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2.耳が腐りそうだよ【8/6】

 目が覚めたらそこは見知らぬ部屋だった。

 木造の天井…床も壁も机も木造、窓が開いてるので風が寒い。

 外は夕暮れ時だろうか薄暗いが…でも窓から見えるのも木なのでまだ森の中かもしれないので暗さでは時間はわからないか。


「―――くしゅん」


 よく見たらボクは裸だった。

 身動きしようとしたができない。

 手首がチクチク痛いし荒縄か何かで後ろ手に何かに固定されているようだ、体勢的に判り辛いが恐らく柱だろう。

 やっぱりあの時の男達は怪しかったんだな…これから何されるか不安になってくる。

 幸い周りに誰もいる様子はなく少し気持ちを落ち着ける事ができそうだ。


(…やっぱりこうやってみると紛れもなく女の子の体だなぁ…)


 わかってはいたが…わかってはいたが実際裸になってみるとクルものがある…

 「はぁ…」とため息をつきつつ部屋を観察してみる。


(んー20畳くらいかな、結構広いな…

 扉は1・2…2つか…窓が近いほうはほぼ出入り口で間違いないかな…もう一つは他にも部屋があるのかな?

 部屋の中は…机が一つ…おっこの位置じゃ見づらいけど机の上にボクの懐中時計が乗ってるみたいだ、ボクの私物は机の上か?

 …あとは至るところに酒瓶?が転がってるな…

 床には…土足で上がってるのがよくわかる足跡がくっきりだ、何人かまではわかんないけど…)


「おっ気がつきやがったか」


 出入り口と思った扉から意識を失う前話していた男の一人が入ってきた。

 男はボクの服を着ていた。

 着方がよくわからなかったのか前開きの裾出ししてるしネクタイは頭に巻いているしで酔っ払いオヤジ風になってしまっている。

 元のボクと同じくらいの身長だが体格ががっしりしてるせいか若干キツそうだ。


「あのっコレほどいてくれませんか?あと服返してください」

「お嬢ちゃん運が良かったなぁ」


 ボクの話は何も聞いてくれてない、運が良い?この状況が?


「あのままだったら野垂れ死んでたか野犬の餌だったろうぜ、俺たちが生かしてやってるんだ感謝しな」

「それは感謝します恩返しも何とかします、なのでコレほどいて寒いので服返してください」

「おいおいこの服はもらうぜ、こんな肌触りの良い生地の服初めてだからな、さぞかし高値が付くだろうよ。

 それにお前には良い引き取り手を紹介してやるよ、もう人生全て捧げるような奴をな」


 男はニタニタと気持ち悪い笑みをしながらボクにそう告げる。


(引き取り手?誰だそれ?)


「今から俺たちは仕事があるんでな、ここで大人しくしてろ」


 そう言って男は外に出ていった。

 外からは話し声が聞こえていたが外が暗くなった頃に声も聞こえなくなった。

 誰もいない部屋は灯もなく真っ暗で見えるのは窓から漏れてくる月明かりに照らされた部分だけ、他は虫の鳴き声が聞こえるだけでとても淋しい気分になる。


(なんでこんなことになってるんだろう…)


 自問自答しても答えは出ない、真っ暗になってしまった部屋はもう観察しても殆どわからない。

 記憶にある部屋でなんとかできないか考えてみるが動けないことには意味がない、ここから移動の時に一気に逃げるしかなさそうだ。

 絶望的ではあるが方針は決めた、とても怖いけど…。










 どれほどの時間が経ったのだろうか、凍死する程ではないが肌寒さと不安で小刻みに震えてしまう。

 とても眠ることはできないし眠れる気もしない、できることはただ男達の帰りを待つだけだった。

 窓が開けっ放しだったので人声に気づいて窓に顔を向ける。

 火の灯だろうか?木々が赤く照らされてきて男の笑い声や怒声と女性の悲鳴、子供の鳴き声が聞こえてきた。


「おい、女共は一箇所にあつめておけ!」


 ランプを持った見たことのない男が入ってくるなりそう言った。

 後からどやどやど入ってくる、男達は貴金属や樽等色々持っている、女達は皆後ろ手に縛られている。

 男達は10人いる、外に2・3人見張りを置いてる可能性もあるから12~13人ってところだろうか…

 女達は今のボクと同い年位の少女1人に20歳前後と思われる女性が4人、後少女の多分母親ともう1人同じ位の女性が1人合計7人がボクの前に集められ皆足も縛られた。

 そして男達はもう一つの扉の中に女性達以外の戦利品を置き今日の結果が大満足だったのか酒盛りを始めた。




「貴方もアイツ等に捕まったの?」


 声のした方を見ると今連れてこられた金髪の巨乳美女がボクに優しく微笑みながら声を掛けてきた。


「ぇ?…あ…はい」

「そう…他にもこんな子供を…

 しかも服まで剥ぎ取るなんて、なんて奴らなの…

 もうすぐだからもうちょっとだけ我慢しててね」

「え?」


 そう言って金髪さんは男達を睨んでいた。

 もうちょっととは何だろう?助けでも来るんだろうか?


「ねぇ、わたしリィナって言うのあなたは?」


 今度は少女が声をかけてきた、母親も傍にいる。


「えっと…レンです」


 こんな状況に陥ったのは初めてなので殆ど受身になる。


「服まで獲られちゃって、可哀想に…」

「ねぇ、レンちゃん寒くない?」

「……うん、寒い…」


 こんな事聞かれてもどうしようもない。

 聞いた方もどうしようもないだろう服を少し貸そうとしても抱き合って暖をとるにしても手足が縛られてる現状どうしようもない。

 やっぱり困ってる、多分恐怖を紛らわせる為に聞いてきたんだろう。



 酒盛りが大分盛り上がった頃ボクとリィナと金髪の美女さん以外が男達に引っ張っていかれた。


「おかあさん、やめておかあさんに酷いことしないで」

「うるせぇぞガキ、今から弟か妹作ってやるから大人しくしてやがれ」

「おかあさん―――」

「うるせぇって言ってんだろ、気が変わったお前も犯す」

「やめて娘は、リィナには―「お前はこっちだ」」

「おかぁーさん、おかーさん」


 実に反吐の出る光景だ、ボクは奥歯を噛み締める。

 何もできないのが歯がゆい、無力な自分がすごく惨めだ。

 顔を横に背けると金髪さんも悔しそうにその光景をみて睨んでいる。

 そして男がリィナの口を抑え服を破り剥ぎ取った―――






「確かに五月蝿いな、下衆の声で耳が腐りそうだよ」






 阿鼻叫喚だったその世界が一瞬凍りついた。

 出入り口には堂々とした佇まいで一人の日本刀を持った黒髪の美女が立っていた。


「な、なんだてめぇ!?どこから現れた」

「ユミィごめん、遅くなった」

「ホント、待ちくたびれましたよ」


 この黒髪さんは金髪さんの知り合いだろうか?


「レンちゃんもよく頑張りましたね、もう大丈夫ですよ」

「え?」


 気がついたら金髪さんは普通に立っていた。

 皆と同じで縛られていたはずなのにと混乱しつつ足元に目を向けるとロープが引きちぎられていた。

 一体どんな力で引きちぎったのだろう?というかこの美女はそんなに怪力なのだろうか?

 そしてリィナを襲っていた男も金髪さんの足元にいた、昏倒している。


 一方的な展開だった。

 黒髪さんの圧倒的な剣技、金髪さんもかなりの素早さで敵を打ちのめしていく。

 二人の美女は所作一つ一つが美しく嵐のような光景なのにボクは自分の置かれている状況を忘れて見入ってしまった。

 他の女性達はさすがに皆気を失ってしまったようだ。

 気がついたら残されたのは仕切っていた男のみになっていた。


「な、なんなんだお前らは…」

「耳が腐るんで黙ってもらえるか?」


 黒髪さんがそう言うと刀の峰を仕切ってた男の首に打ち付け意識を刈り取った。


「ミラ来るの遅いよ、もう少しで皆酷い目に合うところだったんだから~」


 金髪さんに言われて辺りを見回す黒髪さん。

 ボクと金髪さん以外は皆襲われてる所だったので脱がされたり服が破られたりそんな状況で意識を失って転がってる。


「ユミィとりあえずこの下衆共を縛るの手伝ってくれ、意識を失ってるだけだから今のうちに縛っておかないと」


 黒髪さんが眉を顰めながら女達を縛ってた縄で男を縛っていく、ボクの縄も外してくれた。

 ボクも縛るのを手伝おうとしたけど力が全然なく緩くなってしまうので女の人達を起こす。

 一番近くにいるのはリィナちゃんだけど大人から起こした方が良いと思いリィナちゃんを壁まで運び母親から起こしていく。

 頭を打ったわけではないが頭に刺激を与えるような起こし方は怖かったので肩を何度か叩く。


「…ん、……あれ、貴方は…」

「気がつきましたか、よかった」

「はっ、リィナは!?…リィナ!!」

「大丈夫ですよ、服は破かれちゃいましたがそれ以上は何もされてません、その前に金髪さん達が助けてくださいました」


 母親の視界に壁際にいるリィナが映ったのか一瞬取り乱しかけたがボクの言葉を聞いて安堵してくれた。


「とりあえず他の方々も起こしてあげたいので手伝って頂いていいですか?」

「え?あ、ごめんなさいね自分のことばかりで…わかったわ」


 ボクとリィナちゃんの母親は手分けして女の人を起こしにいく。


「てめぇら、動くな」


 男のごつい手がボクの口が塞ぐ、首筋に冷たい感触も感じる。

 リィナちゃんの母親はこちらを見て目を見開いて固まってる。

 金髪さんと黒髪さんはこちらを見て睨んでる。

 首の冷たいものは恐らくナイフだろう。


(この声…ボクの服を着てた奴だ)

「案外頑丈な奴がいたんだな、そのしぶとさ目が腐りそうだよ」


 黒髪さんはこちらを見つつ焦った様子もなくそう言った。


「て、てめぇこの状況わかってるのか!?」

「わかってるよ、醜い汚物が美少女を人質に取った気になってる。

 そのまま逃げようとか、それとも私達に武器捨てさせて逆転しようかってところか?

 全く…愚かだね、そんな事しても何も逆転できないというのに」

「な…な…」

「そもそもだ、村人でもないその娘が人質になるとでも思っているのか?

 私達には助ける義理は無いし、村人達もその娘を助ける義理なんてないというのに

 それとも人道的に?そもそも貴様らに人道なんて説かれたくないね」

「え…ぅ…あ…」

「まぁその娘を殺すなりしたらお前も死ぬだろうな、今は捕らえておこうとしていたが人を殺せるなら生かしておくと犠牲者もふえそうだしね」


 なにこの黒髪さん、怖いよ!男も二の句がつけないでいる。


「だがね…その娘を人質に取った事は私にとって―――」


 黒髪さんが居合の体勢をとる。


「てめ、動く―「逆鱗に触れる事に近いらしい」」


 それなりに距離があったはず、それに人も倒れているそんな中黒髪さんは一瞬で距離を詰めていた。


―――一閃、振り抜いた刀が盗賊の腕を切り飛ばす

 そしてそのまま盗賊を蹴り飛ばす。


「あ゛ぁあぁ、ぁあ゛あ゛ぁ、あ、ぁあ゛あ゛あ゛、手が!手がぁぁ」

「五月蝿い」


 追い打ちをかけるように顔面に刀の峰を打ち付ける、そして男は痙攣して動かなくなった。


「汚物の血と油で汚れてしまった」


 黒髪さんはそう呟いて倒れた男を見下ろしていた。


金髪の女性 「ミラさん残酷です!」

渋い男の声 『お前も大概だとおもうぞ、なんだその怪力は』

金髪の女性 「怪力言わないで!貴方のせいでしょう」

渋い男の声 『その助平な体を利用すればもっとやり方もあったのでは?』

金髪の女性 「捨ててやろうかしらコイツ…」


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