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酒に飲まれた恋心  作者: 月帆
本編
3/22

捕獲されました

昼休憩から戻ると先輩のスペースは来客中の札がかかっていた。

ため息が出そうになるのを抑える。

まだ、やつは消えていない。

「東山さん、どうかしたんですか?」

事務所の若い女の子が声をかけてくる。

「何が?」

「え、珍しくぼーっとされてたから。体調でも悪いのかと思って…。」

私だってぼーっとしたくなる時だってある。けれど仕事中だというのにこんな若い子に指摘されるなんて情けない。

クールにならなくちゃ。

「ありがとう、心配してくれて。少し難しい案件があってね。」

そう言うと、事務所の若い女の子はそれ以上追求もせず納得したようだった。

今は勤務時間、気は抜けない。

そう意識を切り替えると私は仕事に向かった。


勤務時間も終了し、いつものようにきりのいいところまで残業をすませる。

人のいなくなった職場を見渡し、大きく背伸びをする。

「もう仕事終わったか。」

人のいないことを確認したはずなのにと思いつつ、声の方向に振り向くと先輩だった。

「お疲れ様です。」

「これ終わったから。」

先輩は昼間に渡したはずの雑用書類を持ってきていた。

「ありがとうございます。」

もっとさばくのに時間がかかると思っていたのに、やはりできる男だ。

パラパラと雑用書類をめくり目を通す。全てをきちんとチェックできたわけではなかったが、綺麗に整頓され卒なくこなされている。短時間にこの仕事量、嫌味な男だ。

嫌がらせにならない。

「きちんと謝りたくって。」

真剣な眼差しを向けられても、男の色気を出されても私は負けやしない。

無節操に、誰かれなくはなたれるような雰囲気に飲まれるほど若くないんだ。

ザンネンながら……

「もう謝っていただきました。

問題ありません。仕事も終わりましたし、では帰るところですので。」

そう言って先輩の側をすりぬけ足早に職場を後にする。ホッとしたのは先輩がカバンを持っていなかったこと。まだ帰る準備はしていないはずだから、めんどくさいことにならずに帰れると思っていたのに職場のビルを出たところで先輩に捕まえられた。

「追いついた。」

軽く息を弾ませる先輩。

だから、なんだ。

私は帰りたいんだ。

「ごはんでも食べに行かないか。」

腹は減ってますよ。

でも、さすがに前みたいな事になりたくないんです。

「いえ、今日は疲れていますので。」

当たり障りのない言葉を慎重に選びながら答える。

「じゃあ…」

じゃあ…なんだと思っていると次につながれた言葉は先輩の声ではなかった。

「俺と付き合って頂けますよね。東山玲さん。」

聞きたくない声、見たくない姿、思い出したくない相手

ー西海の言葉だった。


この就業時間まで、こんなタイミングよく現れる相手に

まちぶせかっ!

っと内心ツッコミをいれる私はイタイ人間だ。


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