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酒に飲まれた恋心  作者: 月帆
本編
5/22

先輩とデート

信じられない出だしで始まった一週間は穏やかにすぎて行った。

金曜日になっても、誘ったはずの先輩は特にアプローチもなく仕事を終え帰宅する。もしかして西海と共謀してはめられただけだったのかもしれないと、内心安心して自堕落な休日を迎えるべく私は床についた。

はずだったが現実は甘くないと、この数時間後知ることになった。


朝からうるさいインターホンがなる。

いたずらか、朝っぱらから。怒鳴りつけてやろうかとインターホンの画面を開くと現れたのは、先輩の顔だった。

あの…この自宅いつおしえましたか?


「先輩、朝5時です。」

インターホンから思いっきり不機嫌な声を浴びせる。

「待ってるよ、準備できたら出てきて」

バカか、女の準備にどれだけ時間がかかるかわかってるのか。

ま、その気もないし。

どうでもいいか。

二度寝したいが、仕事での先輩の粘り強い姿を知っている私は思い直す。

近所付き合いはしていないが、父親名義の部屋でいらぬ噂をたてられる訳にはいかない。無駄にうるさい父や兄が知ったら、実家に戻れと猛攻撃されるのは目に見えている。


サッっと顔を洗い、口をゆすぐ。

髪をとき、

いつもの黒いスーツをやめジーパンにTシャツに着替えコートだけもつ。

財布と携帯、ハンカチ、テッシュの入ったカバンを手に取る。

時間にして5分弱。


さすが。


「お待たせしました。」

「えっ、もう準備できたの」

先輩が意外そうな声を出す。どんな女と付き合ってきたんだと言いそうになるにを抑える。

いつもならBBクリームに眉毛、アイシャドウとグロスが増えるが朝食しなけりゃ10分で準備は終わる。朝の眠い時にゆっくり顔なんか作れるか。

「朝っぱらからうるさくしていると、周りの方の迷惑になりますから。」

極上の笑顔を向けてみる。

どうだ、この嫌味っぷり。

「じゃあ、行こうか」

あっさりとスルーする先輩、こんな嫌味はなれてるってか。

レンタカーなんだと笑いながら先輩はミニバンに乗るよう促す。助手席ではなくあえて後部座席に座るが先輩は特に何も言わない。

運転席に座り運転する先輩の姿をみる。…しかし男前は得だ先輩は濃い色のジーンズにシャツ定番なのにかっこいい。

仕事も出来る。

こんな人が私にかまって時間を無駄にしている。

おかしい、裏があるはずだ………

心地の良い車の振動に負けた私は、何時の間にか不覚にも寝てしまった。

よだれ垂れてないか…

よかった。

大丈夫だ。


車が止まる。

時計は7時。

一時間以上車を走らせていたのに先輩は疲れた様子も見せず、車の扉を開いてくれる。

一体、この男どこまで優しいんだ。

そして、ここ、どこだ。


川のせせらぎ。

冷たい風。

近くにはロッジがある。


「一日ゆっくりしたくて。玲ちゃんはこういうとこ好きかと思って。よく植物図鑑見てたでしょ。」


植物図鑑は今後退職して老後一人で暮らす時、どんな食べ物育てるかで悩んでただけなんですが。

想像力豊かっすね。

先輩。


いろいろとつっこみどころの多い人だ。


「朝ごはんにしようか。」

近くのロッジを借りているにだろう。ロッジに招き入れ朝食の準備を始めた。

長年自炊をしている先輩、さすが手際がいい。


のんびり過ごす。

特に先輩と何をするわけでもなく、散歩をしたり昼食を作ったりかたづけたり。

こんなの久しぶりだった。


あっという間に一日は終わりを告げようとしていた。

「今日は本当はこれを見せたかったんだ」

夕食も終わり

帰るために外に出ると先輩が言った。


星が…

あふれるばかりの星が

降ってくる。


思わず見惚れる。


「どうして私のこと好きになったんですか?」

こんないい男が、どうして。

間違いを正す方法を見つけなければいけないと思った。

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