1.青空が広がっている【8/6】
―――青空が広がっている
ボクはなぜこんなところに寝ているのだろうか?
木々が風に吹かれる音・鳥の囀りを聞き寝起きで寝ぼけてる頭でそんな事をぼんやりと考える。
都会の喧騒とは違う自然の香りはとても落ち着く、ボクは公園ででも寝てたかな?
「ん…ん~~~~」
まだ覚醒しきっていない頭に血液を送るようにノビをする。
やっと頭が覚醒してきた所で寝ぼけ眼をこするつつ周りを見渡すと思考が停止した。
「え…?どこ…ここ?」
今いる場所は開けた草原だった、ちょっと遠巻きに森も山も見える、しかし”それだけだった”。
ボクが住んでいる近くには確かに大きい公園もある、しかしコレは大きいとかいう以前に”何もない”。
遠巻きにビルも見えなければ車等が走るような音も聞こえない、ただ草原の中に自分一人座り込んでいる。
「頭がボーっとする…、ん~…夢かな?」
まだ寝ていて夢でも見ているのだろうか?たまにある夢と認識する夢みたいな…と考えていたら違和感を感じる。
「あれ?声が変だ…?」
自分の声にしてはとても高い声、なんだか子供のようだ。不思議に思い手足を観察してみる。
「なんだこれ?」
ボクは色白やもやしとか童顔とか言われたりしていたが一応成人男性だ、しかし見える両手足は裾から出ていない。
まくって見てみたらどう見ても子供の手足だった。
「うわっ、子供になってる」
夢とは言え子供に戻りたいような願望が反映されるとは思えなかった、となるとこの夢は子供の頃のボクの記憶とかかもしれない。
とりあえず他にも気が付く事がないか確認してみる。
「服は…なんだ?大人のボクのままだ、サイズまで…ポケットはっと…」
服はそのまま大人のボクの服でスーツスタイルだがブカブカだ首には金のクロスのチャームがついたネックレスがかかっている。
ポケットも調べてみると中には財布(現金紙幣3万円弱と小銭及びカード類)・趣味で買った手巻き式の懐中時計・林檎マークのスマートフォン・ハンカチ・ボールペン・メモ帳が出てきた。
自分の体以外の状況は記憶にある、一番最後に家を出たときの物のままだ。
周囲を見渡してみるが一緒に持っていたはずの鞄はなさそうだった。
「こんなところかな、とりあえず服と靴が邪魔だな」
立ち上がって服を脱いでいく、ズボンに手を掛けたとき白く長い”何か”が視界入る。
触ってみると髪だと解った。
(え…髪が白い?…え?)
考えてもいなかった事にビックリする、そういえばスマホがあるしちょっと怖いけど確認してみる事にしよう。
………
……
…
そこには12~3歳位の少女が写りこんでいた、色白で赤い瞳をしていたが自分自身初めて見るほどの…息を飲む程の美少女だ。
(かわいいな…って女の子!?)
自分は男だ、子供の頃から大人になるまで女顔とすら言われた事はない。
慌てて身体を触ってみると男の特徴はなくなってい
その身体は意外と痩せておりかなり細いようだ身長は詳しく測る事が出来ないがかなり小さいと思われる。
ふと以前両手を伸ばした状態は身長に近いと言う話を思い出した。
スーツの袖でおおよそのサイズを見てみたが恐らく今の身長は130~140cmくらいだろうか…。
髪はゆるくウェーブがかかりながら膝までとどくほど長く、白桜色とでも言えばいいだろうか?光を反射するとキラキラと金色とピンク色を混ぜ合わせたような煌めきを放っていた。
「うわー靴のブカブカだよー…」
一通りスーツ類を脱ぎ袖をまくったYシャツとVネックTシャツ、ボクサーパンツのみになる、一見したら裸Yシャツのような恰好だ。
「さて…と移動しようかな、ってどっち行こうか…」
ただ広がっている草原とちょっと離れたところにある森どちらに行こうか悩む。
(…そういえばスマホで現在位置わからないかな?
…あ、やっぱり圏外か…文明の利器は使い物にならないなぁ…
夢なんだったらご都合主義でパーッと進展してほしいなぁ)
「まぁ森沿いに歩いていけば何処かに何かあるだろう、そうしよう」
とりあえずの基本方針を固めてボクは森に向かって歩き始めた。
「おっ、川だ」
森の入り口に近づいた所水の流れる音が聞こえたので森の中に少し入ってみたところに車二台並んだくらいの幅の浅い川があった。
おそらくこれを下流に辿ればきっと何処かにつくだろう、いやついてほしい。
川についた所でちょっと休憩することにした、裸足で歩くとゴツゴツと石が痛い…
(やっぱり夢じゃないよなぁコレ)
さすがにそろそろ現実逃避をやめようと思う。
元居た場所より30分ほど歩いた(草原といっても子供の歩幅に裸足での移動なので距離の割に時間がかかった)上にこの痛み…
それにもう意識もはっきりしてるから夢というには無理がありすぎる。
.
(一応情報を整理しよう…
名前…は”結城 蓮”…財布に運転免許も入ってる間違いない。
年齢…記憶通りだと26歳…記憶にある年として生年月日と照らし合わせてもこれも免許どおりで間違いない。
身長…165cmだったと思う…着ていたスーツから考えると多分間違いない。
視力…利手…利目…このあたりは変わってなさそうだ…大きさ以外の違和感は感じない。
性別…男のはずなんだけどなぁ…免許にある写真も記憶にある顔だけど…
この免許に書いてある方がボクの記憶で間違いなさそうだけど…そうなると…
この身体は誰なんだろう…?)
思考が全然まとまらない。
(科学的に遺伝子情報XY染色体がXX染色体のみに突然書き換わったとか?
…それだと性的不能なるだけだと思うし…
もしそうだとしても身体の体積が変わり白髪少女になる理由にはならないよなぁ…
それにこの場所も説明できないし。
実は元々は少女で男にされてましたーとか?
…中二病じゃあるまいし
…それだとやっぱりこの場所まで説明できないなぁ。
最近流行りのネトゲネタでネトゲの世界に取り残されましたーとか、飛ばされましたーとか?
…これだとこの不思議な場所の説明や身体もアバターという事で説明もつくけど…
そもそもネトゲやってないしこの身体に全く心当たりないよ!
あとは…神様が連れてきたとか?…それならなんか説明求…
…
…ようするに何にも解らない…というか自分かなり中二病入ってるなぁorz
―――あぁぁぁもうぅ混乱する!)
「うん、とりあえず今は考えてもわからないし…まず人をみつけよう」
最初に夢と勘違いし落ち着いてたおかげかパニックにはならなかった、それだけでよしとしよう。
ボクは考えることを辞めて休憩を終えた後下流に向けて歩き始めた。
川沿いを下流に向かって少し歩いた所に砂利道と木で出来た簡単な橋があった。
そしてさらに下流方面に一時間ほど歩いたところで初めて人を見つけた―――。
初めて見つけた人は男の二人組だった。
二人共体格が良く腰にナイフらしきものを挿している。
服装は…ちょっと薄着のホームレスと言ったところだろうか、無精髭生やしてるし服の汚れも目立つ、服は所々破けているが補修もしていないみたいだ。
狩人とかとも思ったが銃等飛び道具になりそうな物はなにも持っているようには見えない。
あまりにもな出で立ちに声をかけるかちょっと迷ってしまう…
迷ってる内に男達がこちらに気付いたようだ。
「なんだ?ガキ」
いきなり威圧される、内心怯んでしまう…。
「あ、あの、えっと…」
混乱して言葉が出ない、威圧感もあってすでにちょっと泣きそうだ…。
「おい、こいつ見てみろよ」
「あぁ?こんなガキがなんだよ…って」
もう一人の男ニヤケ面で威圧感を放っていた男に声をかけたら威圧感を放っていた方もいきなりニヤケ面になった。
(何か嫌な予感がする、失敗したかな…)「す、すいませんお邪魔だったようですね、失礼しま…」
「あぁちょっと待てよ、お嬢ちゃん迷子か?」
さっさと退散しようと思ったけどできなかった、でもとりあえず言葉使いを軟化してくれた。
ビクビクしながらもやっと会えた人だしと割り切って話す事に決める。
「…はい、ちょっとここが何処かわからなくて家とか探してたのですが、近くに村か何かないですか?」
「村か?あるぞ、だけど口で説明するのも難しいな、案内してやるよ」
(やっぱり嫌な予感がする…)「い、いえ…そこまでお手数お掛けするわけにもいかないので方向さえ教えていただければ…」
「まぁそんなに遠慮するなよ―――「…かはっ」」
男が近寄ってきてお腹に鈍い痛みを感じたと思うとそのままボクの意識は途切れた。
金髪の女性 「最近村の近くの小屋に怪しい男達が住み着いたらしいですね、何事もなければいいですが…」
渋い男の声 『その男達をお前の豊満な胸で誘惑するのか!』
金髪の女性 「そんなわけないでしょう!!」
渋い男の声 『…なんだつまらん』