書いてある通りじゃ、毎朝家の前にモンスターの呪いのような模様が描かれているのじゃよ」


 どうやら依頼内容はしっかりと覚えているらしい。


 「それが一体なんなのかを調べればいいのですね?」


 「ああそうじゃ」


 「ちなみにその模様はいつも消しているんですか?」


 「もちろんじゃ、そんなのがあったら気味悪くてゆっくり生活できないじゃろ」


 どうりで来た時は何も模様なんてなかったわけだ。

 しかしそれなら一晩張り込めばすぐに原因が掴めそうだな。

 僕はそう考え、


 「それじゃあ一晩張り込ませてもらいますね」


 「私に夜這いするつもりか!?」


 「そんなわけねーだろ!!」


 何がどうしてこんな老人に夜這いしなきゃいけねーんだよ!

 いったいこの老人はどんな思考回路をしているのだろうか。


 「一晩張り込めばすぐに原因が掴めるでしょう」


 「なるほど、そういうわけか」


 それ以外ねーよ。

 僕は大きなため息を吐きながらこの依頼を引き受けてしまったことに後悔をした。

 他の人に来て貰えばよかった......

 今更言っても仕方がないのだが。


 「それならこの部屋を使ってもらって構わんよ、この部屋なら外が見えるからな」


 確かにこの部屋なら外の見晴らしがいいし、何かあればすぐに気づくだろう。


 「そうさせてもらいます」


 僕はギルドに今日は戻れないと連絡を入れるために携帯を取り出した。

 電話をかけるとすぐに出てくれた。


 「もしもし僕だけど」


 「誰ですか?詐欺ですか?切ります」


 そう言いすぐに電話が切れてしまった。

 くそっ!

 どうやらルナが出たらしい、あいつが僕の電話の相手をしてくれるわけがない。

 仕方なくもう一度かけてみることにした。

 

 「もしもし僕だけど」


 「木崎さんですか?なんの用でしょう?」


 どうやら次はサキが出たらしい。


 「ちょっとシナさんに伝えて欲しいことがあるんだけど」


 「そういったのは自分で伝えるべきですよ、私みたいな子供を使うなんて非人道的です、さよなら」


 そう言って電話を切ってしまった。

 なんてガキだ!

 ただ伝言するのが面倒くさいだけだろう!

 しかし次電話すれば流れ的にシナさんが出るだろう。

 僕は気を取り直してもう一度かけることにした。


 「もしもし僕だけど」


 「また詐欺ですか?」


 どうやらまたルナが出てしまったようだ。


 「木崎伸一だよ!」


 「存じ上げませんが」


 「嘘をつけ!同じギルドメンバーだぞ」


 「ああなんだ、木崎死んだねさんですか」


 「僕はまだ死んでいない!」


 死んだらどうやって電話をするというのだろうか。

 相変わらずの毒舌ぶりだ。


 「シナさんに伝えてもらいたいことがあるんだが」


 「何?告白?やめてキモいから」


 「誰もそんなことは言っていないし、キモいとか当たり前のように言うな、僕じゃなかったら飛び降り自殺しているところだぞ」


 こんなやりとりをしているうちにどうやらルナも面倒くさくなってきたらしく、


 「それで何を伝えればいいの?」


 「今日はどうやら帰れそうにないんだ、そう伝えてくれ」


 「そんなの自分で言いに帰って来ればいいじゃない」


 「帰れないって言ってるだろ!!」


 こいつは当たり前のように残酷な事を提案する。


 「分かった一生帰ってこないって言えばいいのね」


 「そんなことは言っていない、今日だけ帰れないだけだ」


 「チッ、一生戻ってこなければいいのに、ていうか死んじゃえよ」


 「おい!それ心の声なのか!?普通に聞こえるんですけど!?」


 「あらいけない、つい声に出してしまったわ」


 こいつの口の悪さは世界トップクラスだろう、そう僕は確信している。


 「ちゃんと伝えてくれよ」

 

 「分かったからもう一生電話をかけてくるのはやめてもらえるかしら、あなたの声を聞くと吐き気がするの」


 ルナはそう言い捨て電話を切った。

 これ以上最悪な電話の切り方があるだろうか。

 

 僕は携帯をポケットにしまい、なぜか電話だけでものすごく疲れた体を休めるために椅子に座った。

 これから長い間ずっと見張ってなきゃいけないというのに、もう既に疲れていてはこの先心配だ。

 多分謎の模様ができるのは真夜中だろうから、これから10時間以上見張ってなければいけない。

 そう考えるとますます帰りたくなる。


 「お茶でもいかがかな」


 老人が不意にそんな事を言った。

 ちょうど喉が渇いていたのでちょうどいい。


 「もらいます」


 出てきた飲み物を飲むと、


 「いやこれお茶じゃなくて酢じゃないですか!?」


 「おや?よくある間違いじゃが、まさかこの儂が間違ってしまうとは」


 「全然よくある間違いじゃねーよ!こんなの初めての体験だよ!」


 いったいこの人は料理が作れるのだろうか。

 調味料を間違いまくってとんでもない料理になるような気がする。


 「ご飯でも作りましょうかね?」


 「遠慮しておきます!!」


 弁当を買ってきといて良かった、この人の料理なんて怖すぎて食べれない。

 お湯と間違えて塩酸とか入れてもおかしくない。


 僕は鞄から買ってきておいた弁当を取り出し蓋をあける。

 その弁当は梅干しの乗った米にシャケ、卵焼き、肉じゃがといった具合だ。

 この異世界の料理はほとんど元の世界と同じになっている。

 どうやら取れる食材が同じらしい。

 この世界には普通に犬や猫、魚や馬など、元の世界にいた動物たちもいる。

 もちろん他にモンスターやらがいるわけだが、案外すぐに慣れてしまう。

 ちなみにモンスターも焼けば食べれる。

 強いモンスターは美味しく、弱いモンスターはまずいといった感じだ。

 そういった食べ物を食べるのもこの異世界生活の楽しみの一つである。

 

 

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