侵入者デス
堕落に満ちた休日が始まる。
今日は一日寝て過ごそうと思い、昨夜はコンビニで大量の餌を購入。
絶対起きない。
ピンポーン。
せっかく寝ていようと思っていたのに、無視するが何度もインターホンがなる。
今…まだ9時よ。
休日だったら寝てたいじゃない。誰だと思いつつインターホンをみると
先輩と西海がいた。
二人ともジャージ。
は?
返事をしないとドアを叩く音。
やめてください、近所迷惑です。小さく覗けるだけドアを開ける。
どすっぴん。ぼさ髮。
「何ですか?」
「掃除だ。」
「掃除。」
小さく開けたドア。足先を入れられ閉まらないようにして器用にチェーンを外される。
手には工具。
泥棒ーー確信犯です!
何事ですかーーー。
「あの…間に合ってます。」
この人たち、毎週暇な分けないのに頭おかしい。
「もう9時だぞ」
いや、休日ですから西海。
「せっかくの休みなのに」
いや、休みだから寝るんです。
先輩。
「その荷物」
二人の手にはホウキ、モップが握られている。
「これは掃除用具だ」
みればわかります。
一応、女の子のお部屋にズカズカと入り込んでくる二人。待ってください、この前見せたみたいにすぐに帰る気はないでしょう、あなた達。見られては困るものもありんですよ。
これでも。
「ないでしょ。」
どこから気持ちが漏れたのかわからない、またどうやら口に出してしまっていたようだった。
先輩、きついっす。
ホント、見られたくないものもあるんです。
汚物にまみれた部屋に立つ男前が二人。
「俺にだけ、秘密打ち明けたのかと思ったら西海にもだもんな。俺自信なくすよ。何年、口説いてると思ってるんだか。
一応西海とのデートまでアクション起こさずにいたのに、初対面の西海にも同じことするなんてな。」
そういいながら先輩は軽く肩を落とした。
あえてスルーですか。
興味がなくなったんじゃないんですね。
「ま、苦手なことは誰でもある」
口数少ないけど優しいのは西海?
そういいながら二人はズカズカ掃除用具を置きお掃除モードに入って行く。
西海に上着を投げつけられる。
「きとけ」
デカイです。
ここで、大事なことに気がついた。
はっ、私寝る時は冬以外は下着いっちょか裸体。さすがに今は冬なのでパンツ装着、玄関までは寒いのでカーデガンかぶってますが半裸ですよね、これ。
脚なんて全部見えてますよ。
体に悪いですって言われますか?
という前に、見られたあぁああ。だっていれるつもりなかったし、くるの知らないし。
宅配はマンションの下の大家さんが受け取るシステムだからあり得ないし。
親は絶対部屋にいれないのわかってるから、まず電話があるはずだし……だから、こんな格好ナンデスヨ。
なにもみせたがりじゃないんです。
いくらスタイルが良くても、コレじゃ変態デスから。
「いい眺めだったのに。」
先輩……。紳士な割にやっぱり男ですね。
「あとは二人の時ならな。」
西海、傷に塩を塗るなあああ。とりあえず床にばらまかれた服の中からズボンとシャツを手に取り臭わないの確認して着る。
「へーー仕事部屋綺麗じゃん。掃除機かけたら、終わり」
先輩、職場も仕事モードは私綺麗に片づけてますよ。
「この部屋も服とゴミが散乱してるだけでひどくないぞ」
西海フォローになってない。散乱してるから片付いてないんですよ。
って、なんで。二人とも馴染んでいるんですか?
「あたし着替えてるんです。」
「掃除の邪魔だから出てて。」
いや。先輩、ここ私の家だし。
「ゆっくり休んだらいい」
西海、だからここ私の家だから。
いやぁああ。
それ、パンツ。
「色気ないな」
「冷えなくていいじゃないか」
そこ二人、おかしい。
いやぁああ、それは…………。
「やめてください」
負け犬の遠吠えだった。
「意外に楽だったな」
西海、重ね重ね傷に塩を塗るな。
「ご飯にしよ。ああ、気にしないで材料買ってきたから」
先輩、行動読んでますね。材料ないの決定ですか?
今日は休みだから、コンビニで昨夜大量の餌を購入していますよ。もちろん、 火を通さなくていいものばかり。
'
「なんだこの冷蔵庫」
だからーー。
「勝手に開けないでください」
「ほんとだ。コンビニ弁当……寿司にカツ丼。あとおやつ。不健康だな、サラダぐらい買わないと。ビタミン剤に栄養ドリンク……。」
先輩のぞかないで。
「早死したいのか。」
西海ーー。貴方が言うと笑えません。
「じゃあ、料理するから待っといて」
「いいです。作ります。」
言ってからしまったと思う。でも、片づけしてもらっているし…なにかお礼をしなきゃと思うのは甘えられない可愛くない女だから。
久しぶりに台所に立つ。
ちゃんとした料理なんて何年ぶりだ?一応料理道具はあるけどホコリが……米がないと思われているのか買ってこられていたのはパスタと野菜。
これでも学生時代は料理も習ってたんです。
好きだったし。
何年かぶりに料理をしても、割りといい感じにできるものだと思った。
湯気の立ち昇るパスタ、色とりどりの野菜サラダ。
ダイニングテーブルなんて洒落たものはないから、フローリングの床の上にタオルを座布団に食べる。
「美味しい。ピクニックみたいだね。」
先輩、ピクニックは余計です。
「うまいな。布団んと服、ゴミ以外はなにもない部屋だな。」
西海訂正します。パソコンもありますよ。生活感なくて悪かったな。
でも、美味しそうに食べてもらえると…おせいじでも嬉しい。
あれ?
なんか?
おかしくない?
おっさんが乙女モードにーなってるよ。
おいおい。
「なんで料理うまいし、作らないの」
先輩?何を今更…けど、なんでだろ。
面倒臭いわけじゃないんだけど……めんどくさいわけじゃない?
なんで?
「はぁ」
「確かに服は出しっぱなしだったけど、そこまできたない部屋じゃなかったしな」
いや西海、それが汚いだろう。
「ま、洗濯すむまで時間あるし、買い物いくか。」
何をですか?
二人はジャージから着替え出す。
あの胸板見えてます。先輩、細そうに見えて結構しっかりしてるんですね。
西海、筋肉質だと思っていましたが、いい体ですね。
赤くなるほど純情じゃないけれど、じっと見とれてしまう身体だった。
「この先はもっと後でね。」
優しい声で諭す先輩。
「二人っきりでな」
頭をポンポンと叩く西海。
正気にかえる。
みたくありませんーー。




