ベルギス編
夜空には煌く数百単位の星々が浮かんでいる。周辺にある林を抜けて一際高い丘の上に、まるで夜空を顕した様な漆黒の髪をした二人の姿と、星を顕した様な金色の髪を持つ少女がいた。三人は同じ様に仰向けに寝転がり、星空を眺めていた。
三人の共通点といえば、まだ十歳にも満たない子供であった事だろう。しかし、三人は子供独特の無邪気とは掛け離れた雰囲気を発していた。大の大人でさえ、ここまで達観した雰囲気は発せないだろう。
しんみりとした重たい沈黙の中、空気の重圧に耐えかねた様に口を開く。
「明日で最後…か……」
その言葉には様々な想いが込められていた。その言葉を聞き、隣に寝転がっていた少年は、眠るかの様に閉じていた瞼をゆっくりと開けて煌めく夜空を眺める。
「…あぁ…お別れ…だろうな」
「……いや…」
星の様に煌めいた金色の頭髪をした少女は、そう呟くと同時に顔に手を持っていく。
「えっ?」
二人は慌てて身体を起こす。
「……別れたくない。三人でもっと一緒にいたい!! 色々な物を学んで、色々な物を一緒に感じたい!」
少女は顔を手で覆い、指の隙間から涙が零れ落ちる。
「…俺だって一緒にいたいよ!! だけど、それじゃあ、ダメなんだ! いつまで経っても終わらないものなんてない!!」
「―――別れがあるからさ…出会いがあるんだ。確かに俺達は明日で別れるかもしれない。だけど、俺は二人とはまた会えそうな気がする。」
二人に慰められながら、少女の瞳はから涙が止めどなく溢れ出て、頬を伝い、地面に流れ落ちていく。
「…なら……お願い」
「いつかまた皆で集まって……それで、それで―――」
その時に少女が発した、弱々しい最後の言葉は、二人の心強い声に掻き消される。
「分かった」
「約束だな」
少女の切なる想いに二人のはニッと笑みを浮かべると、ゆっくり手を差し出してくる。少女はハッ、と顔を上げて、二人の手を見つめ、躊躇いながらも自分の手を差し出していく。
小指同士が絡み合い、固く結ばれた指は、三人の心情―――別れを惜しむ気持ちを表すかの様に、深く密接に繋がっていた。




