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酒に飲まれた恋心  作者: 月帆
本編
4/22

この人たちナンデスカ

こんばんわ。近くにおいしい店があるんです。」

西海は言葉こそ柔らかいが逃がさないという雰囲気で話しかけてくる。

「お前ら知り合いだったのか。」

軽く確認の言葉を先輩が言う。こいつも、まったく私の気持ちをわかっていない。

「衝撃の正体だ。」

意味ありげに西海が先輩に答えた。

どんな話をしたのか背中から汗が噴き出す。

ええ、衝撃だったでしょう。だって寝ゲロにシャツを引きちぎり……まったく何をしたのか覚えておりませんが、状況証拠でいえばクロですから。

「もしかしてハンカチの持ち主が玲ちゃんだったのか。」

呆然と先輩がつぶやく。

だから、何を聞いたんだ。

そして私は何をした。


気がつくと西海に腕をとられていた。

「彼女に目が離せなくなって…悪いな、清司。お前の好きな相手でも諦められない。」

唐突に西海が話す。


なににだ。

確かに目は離せなかっただろうが。

というか、先輩の想い人って西海は何を勘違いしている。

就職して片手以上の年数が経っているが、先輩からごはんを誘われたことはあっても、それ以上の関係はないのですが。イロイロと突っ込むところが満載の西海の言葉だが、今何か言葉を私がいえば墓穴の中に入り込む気がして口を噤む。

「惚れた。」

西海のいやな声が聞こえた。

何をこの男は言っている。

どうやって逃げよう。


「結婚してください。」


西海の唐突な言葉、つかまれた手が痛い。


………けつこん


尻婚


いやいや


結婚ーーー




なんだ、この男。


いきなり。




私はもう三十路直前、10代のころならシンデレラストーリーだーー!ってうなづいたかもしれないが、現実を知った私は賢い。


今、初対面・・・ではないけれど

うなづけない。

当たり前だ。


10代のころは可憐な私の姿に勝手に高嶺の花と思われて、普通の男たちは寄ってこなかった。

そして、大学生になってよってくるい男は私を見ない男ばかり。

社会人になってからは実家の金を目当ての男…したたかな男ばかり。

信じられない時期もあった。

今は、そんな時期ももう過ぎた。


「初対面で・・・西海さんおかしくないですか。」


おかしいだろ。


結婚・・・わたしにとっちゃ一時の遊びじゃないぞ。

一生だぞ。もしかして

責任を取ろうと思っていらっしゃる??


ああ、あの日何をしでかしたか…したことは覚えていないけれど安心ください。

おそらく全面的に否があるのはワタクシかと存じます。こんな言葉が頭の中を流れる。

一種の修羅場ともいえる場面で、こんなことを考えている私はイタイ子なんだろう。

この性格・・・結婚できるわけないだろうが。どう切り替えそうか、迷っていると声をあげたのは先輩だった。

「なにいってるんだ」

大きな声で言い放つ。そして、掴まれていた手を離すため私の手を握る。

男前は何をしても絵になるなと思う。

「清司、悪いな。」

西海が悪びれた様子もなくもう一度言った。こっちの男前も絵になる。

「俺が先に惚れた」

先輩の真剣な言葉。

ナンデストーーー。

はじめて聞きましたが。

恥ずかしいセリフは無視、幾ら夜のビジネス街といえど人通りがない訳ではない。周りからの視線がいたい気がします。

はい。

これじゃ美男美女の痴情のもつれだ。

性格はこんな私だが、顔は美しくて良かったと思う。

「どっちを選ぶ」

西海の睨んだ顔。二人に顔を思わず見てしまう。


甘いマスクで微笑む先輩。

背に高く、適度に鍛えられた体、なんだかんだいって気配り上手。


睨む視線の痛い西海。

がっしりとした体、睨む視線は怖いが硬派な男前。


「やめてください。」

選べるわけはない。

あたりまえでしょ。

「どうして」

「なぜだ」

いや、なぜとかじゃなく。普通に考えてあり得ないでしょ。

先輩は今まで知らなかったし。

西海なんか寝ゲロに初対面。

ありえないだろ。


「よく知りませんし、お二人とももっと……」

いい人がという言葉はつなげなかった。

「じゃあデートからだな」

はっ、西海何と言った。

頭が痛い。

こいつは一体何者なんだ。

そして、急に目の前真っ暗になった。


気がつくと見知らぬ部屋にきていた。

清潔なベット

片付けられた部屋。

おしゃれな空気清浄機が動いている。

「気がついた?」

先輩の優しい声がする。

ああ、気を失ったのかと納得した。

確かに疲れも溜まっていました。 追い打ちがアレですものね。

で、近くの先輩の部屋に運ばれたと…優しく微笑む先輩。

「大丈夫か、すまない。もっとゆっくり話すがしたかったんだが焦ってしまって。」

ああ、西海の顔。手に持つのはコーヒー。ゆっくり話されても結果は似たようなものだと思うのですが…とはいえない雰囲気だった。

いい匂い。

「すみません、最近寝てなくて」

「みんな同んなじだよ。仕事も忙しいしね。びっくりさせたのは俺らだから気にしないで。あんま片付けてないから悪いけど、ゆっくりして行って」

あの………下着も落ちていません。

床にゴミもない、どこが片づいていないのでしょうか。

「ご飯できたぞ」

持ってこられたご飯。


白いご飯にお味噌汁。

白身魚の煮付けにサラダ。

デザートは、フルーツ。


誰が作ったんですか?


いや、私もお嬢様教育の賜物で学生の時は料理教室にも行きました。

でも就職後はほぼデリバリーか外食で済ませてます。

手作り料理なんて………いつ以来?


「いただきます」

しかも美味しい。

「まことは料理うまいからな」

西海が作ったんですか。

「ありがとうございます。買い物までしてくださったんですね」

「いや、あるもので作っただけだ」

……ということは先輩も自炊されるんですね。


女子力一番低いの

わたしですかーーーーぁ


密かにかなりショックを受けている。

私を無視して話は進む。


「じゃあ、俺からな。」

先輩がいう。

「次の休み迎えにいくから。」


はい、デートですね。

わかりました。


もう拒否する力もありません。


何時の間にか二人とも携帯電話番号、アドレスの交換をさせられる。

送って行くといいはる二人の隙をつき猛ダッシュで逃げる。


あんな汚い部屋みせれませーーーん。


後をつけてこないか確認しながら、急いで暗い自分の部屋に帰る。

帰ってくるとメールがあった。

「気をつけてゆっくり休んでね、北川」

興奮して鼻血ふいてねれねーよ。

「また会えるの楽しみにしています、西海」

楽しみにできねーよ。


こうして、私の一週間は初まった。

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