表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖域戦線  作者: 桐ヶ谷港
ベルギス編
17/51

ベルギス編

 夜空には煌く数百単位の星々が浮かんでいる。周辺にある林を抜けて一際高い丘の上に、まるで夜空を顕した様な漆黒の髪をした二人の姿と、星を顕した様な金色の髪を持つ少女がいた。三人は同じ様に仰向けに寝転がり、星空を眺めていた。

 三人の共通点といえば、まだ十歳にも満たない子供であった事だろう。しかし、三人は子供独特の無邪気とは掛け離れた雰囲気を発していた。大の大人でさえ、ここまで達観した雰囲気は発せないだろう。



 しんみりとした重たい沈黙の中、空気の重圧に耐えかねた様に口を開く。

「明日で最後…か……」

その言葉には様々な想いが込められていた。その言葉を聞き、隣に寝転がっていた少年は、眠るかの様に閉じていた瞼をゆっくりと開けて煌めく夜空を眺める。

「…あぁ…お別れ…だろうな」

「……いや…」

星の様に煌めいた金色の頭髪をした少女は、そう呟くと同時に顔に手を持っていく。

「えっ?」

 二人は慌てて身体を起こす。

「……別れたくない。三人でもっと一緒にいたい!! 色々な物を学んで、色々な物を一緒に感じたい!」

 少女は顔を手で覆い、指の隙間から涙が零れ落ちる。

「…俺だって一緒にいたいよ!! だけど、それじゃあ、ダメなんだ! いつまで経っても終わらないものなんてない!!」

「―――別れがあるからさ…出会いがあるんだ。確かに俺達は明日で別れるかもしれない。だけど、俺は二人とはまた会えそうな気がする。」

 二人に慰められながら、少女の瞳はから涙が止めどなく溢れ出て、頬を伝い、地面に流れ落ちていく。

「…なら……お願い」

「いつかまた皆で集まって……それで、それで―――」

その時に少女が発した、弱々しい最後の言葉は、二人の心強い声に掻き消される。

「分かった」

「約束だな」

 少女の切なる想いに二人のはニッと笑みを浮かべると、ゆっくり手を差し出してくる。少女はハッ、と顔を上げて、二人の手を見つめ、躊躇いながらも自分の手を差し出していく。

 小指同士が絡み合い、固く結ばれた指は、三人の心情―――別れを惜しむ気持ちを表すかの様に、深く密接に繋がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ