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酒に飲まれた恋心  作者: 月帆
本編
17/22

変身

嫌な夢を見た。

そして、母の言葉で時間が確実に過ぎ去って行くことを実感した。

私は、まだ夢の時の中にいる。

そんな気がした。


嫌な時は嫌なことばかりおこる。

仕事も小さなミスばかり。

まだ朝だというのに、ミス。


後悔


「どうした、こういうこともあるよ。」

先輩の優しい言葉。

なんでかわからないけど、だから嫌なんだ。この人は私を甘やかせてくれる。優しくしてくれる。

でも私は殻の中の私しかみせれない。

もっと素直になれたら可愛いのに。


チリイン

携帯を見る。西海…

今度の休みドライブに行こう。


いく度となく繰り返されるメール。

とりあえず無視する。こいつは断っても断っても、ひかない。優しい言葉はあまりないけれど嘘も言わない…気がする。


西海を思うと、少し嬉しい自分に驚いた。

乙女化してますよぉ。

ってか、乙女化って、どういうことよ。


「何か最近調子悪いな。」

先輩が給湯室で声をかける。

そして、さりげなく耳もとで囁く。

「玲は大丈夫。」

甘い顔、優しい顔、きっとこの人は………


「今日、あがり早いんだろ、飯食いに行こう。」

先輩が誘ってくる。

「行きません。」

あっさりと断る。

「も、予約したから 。」

店の名前を書いた紙を渡される。

何度か両親に連れて行ってもらった高級店の名前があった。

「そのまんまで大丈夫だから」

そう言って先輩は立ち去った。そのまんま……今の私は黒いスーツにメガネ。

クール、きれい、かたくるしい私。

夢の中の…殻の中の私がいた。

なんとなく自分が嫌になった。


簡単に性格は変わらない。

でも、雰囲気はかえれる。

「東山さん、早退ですか?」

「ええ、少し用があって。課長にも申請して問題ないっていわれたから。」

「いえ珍しいと思って、すみません。」

「じゃあ、あとよろしくね。」

事務所の女の子と会話する。


早退なんて就職して初めてした。

学校でさえサボったことがないのに……行き先はこの前いったデパート。

店員さんがいっていたお似合いですといわれた、桜色のワンピースを手に取る。


高っ。


スーツには出せても着るか着ないかわからない、普段使いのできないワンピース。

こんなひらひら実用的じゃない。

コートもホワイトの普段なら買わない、可愛いコートを手に取る。ホワイトなんて、手入れも汚れも目立つし大変なのに…。

けど、 大枚をはたいていた。


ついでにバック、靴、おまけに髪の毛までセット。

ネイルってこんなたかいのなんでーー。こんなきらきら付けてパソコン触りにくい。

実用性のない手先になるのに、金払えるかって思いつつ 大枚はたく。


大人買いで私を変えて行く。

こんな可愛い子になりたかった筈なんだ。

こんな時、親からもらった容姿に感謝する。

モデルとまではいかなくても歩けば、軽く振り返られるぐらい美しくなった私がいた。


兄が用意しない限りこんな格好したことがないかも、自分で自分の外見を磨くなんて。

何年ぶり?だろ。


本編、予定ではあと2話で終わる予定です。

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