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酒に飲まれた恋心  作者: 月帆
本編
6/22

目を覚ませ、先輩

私の一言で、先輩の思い出話が始まった。


入職式。

今年はすごい秀才がいると噂がまわった人間は…彼女だった。


きらめく瞳。

肩まであるストレートの髪。

キメの細かい肌。


そして、人を寄せ付けない空気。


異質とよべる美人だった。


けれど、割ともてる俺は美人だなとおもっただけで興味はなかった。


女と遊ぶ時は、もっと気楽に安らげる女が好みだったから。


仕事もそつなくこなす彼女。

感情をあまりださず仕事をこなす。


興味がなかった。


それが変わったのは…あの時。


「奥様がいらっしゃったんですね。」

倉庫の一室から聞こえる声、事務の主任だった。

冴えない男、確か去年結婚したような

「妻とは別れる」

ああ、おきまりのパターン。

抱きつくか。

怒るか。

どっちだ。


「結構です。」

そう言って彼女は立ち去る。

表情はそのまま美しい。


淡白なんだなと思いつつ気がつかれないように追いかける。


書庫でつぶやく彼女。

「馬鹿だな…私」

涙も見せずつぶやく。


惹かれた。


それから彼女の動作の…香りのすべてが気になった。

さそいをかけても断られる彼女、あの事務の主任に腹が立つ。

仕事中、彼女に言い寄る男はガードする。

あの日も弁護士会の集まりに一緒に行ったのも上司を懐柔して本当は、本気で告白するためレストランの予約をとった。

お酒は下戸なのはリサーチ済みだったけれど、いつもの表情を崩したくて準備した。

のに…仕事の電話で席を立つと飲んでいる彼女の姿、そして怒って帰る。


次の日の彼女は、文句も言わないけれど冷たさが増すばかり。

そんな彼女も好きだと思うのは、彼女のすべてが好きなんだと思う。


「その彼女が君なんだ。玲ちゃんが好きなんだ。」


………………


「どうして私のこと好きになったんですか?」

乙女ちっくな質問の返答だった。

ゲロりそう。


先輩は遠い目をする。

頭ダイジョーブですかぁあああと叫びたくなった。


あの時…

「奥様がいらっしゃったんですね。」

倉庫の一室から聞こえる声事務の主任。


冴えない男。

覚えている。


情にほだされて、付き合った。

一週間も。

騙された自分にむかついていた。

同情した自分に。もてない、仕事もできない…泣きつかれて同情した。


「妻とは別れる」

ああ、おきまりのパターンですがりついてくる。たった一週間で妻を捨てるという男。

結構です。

逆玉に乗ろうと思うのミエミエです。


「結構です。」

そう言って私は立ち去る。


アホな私が恨めしい。


書庫でつぶやく。

「馬鹿だな…私」


こんなとこきてもなににもあたれない。

ホント生産性のないことをしてしまった。


ま、とりあえず、復讐から始めるか。

って考えてましたよ。

私。


なんか描写が違うんですが。


誰ですか、ソレ。

先輩は物憂げに話を続ける。

「何かさ、それから気になって君を見ているうちに必死でイメージを作ってるのかなって思って…

そのうち守っている君を守りたくなったんだ。」


ああ、イメージ守ってますよ。

こんな女が知的美女気取っちゃダメですか。

守らなきゃ幻滅するでしょ。

あなた!


そして、車に乗り込み、真剣な先輩の顔。

「今まで言ったこと冗談だと思わないで欲しい。

本気だから…全部。」

どうしようツッコミどころ満載なのに乙女心ゆれる。

満天の星空、ダメだ。

また情がわく、流されて行く。


けれど情より車の振動に勝てない私は、また寝てしまっていた。

帰り際、先輩は真剣な眼差しで見つめてくる。


あの、よだれついてますか?

「今日のこと覚えていて欲しいから。」

よかった。よだれじゃないみたいだ。

「あの…先輩にはもっとふさわしい人がいますよ」

そうだ、これだけ女の扱いがうまいんだ。

あの男のことがあって片手ではおさまらない年月が経っているのに、その間に女の一人や二人いただろう。

「もしかして主任のこと。まだ?」

気遣わしげに顔を覗き込む先輩の顔は男前だった。

はっ?主任。

あの不倫か、土下座に情が移り付き合っただけの男。

何年前のことだ。


自分のアホさが腹立たしいだけで、顔もおもいだせませーーーん。

こんなに男前の先輩なのに、妄想癖があるのはイタイ。

「違います……先輩、私の部屋にきてくれませんか。」


ダメだ、目を覚まさせないと。


「えっ、いきなり?いいの。」

なに頬をあからめてるんだ。

また、勘違いか。

真実をみろっとばかりに部屋へ招く。


親兄弟が心配して選んだ部屋2LDK。

でもキッチンは使わないから綺麗。


一室は仕事用、整頓してありますよ。

ええ、仕事用ですから。


もう一室は、さあ、みろ。

この惨状。

ベットはシーツがよれよれ脱いだ服は床へ。

ネットサーフィンができるようにベットのそばにはパソコン。

もちろんテレビのリモコン。

寝たまま生活しているのがわかるゴミ箱はきれいですよ。


なにせ食料はコンビニからかってそのままレジ袋に直行。

ゴミ袋の塊。

そろそろごみ出さなきゃと思いつつ・・・


虫が出たときのために枕元には殺虫剤。

ええ、休みの日はここでねっころがって動きません。


んーーホントはトイレも行きたくないけれど、トイレだけいっとかないと処理するの私だしね。

あたし、、外ではクールな才女を演じていますが家の中じゃだらだらですよ。


そっと先輩の顔を見る。

「私の本性わかりましたか。先輩が思ってる人間じゃありません。」

そういって先輩を家から押し出す。

これで終わり。


あーー結婚、恋愛。

そりゃしたいよ。

でも恋人?むりむり。

一人のほうが楽だしお金だって時間だって自由に使えるでしょ。


家に帰ってまで人間関係に気をつけるなんてぜってーーーむり。


先輩は帰り日常が戻った。


仕事ではいつもと同じ先輩。

目が覚めたかとほっとした。


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