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僕も歩けば異世界に行く  作者: 神崎新
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謎の模様1

 

 「新しい依頼が来たわよ!」

 

 そうシナさんは笑顔満点の表情で言った。

 最近は変な依頼が多かったから是非、まともな依頼であってほしいものだ。


 「今回の依頼はなんでしょうか?」


 僕がそう聞くとシナさんはちょっと不満げな表情になった。

 どうやら大した依頼ではなかったようだ。

 まあ『何でも屋』に来る依頼なんて大抵そんなもんだろう。

 話によると僕が来る前まではしっかりとした依頼が来ていたらしい、そのためルナは僕のことを厄病神扱いする始末である。

 本当に前までちゃんとした依頼が来ていたのかは甚だ疑問なのだが・・・・・・


 「どうやら今回も変な依頼で......依頼内容は、毎日朝起きて見てみると家の前に変な模様が描かれているらしいの、それがもしかしたら化け物、要するにモンスターの呪いなんじゃないかって依頼主は言っているの、それを確かめてくれって内容なのだけれど」


 シナさんはそれを説明しながら大きなため息を吐いた。

 本当はもっとギルドらしい依頼が来てほしいのだから当然の反応である。

 毎度毎度謎解きみたいな依頼をこなしていたらただの探偵事務所になってしまう。


 「それで今回は誰が行きましょう?」


 基本こういった楽そうな依頼は1人で行くことになっている。

 本当は1人でももったいないくらいの楽な依頼なのだが、1人より少ない人件費はないのである。


 「そういった地味な仕事は木崎君の仕事でしょ?」


 ルナは意地悪そうな顔をして僕を睨んでいる。

 そろそろ僕に優しく接してくれてもいいころではないだろうか?


 「別に構いませんけど......」


 そう言うとルナは僕の方を見ながら目をこすって、


 「あれっ、おかしいわね、木崎君の顔にピントが合わないわ、全く変な顔をしているわね」


 「ピントが合わない顔なんてあるか!」


 いったいどんな顔だよ、一度でいいから見てみたいね。

 それにしても相変わらずの毒舌ぶりであった。

 もうこの毒舌に慣れてしまっている自分が憎い。


 「まっ、こういった楽そうな仕事は新人さんがやるべきでしょう!」


 サキはハイテンションでそんな事を言った。

 こんな子供に新人扱いされるとは随分滞在期間で上下関係を決めるギルドである。


 「そういうサキだってほとんど新人だろ?しかも仕事をこなした量なら僕の方がすでに上だ、ていうかサキは一度も仕事をしたことがないじゃないか」


 「こんな私みたいな子供にムキになって対抗するなんて恥ずかしいですよ木崎さん」


 くそっ、こんな子供に論破されるなんて、ルナはそれを見て大爆笑しているし、これは間違いなくいじめってやつだろう、僕でなかったら泣いているところだぞ。


 「分かった、分かった、僕が行けばいいんでしょう?」


 「よかった、木崎君にも言語を理解出来る頭があって」


 「僕はそんなに馬鹿じゃないぞ」


 なんて失礼なやつだろうか、もう毒舌を通り越して猛毒舌である。

 もうちょっと体に無害な舌になってほしいものだ、僕が毒に犯されてしまうだろう。


 「そういえば最近、ルナ仕事やってないだろ?」


 「今あなたの顔が面白すぎてそれどころじゃないの」


 「そんなに面白いわけあるか!」


 僕はいたって普通の顔のはずだぞ。


 「ところでその依頼主の住んでるところってどこでしょうか?」


 僕がそう言うとシナさんは地図を取り出しそれに目を移す。

 少し悩んだ後顔を上げ、


 「どうやらここから北に20キロ行ったところね」


 「まさか徒歩でとか言いませんよね?」

 

 ものすごく嫌な予感がする。


 「それが......徒歩でしか行く方法が無いみたいなの」


 最悪だ・・・・・・

 もちろんこの異世界にも乗り物くらいはある。

 電車や車に似たようなものがこの世界には存在する。

 ちなみに携帯と同じような物まであったりする。

 元の世界と似たようなところが多かったおかげで僕もすぐに馴染めることが出来たのだ。

 

 しかしこの世界と元の世界で最も違うのが、地形と言っていいだろう。

 この世界では乗り物ではいけないところが多くある、理由は途中でモンスターが急に現れたり、変な所にトラップが仕掛けてあったりするからである。

 そのため依頼を受けると徒歩で行くことが多くある。

 そういった依頼の時はきまって僕が行く、まったく不公平である。

 

 「ヘタレにはちょうどいい運動になるんじゃないのか?」


 「僕はヘタレていないし、ヘタレは関係無いでしょう」


 今日は天気が良くものすごく暑いっていうのに、よりにもよって徒歩、しかも往復40キロ。

 これは下手したら死んでもおかしくないレベルだ。

 もう少しみんなには僕の体の心配をしてほしいものだ。

 僕も大切なギルドメンバーなのだから。


 「じゃあ早めに行ったほうがいいですよね?」


 「そうね、その方がいいと思うわ」


 シナさんは心配そうに僕の方を見ている。

 心配してくれるのはシナさんだけですよ......

 よし!シナさんのためにも頑張るぞ!


 「それじゃあ僕行ってきます」

 

 そう言い、シナさんから地図を受け取り僕はギルドを後にした。


 

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