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聖域戦線  作者: 桐ヶ谷港
SOD事件
10/51

作戦

 城咲から数キロ離れた場所に位置する地下基地。それが、裏ギルドSENTENCE OF DEATH通称SODの本部基地である。およそ二万平方メートルの広さを誇る抜け道の無い要塞となっている。

 周囲の廊下は電気が付いているのにも関わらず、その部屋だけは、漆黒に染まっていた。部屋は五月蝿く感じる程に座喚いていた。

 一部の幹部達でさえ、澄ました顔をしているが、内心では焦っているのだろう。

 秋崎楊炎は苛立ちを表す様にブーツの地面に叩き始める。

 その事に気が付いたのか、周囲の座喚きが一瞬にして収まる。まるで、全員が彼の事を恐る様に静まり返る。

「……おいお前!! 燐が殺られたからどうしたんだ?」

 楊炎は近くにいた下っ端の一人を指差す。

「……それは…燐は内の中でも幹部並に強かった…から…」

 おどおどした様な表情に楊炎は、怒りが込み上げてくるのが分かる。楊炎はスッと男に向けて腕を構える。

「……ボスっ!? 何で!! ああぁぁァ―――ッ!!」

 焔が閃光を放ちながら、男を焼き尽くしていく。男は断末魔を上げながら地面を転がる。

「テメェら、忘れていんじゃねェぞ!! あいつは俺達が囮で飼っていた敵に過ぎねェ!! 同じ学院の生徒相手に本気を出せると思っていんのかァ!」

 楊炎は男の断末魔よりも力強い声で叫ぶ。

 それは、意気消沈していた仲間達を立ち上がらせるには十分だった。

 楊炎は携帯を取り出し、誰かに電話を掛ける。

「そいつを連れて来い!!」

 乱暴な口調で命令すると相手の返事も聞かずに電源を切る。


「早く……全部、ブッ殺す…」

 そこある不気味に光る白い歯が暗闇を照らしていた。





「そうか……」

 泉は燐から詳しい話を聞き、険しい顔をしていた。

 敵は燐が騎士隊もしくわ、それなりの実力者と接触しない様に彼の周囲に一人の見張りを置いていたみたいだ。

 騎士隊に連絡しようものならば、助けるよりも先に奴等は御代を殺すだろう。その所為で身動きが取れなかったのだ。

「まぁ、泉との戦闘で魔力が枯渇するまで争ったから―――魔力による追跡は防げた筈だ。」

「そして、奴等は俺が燐の真実に聞く耳を持たずに、言い訳だと罵って騎士隊に渡すと思っているだろうな。」

 案外納得がいく予測に、泉は頷く。

「あぁ…御代はこれで暫くは大丈夫だ。」

 燐が居なくなった今、利用価値が無くなった彼女はこの事件とは全く関係の無い存在である。

 それは、燐が発見されるまでの話だが…彼が見つかれば、瞬時に彼女の利用価値が浮かび上がってくる。

「まあ、暫くは休憩という事で。魔力の充填や、必要な物が有るしな…二、三日はこの家で落ち着くって事で」

 燐は頷くと泉に勧められるままに、ベッドに横になると、疲れを癒す様に寝てしまった。

 電源のスイッチを切り、部屋が急な暗闇に囚われる。




 これから、どうすればいい……燐の話を聞く限りでは一介の学生に動かせる様な事態では無い。

 騎士隊クラス並の術者が四人、その上に楊炎と呼ばれている燐と同じ焔化を持つ特異体質の頭が一人。

 総数数百の兵に及び、敵アジトは彼等の都合の良い抜け道すら無い要塞となっている。

 奴等やっぱり強いな………

 通常、緊急時に自分達が逃げられる様に秘密通路を造って置くものである。けれども、それをしないという事はどんな状況であろうと勝つ自信があるからだろう。

 それ程までの強大な敵に対して此方は戦闘員が四人と護衛対象が一人。圧倒的な戦力差だろう。例え、俺と燐が常識離れした力を振るえるといっても相手も精鋭を数で送ってくれば、当然限界も存在する。戦えばどちらが勝つかなど考えるまででもない。

 少しでも勝率を上げたければ、味方同士のパワーアップもしくわチームワークの底上げをしなければいけない。


「泉くん?」

 フッと声を掛けられ泉は背後に振り向く。

「鬼み……愛か、びっくりした…!?」

 そこには風呂上がりのパジャマ姿の愛の姿があった。

「そんな所に居ると風邪引いちゃうよ。」

「あっ!? いや、そうだな…」

 気が付けば、泉は二階のベランダにまで来ていた。

 無意識の内に熱をもった身体を冷したいとでも思ったのだろうか。

「気持ち良いし…もう少し風邪に当たって置くよ。」

「じゃあ、私も…隣良いかな?」

 二つ返事でOKすると、曇天と表現すべき空を見上げた。

 雲が星や月を覆い尽くし、本当の暗闇を作り出している。

「……今にも雨…降り出しそうだね…」

「………そうだ!! 前から聞きたかったんだけど…愛って、どうして戦闘のクラスに入学したの?」

 当然、学院には情報系と戦闘系以外にも普通科と呼ばれるクラスがある。どのクラスも全体的な男女比は同じだが、それでも幾分、戦闘班のクラスは女子が少ない。それは、性格という面もあるのだろう。

 愛は落ち着いた性格だが、そういった生徒の六、七割は普通科に入学する。

「えっと、ははは……」

 どう答えれば良いのか分からないという様に苦笑いを浮かべる。

「……んーん…私のお祖父ちゃんが堅気な人で……自分の身は自分で守れ! みたいな感じで、幼い頃から格闘技とかやらされていたから…それに、結構人の為になる事って、好きだから…両親押し切って入学しちゃった……それに、昔にちょっとあってね。」

「……? あぁ、道理で格闘訓練やらせると一人だけ次元が違う訳だ…」

 以前、クラス内で格闘訓練の演習があった時、周囲に人の山を創り出した驚異的な実力者である。

「…うー、でもさ。」

 頬を膨らませながら、反論するのは些か卑怯なんじゃないかな……

 そう思いながら、目を下に逸らすと必要以上に強調された胸があった。いや、あるのは当たり前だろうが、入浴後という事で服と身体の密着度が半端無く凄い。

 急に激しくなった動悸を彼女から見られない為に彼女とは反対方向の空を見上げる。

「って、どっち向いているの!?」

 チッ、気付かれたか……

 渋々、振り向くと愛は両方の腕を支えにして泉に近づいて来ていた。

 ダメだ……本当にこの子は…男の本質を全く分かってない…

 俺じゃ無かったら襲われているぞ……

「…やっぱり興味ないのかな…」

 愛が何かをボソッと呟く。

「えっ? 何か言った?」

「ううん!! 何でもない!!」

 愛が顔を真っ赤にして否定する。ポツリと身体に何かが当たる。

 泉は真上を見上げると、額に雨が当たるのが分かる。針の様に降り注ぐ雨は次第に勢いを強めていく。

「雨か……」

 そう呟いた泉の肩に、突如負荷が掛かる。どきっ、と脈が早まるのを感じて、慌てて振り返ると、愛が気持ち良さそうに泉の肩を枕にして寝てしまっていた。

 それは、当然だろう。今の時間は12時を過ぎ、深夜と言っても差し障りない時間となっている。

「お~い、風邪引くぞ……」

 ムニャムニャという声は聞こえるが、その言葉に対する返答はない。仕方なく泉が愛を担ぎ上げ、ベッドまで運んでいく。

「本当に…真人だったら襲われているな……」

「………むに~」

「……実は起きているだろ?」

「なっ、何でバレたの!?」

 泉は愛の頬を摘みながら、背後を顧みる。

「そんな寝言を言うのは、二次元の世界だけだろ!?」

そうして夜はさらに深みを増やしていく。





 漆黒の閃光は空気を切り裂き、凄まじい速度で七本ある支柱を避ける様に螺旋を描いていく。

 その姿はまるでこの世界から無駄な抵抗を取り除いた様であった。

 閃光は瞬時に速度を落とし、壁に向かって跳ぶ。

 魔力を足から放出し、一時的な引力を発生させて壁に張り付く。足から爆発的な力の増幅を認めると漆黒の閃光は速度を上げて飛翔する。

 ガキンッ!!

 金属同士が接触する音が数回鳴り響く。

 漆黒の魔力が鞘に込められ、爆発的な力の循環が行われる。鞘の周囲の空間が喰われ、漆黒の粒子を纏っていく。

 金属同士の激突は瞬時に均衡を崩し、刀がまるでバターの様に溶けていく。

 ―――刹那

 爆発音が辺り一面を包んでいた。金属の破片がいくつかに分裂して、爆風によって飛ばされる。

 同時に鞘が纏っていた粒子が空間から自然消滅していた。

 漆黒の閃光は姿を消し、そこには上下黒色のコートを纏っている南座泉と呼ばれる一人の少年の姿があった。

「やっぱり…難しいな……」

 ボソッと呟かれた言葉と裏腹に表情は清々としていた。



 優と泉が出会った時から一日が経過している。真人や愛、優は燐の話をすんなり受け入れ、許してくれていた。

 優自身も明るさを取り戻していた。

 燐は未だに魔力が全快といかないので、二日程の休息を取る事にした。本人は、ベッドの上でもやれる事はあると言って、魔法の研究の論理に挑んでいる。

 愛と優は魔道具を改良する必要があると言って部屋に篭ったままである。真人は、持って来ていた魔道具を整理して、改良に勤しんでいる。

 泉は、家の地下にある訓練所に来て自動規律型戦闘用魔道具との戦闘を終え、三時間ぶりの休憩をとっていた。

 泉は四歳の頃からこの部屋で魔法訓練を積んでいた。

 その頃はまだ、両親も存命であった為によく練習の手合わせをしてくれていた。

 幼かった泉には、両親の実力は限りなく無限の様な強さであった。

 閃光としか言い様がない高速移動。

 一撃で全てを無に返す破壊力。

 圧倒的なまでに許容している魔力。

 そして心の在り方である。

 それら全ては、泉が受け継いでいる。


 泉はソファーに座り込み、天井を見上げながら呟く。

「想いを貫け……か」

 両親が俺に伝えた最後の言葉である。その翌日に二人の死亡確認がされた。

 まるで次の日に自分が死ぬと分かっていた様な遺言である。

「格好良いね…」

 急に聴こえた声に内心、冷汗を流しながら背後に振り向く。

 そこには心配そうに顔を暗くしている優がいた。

「もう良いのか?」

「あっ、うん。これで準備完了だよ。後は、愛ちゃんの用意を待って貰うだけでOKかな?」

「……本当に良いんだな?」



「じゃあ、俺達三人で極秘に潜入して敵の幹部を叩くって事でOK?」

 真人の声に泉と燐は頷く。

「ちょっと、真人くん?」

 愛が突如として手を挙げる。

「ん、愛ちゃんどうしたんだ?」

「確かに潜入は人数が少ない方が良いのかも知れないけど……私と優ちゃんは置いていかれるの?」

「まぁ、そうなるな。この家なら安全と言っても良いし。愛ちゃんは、もしも何かあった時の為に優ちゃんと一緒に居て欲しいんだ。」

「それって本当は私達が弱いから安全圏で居てろって事!?」

「………そうだ…」

「私だって、十分戦える!」

「三人共、喧嘩は辞めようぜ……」

 優が加わり、口喧嘩となって来た口論を泉が中断させる。

「泉? お前、まさか二人を連れて行く気か!?」

「泉くん……」

「優は確かに、研究者としては周囲よりもズバ抜けていると言っても良いけど、戦闘と研究は全く違う物なんだ。一度の判断が死に直結する、運が良い何て物が通用する世界じゃないんだ…俺はそれを七歳の頃に実感している。だからこそ…特に優には来て欲しくない…」

「……それでも! いつまでも守られているのは嫌なの………私はそんなに弱くない!!」

 優が、今にも泣き出しそうな表情になっている。

「私も……私も、同じ学院の生徒として仲間と共に戦いたい!!」

「どうするんだ、泉?」

 燐と真人は困った様な表情を浮かべてこちらに問いかけて来たという事は、この問題の決定権は泉に託されていると認識しても良いのであろう。

 本当はここで断った方が彼女達の身の安全としては正解なのだろう。

 敵の実力は本当ならば俺達の様な学生に勝機がある程に弱い相手ではない。

 俺達に先制攻撃の権利と焔化を持つ燐が居るからこそ考案が出来る作戦だ。

 そこに実力の分らない二人を加入させた所で足を引っ張るだけの筈だ。

 けれども。

「分かった……」

 その言葉に二人は飛び上がる様にして喜ぶ。

「……だけど、それは二人掛りで俺を倒す事が出来たらの話だ……もし、出来ない様なら―――」

 二人には冷酷かもしれないと思うが、中途半端な力で来られるとすぐ目の前には死しか待ち受けていない。

「……そんな…勝てる訳…無い」

 顔を蒼白にした優が呟く。愛は優が何の事を言っているのか理解をしてはいないだろう。

 俺は学院内ではあの魔法を使った覚えは数少ない。それも、全てがあの魔法の本質を付いていた訳では無い。力の鱗片を奮っただけに過ぎない。

 それは、あまり目立ちたくはないという気持ちがあるのも事実だが、あの魔法は時々に制御出来なく事があるからだ。

 魔力の暴走は魔力の総量が多い者達程多くなり、被害の範囲は増幅する。実際にはそれなりのコントロールを付ける技術を身に付ける事によって回避する事が出来る。

 俺自身も最近ではある程度の制御を身に付ける事が出来る様になって来た。

 けれども、暴走が一度起これば狂った機械の様に周囲を無差別に攻撃してしまう。

 そんな事態を避ける為にも俺はあの魔法を使う事を極力避けている。

「大丈夫だよ、優ちゃん!」

「……愛ちゃんは知らないから……言える…泉くんの本当の力は私達の想像を超えてる…」

 愛が優の肩を抑えるが力無くグッタリとしているだけである。

「……それでもだよ!!」

 優の肩に掛かる圧力が強まる。

「それでも、最初から諦めたまま……座ったままじゃあ何も始まらないよ!! 勝てる勝てないは最後に付いて来る物だよ! 大切なのは諦めない心だよ!! そうでしょ、泉くん」

 不意に優の顔が上がり、泉を見上げる。

「あぁ。そうだよ……ありきたりな言葉だけど、諦めたらそこで終わりなんだ。優の命だってそうだ。諦めなかったからこそ、今ここに居るんじゃないのか? 研究の事だって、彼奴らから逃げるのだって、諦めればいつでも終わる事が出来た筈だ! だけど、諦めなかった……それをここで…こんな中途半端な所で諦めて良いのか? 本当に諦めたければ、この家で待っていれば良い。俺はそっちの方が良いって今でも思っている……だけど、さっき優が言った言葉……俺は正直、嬉しかった。守られてばかりいるのは嫌なんだろ? それじゃあ、幾ら相手が強くたって、諦めるなよ!! 敵は俺なんかより強い奴なんて大勢いる。確かに、生き残るには力が要る…だけど、それが一番必要じゃない。本当に必要なのは強い気持ちだ!! どうするか…自分で決めろ。」

 優の瞳には薄っすら涙が浮かんでいる。それ程に、泉の気迫が物凄かった事を証明している。


 愛は余りの驚きに何も言えなくなってしまう。

 普段から一緒に居る真人でさえ、目を見開く様にして驚いている。

 普段の彼は穏和な性格で誰にでも優しく接している。嫌がらせをされ様とも、陰口を叩かれ様とも軽く笑い飛ばす様な存在だ。

 その彼が本気で起こっている。

 それ程までに、彼が本気になる何があるのだろうか…

 いや、もしかすると………

 興味本意で死闘に加える訳にはいかないという彼の思い遣りなのかもしれない。

 私が泉くんに気を取られている時に抱えていた肩がするりと抜ける感触がする。


 優が先程までとは違うハッキリとした足取りで立ち上がり、泉の目の前まで来る。

「……ごめんなさい!!」

 顔を床に向ける様にして頭を下げる。

「迷惑掛けて、ごめんなさい!! ハッキリとした気持ちも出来てなかったのに我儘言ってごめんなさい!! だけど、私は……泉くんに勝って連れて行って貰う! 君の隣で戦いたいから!!」





「覚悟は出来ているよ! 泉くんには悪いけど……勝てせてもらう!!」

 階段を降りて来る音と共に声が響いてくる。

 一瞬、彼女の事を見間違ってしまった。迷彩柄の上下に腰に巻いた巨大なベルトにあるポーチやホルダーに複数の魔道具を差し込んでいる。腰近くまで伸びた黒髪は邪魔にならない様にポニーテールにしてある。

 しかし、泉が錯覚したのは服装の所為では無かった。普段の彼女からは想像も出来ない程の威圧感を放っているのだ。敵を倒す事に微塵の躊躇いを含まない。それぐらいで行かなければ倒せないという様に。

 改めて優を見遣ると、泉の服と同色のコートを纏い、指には複数の指輪をしている。腰に差した細剣が一本に左肩から右腰にショルダーバッグが掛けられている。


「俺も負ける気は無いさ…用意が出来たなら、下に行こう…」

 泉は階段のすぐ横にある壁に向かう。誰か分からない人の絵を退けて、背後にある壁を押し込む。

 突如として目の前の壁が上下にスライドして十人程が入れば圧迫される小さな個室が現れる。

「乗って…」

 三人が個室に乗り込むと中にある幾つかのボタンがあった。泉がその内の一つを押し込むと、ボタンは赤い光を放ち扉が閉まっていく。

「…何これ?」

「えーと、両親がこの家を造る時に緊急事態に備えて地下基地を造ったんだよ……」

 暫くして、チン、という音を立てて目的の場所に辿り着く。

 開いた扉の先には白いタイルの一本道があるだけだ。泉は二人を先導する様に歩き続ける。

 途中には複数の扉があった。けれども、それ等の全てを無視して一番奥にある部屋の扉を開ける。

「この部屋が一番暴れられると思うから…」

 その言葉通り、中は四百メートルのトラックがスッポリと入る大きさだ。


「この部屋の中は戦闘用に改造してあるみたいたがら、安心して本気出してくれても良いよ。」

 言い終わると、右手に提げた刀を調子を確かめる様に回転させる。

 刀の周囲には次第に粒子が集まり、刃を形取る。

「ゲームは簡単だ……十分以内に有効打を決めるか、または十分経てばそっちの勝ち。逆に、俺が二人を試合続行不能にすれば俺の勝ちって事で良いかな?」

 それだけを言い終わると泉の身体から閃光が飛び散る。泉が居た空間に漆黒の粒子が集まる。瞳が眩むような閃光が次第に輝きを失っていく。そこには、黒衣の鎧を纏った泉の姿があった。

「行くぞ!!」


 泉は右足を引き、刀を下段に構える。その瞬間、泉の背後に二つ分の影が映る。

 影に映った棒が急に長さを変化させる。収縮式の警棒だ。

 警棒は泉の首筋を跳ねる様に横一閃に振るわれる。

 泉は身体を捻る様にして前方に倒れると、左手を地面に付き身体を縮めた反動で背後の敵に向かって強烈な蹴りを放つ。

 確かな圧力と、ガキッという何かが外れる音が響く。泉は空中で回転して軽い音で地面に着地する。

「……今!」

 泉の足元に鎖が輪を作っている。即座に脚を引き上げ様とするが、金属は脚を締め付け離そうとしない。



 先程の不自然な音はこれだったのか………

 警棒が蹴りの圧力によって壊れて瞬時に中に収納してあった鎖を泉の着地点に撒いておく。



 同時、前方にいた優が魔方陣に手を添える。彼女の複数の指輪の内、炎と風の指輪が光輝いている。

 愛が囮役をする代わりにその空いた隙に大技を仕込む。優達、研究者は次世代の魔方陣を開発することも多々あり、戦闘技術を要しない魔方陣戦術は俺達魔道学院の生徒よりも力量は上だ。


 幅十メートル程の複雑怪奇な魔法文字を描き出している。光が一層の明るさを強めると、魔方陣から巨大な牙が現れる。

 触れる物を全て切り裂く様な鋭利な牙が数十個上下に並びながら現れる。

 次第に姿が現れ、神話にでも出て来そうな赤緑の龍が出現する。龍は天井へと飛翔をしながら、全貌を表していく。優は腰に差し込んであった細剣を鞘から引き抜く。白銀の刀身は天に向けられる。

 ―――刹那

 天に上ろうかという龍は方向を変えて、一心に優を目指し速度を上昇させていく。

 凄まじい閃光と風圧が辺り一面を吹き抜ける。

優の刀身にバチッバチッと赤緑の電撃が駆け抜けている。

「―――ッ!?」

 細剣が薙払われ、可視出来る破壊力が泉を襲う。細剣から放たれた電撃状の龍は地面を削りながらジグザグに突き進み泉を呑み込む。

 呑み込む直前に右足から鎖が外される。そのまま俺の身体を縛っていれば金属である鎖を通って電撃が愛の身体に届くからであろう。

 よく考えられた策だ。並の使い手ならどうする事も出来ずにただ殺られるしかない。

 けれども、俺も並から外れた速度、攻撃力、魔力、戦闘経験がある。

 電撃がジリジリと、痛みとなって身体を襲い、瞳を顰める。全身に巡っている粒子の展開を強化する。刀を地面と垂直に立てると高密度の粒子を精製する。

『斬影』

 漆黒の龍が赤緑の龍を切り裂き、一瞬にして無に返す。

 その勢いは龍を切り裂くだけでは止まる事は無く、一本の稲妻となり地面に激突する。

 シュルシュル、という燃焼音の後に軽々と地面に着地する。

 泉は身体の調子を確かめてみるが、電撃を喰らっていた時間が短かったのが幸いして殆ど全快に近い。


「えっ、本当に……あれを、破壊しちゃうなんて……」

 愛は唖然した様に呆けている。

「…まだ!!」

 優はそう言いながら右手をクイッ、と動かす。

 泉は先程の隙の間にまた何かを仕掛けたのかと思い、身構える。

 ―――瞬間。

 何もない筈の背後に悪寒を感じて空中十数メートルに飛び上がる。

 悪寒は見事に的中する。さっきまで、泉が居た場所に凄まじい電撃が襲う。周囲に土煙が舞うが赤緑の閃光が煙を切り裂く。

「なっ……!?」

 泉は口をパクパクさせながら唖然とした表情を浮かべる。

 そこには赤緑の電撃を纏った数十匹の狼が遠吠えていた。狼は凄まじい速度で分裂を繰り返して数を増やしていく。

「愛ちゃん、行くよ!!」

「あっ……うん!」

 唖然とした表情を浮かべていた愛は警棒を構えて魔力を循環させる。その声が引き金となり弾丸の様に狼が泉に放たれる。

 ドドドドゴゴゴゴォォォーーーン!!

 電撃が一秒に数十発の速さで撃ち込まれる。部屋が軋み、まるで地震が起きた様な錯覚を覚える。

 泉は凄まじい速度で壁を駆ける。余まりの速度に纏っている粒子さえ雪の様に降り撒かれる。

「―――ヤバッ!?」

 殆どが声にならなかった。声は爆音によって掻き消され、泉を中心とする半径五メートルに立て続けに爆発が起こる。身体は吹き飛ばされ、十数メートルの地点から地面に墜ちていく。身体に纏っていた粒子が消滅して、さらに刀さえ手放す。


「やった……」

「うん……」

 二人は呆然とその現状を認め、グッと右手を握る。このまま、泉が地面に激突すれば十分な有効打となり、二人の勝利は確定となる。





―――けれども。

「えっ?」

「何なの…あれ……!?」


 地面まで数メートルと迫った時、泉の手がピクリと動く。瞬間、空中にあった刀を左手で掴み取ると地面と垂直に向けていた。途端に刀に複雑怪奇な魔方陣が敷かれていく。


「あれっ…て!?」

 何処かに見覚えがあると思えば、泉が燐と戦ったあの時に使った魔方陣であり、高圧縮粒子を一点に集合させて放出する魔法であった。

 けれども、あの時とは逆に魔方陣は巨大化していく。泉自身を地面から隠す様な大きさに達すると、突如として粒子を爆発させる。

 燐のグローブと同じ、推進エンジンの代わりで圧縮粒子による反動を受けてクルクルと回転しながら空中で体勢を整える。そして泉が着地したと同時に漆黒の粒子が噴射する。

 泉は地面に刀を擦り付けながら一瞬の内に優の目の前に姿を現す。

 優は緊迫した状況を受け入れながらも、長刀を振るい距離を取ろうとする。

 けれども、ガキッ! という音と共に金属が激突する。風を切り裂く音が聴こえ、死角から何かが飛んで来る。軽い爆発音と共に土煙が上がるだけで殺傷能力は無いようだ。

 直後、考える暇も無く土煙を突き抜けて優が斬り掛かる。

 身体を動かそうとした時、足裏が地面から上がらない事に気が付いた。

 泉の足元には強烈な重力魔方陣が敷かれていた。あの土煙の間に、愛が仕掛けたのであろう。

 受け身が取れず、衝撃波によって切れた頬から血が流れる。

「これで……終わりよ!!」

 愛は叫びながら垂直に警棒を叩き付ける。その威力は粒子の壁を突き破るには十分過ぎる程の破壊力を秘めていた。

 泉は優の攻撃を押さえている所為で、背後まで手が回らない。そこまで考えられた連携だという事だ。


 ゴオオォォォ―――ン!!

 愛は確かな手応えを感じていた。そして、自分自身の攻撃が粒子の壁を突き抜ける筈だと確信していた。


 けれども、そこに在ったのは警棒の軌道を喰い止めている刃の存在であった。

 もし、泉が愛の攻撃を防ぐ方を選んだならば、優による攻撃を喰らっている筈である。

 土煙が視界の大部分を占めている所為で優の姿を見つける事さえ困難になる。

 その時、警棒を押さえていた刃が動くのを感じた。警棒を握り直そうとした直後に、刃がまるで愛を狙い撃つ様に的確に打ち込んで来る。

 緊張感を味わいながら、遅れない様に反応する。

 けれども、そう長くは続く物ではなく、後ろ退さりを余儀なくされる。

 退避した瞬間、身体の一部が何かと激突する。即座に振り向くと、そこには愛と同じ様に目を丸くした優の姿があった。二人は状況が読み込めない様に呆気に取られた顔を見合わせる。

「……どういう事!?」

「 確かに決まった筈なのに……」

 二人は背中合わせに土煙が晴れるのを待つ。冷汗が首から流れていくのを感じる。

 幸い、土煙に紛れて泉が仕掛けて来ることはなく、視界が回復する。

「えっ!?」

「………っ!?」

 当然、二人の目の前には泉の姿があった。漆黒の粒子、全て塗り変える様な黒の髪。鞘が抜けない不思議な刀を右手に持っている。

 けれども、いつもと構えが違う。普段の構えが訓練された兵士の様な物であるとすれば、今の泉の構えは自己流を貫いた構えであった。

 泉は刀を鞘に収まった直刀である事を有効利用した特異な持ち方をしている。

 鞘の中央を持ち、両端にはそれぞれ均等の刃がある。まるで普段の刀を二つ接合したかの様な形状だ。

 泉は刀を懐かしむ様に握り直して眺める。

 視線を二人に戻すと、刀をブンッ、と一回転させる。バキッという乾いた音が響き渡り、足に仕掛けられた重力魔方陣が破壊される。

「……次で最後にするよ!!」

「援護、任せるから!!」

 二人は同時に泉に向かって行く。

 警棒を横一閃に払い退ける。甲高い音が響き、警棒は刃に止められていた。と同時に、愛の背後から飛び上がる様にして泉に電撃の龍が襲い掛かる。

 先程の経験を経て、威力は着実に上がっている様だ。まともに喰らえば、泉とて危険に追いやられるだろう。

「……本当に…優には呆気に取られるよ……」

 しかし、泉は刀を回転させていく。刀は、円盾ようになり、龍の激突を喰い止めて逆に周囲に霧散していく。

 呆気に取られた愛は、隙を突かれて蹴り飛ばされる。

 意識が刈り取られそうになるが、唇を噛み、意識を保つ。何とか、蹴り飛ばされた後に受け身の姿勢を取れたので深い傷にはなっていない筈だ。

 けれども、身体に力が入らずに立つ事さえ、容易ではない。

 龍が分裂した姿である狼の数十匹が泉を囲む様に退治している。

 泉は回転したままの円盾を頭上に掲げる。

 ギュィィ―――ン!!

 嫌な音が響き、一層に回転速度が上昇していく。

 瞬間、泉は円盾をまるでブーメランのように放り投げる。泉を中心として外に円を描くように次々と狼が霧散していく。円盾は泉の手に戻ると、回転を弱めていく。


 即座に泉は背後に居る優に向かって駆ける。刀を優の首筋目掛けて斬り付ける。

(あれ…!?)

 優は何処か泉の攻撃に違和感を覚えながらも精一杯に首を捻り、軌道から避ける。


 泉が優の首筋を狙った時、何処か違和感を覚えた。攻撃スピードが先程までと段違いに遅くなり、優が限界を出せば避けられるといった程度の物であった。

 今まではこちら側が手数で攻めていたからこそ、泉の攻撃を避け切り、守る事が出来た。

 一対一の状態では泉の攻撃は避けれない筈だ。あえて彼は手加減したのだ。優に最後の機会を与える為に。


 優は叫び声を上げながら、空いた隙を突く様に懐に潜り込む。殆ど、一瞬の出来事だった。

 優は一つのミスも許されない緊張感の中、泉の腹部に早技で魔方陣を敷いていく。

『ボルティーノ・ヒィアンマ』

 この一撃に全てを掛け、全魔力を集中する。零距離攻撃は、泉の粒子を突き破り、身体を呑み込むように吹き飛ばす。

 光が柱が迸り、泉は術も無く吹き飛ばされていく。優自身も圧力に耐えきれずに転がる。龍は壁に泉を喰い付けるようにして消滅した。

 泉の顔は、前髪が表情を隠してしまっているが、途轍もない質量を正面から受けたのだ。苦痛に歪んでいるに違いない、その証拠に泉は、身体を微動だにせず、ぐったりと壁に凭れ掛かっている。



「愛ちゃん、大丈夫!?」

 優は転がった時に付いた埃を叩き落としながら、愛の傍に駆け寄る。

「…うん。まだ、身体が思う様に動かないけど…やったね!!」

 優は微笑み合いながら愛に肩を貸し、立ち上がる。

 向かう先は、優自身が吹き飛ばした泉の所である。泉は数十メートル離れた壁に掛かる様にしていた。

 気絶まではしていないが、全く動こうとしない。本当ならばこんな風に横たわっているのは優の筈だった。けれども、たった一度だけの隙を創ってくれた。

 そのお陰で優は勝利を収める事が出来た。

「泉君!!」

 優の叫びに応えたのか、あるいは、麻痺が回復して来たのか泉は立ち上がろうとする。

「泉君、大丈夫なの!!」

 刀を杖代わりにして足場を安定する。けれども、直ぐに崩れ落ちてしまう。

 慌てて二人が両端を抱え、床にそっと降ろす。

 身体から力が抜けていくのを感じながら眠りについていった。



「……くん……泉君!!」

 耳元から声が聴こえて来る。いや、声が大きいだけでそれ程近いという訳では無いのだろう。

 身体を揺らされて深い暗闇から無理矢理引きずり出される。

 泉は目を擦りながら周囲の様子を確認する。

「あっ、起きたよ。皆!!」

 その声によって、複数の足音が響いて来る。

「寝……」

 むたい。と言おうと思っていた。いや、現象はそんなに甘くなかった。

「寝たら……焼かれるか、凍らされるか、刺されるか、のどれかだぜ!!」

 真人の恐怖の呪文によって渋々、起き上がる。

 周囲はタイル式の巨大な部屋ではなく、普段使用しているベッドの上だった。携帯を取り出して日付けを確認する。日付けは自分の記憶と同じ事から、まだ優達と戦ってから一日経っていない事になる。ただ、時刻は午後六時を過ぎており、もう夕方で六時間程寝ていた事になる。

「本当に心配したんだよ…」

 泣き出しそうな優に苦笑しながら起き上がる。

「まあ、まともに喰らった時はヤバかったけど、もう大丈夫だよ!」

 ニッと、笑顔を作る。

「そうだ!! 泉、お前本当に負けたんだよな!? じゃあ、どうするんだよ、この二人も連れて行くのか?」

「あぁ…そうだな。約束は守るよ!!」

 泉の返答を聞いて、二人はやった!! とばかりに嬉しがる。

「……それに二人の覚悟も分かったから……きっと、助けになる筈だよ。」

 それは、泉があの時に感じた、優や愛の行動から出た本心だったに違いない。

 愛や優は泉を倒すつもりで全力を尽くしていた。殺す事は無くても、もし一歩間違えれば重症を負っていた。けれども臆する事無く、重圧に打ち勝ち勝利を収めた。泉はその事を指しているのだろう。

 優は認められたという事に徐々に頬を朱に染めていく。

「あっ、優ちゃん照れている!」

「そういう、愛ちゃんだって!!」

 愛にそう指摘されて、仕返しとばかりに私も言い返す。


「そうだ! 真人、千崎さんの身はどうだった?」

 彼女の身が安全ならば、敵にこちらの状況を知られていない事になる。真人には、その為に一人だけ学院に行って貰っていたのだ。

「……いや、それなんだが……」

「まさか……何かあったのか!?」

 燐と泉の声が重なり、泉は半ば布団を飛び出すように驚いている。もし、彼女が敵側に連れ去られたとなれば、こちらは圧倒的に不利な状況に陥る。

「いや会えなかったのには代わりは無いんだが………詳しい話は聞けなかったが、風邪に掛かって昨日から学院には来ていなかったそうだ…」

「良かった…」

 燐はホッと息を吐く。

「……風邪か…」

 本当ならば、彼女の家にまで行って貰った方が良いのだろう。けれども、敵も情報を集め、こちらの位置を把握し始めている。学院ならば、真人が行くのは不自然では無いが、知り合いでもない個人の家まして、敵の人質だった千崎の家に行くのは、些か危険過ぎる。

 少し嫌な予感が頭の中を過るが、現状では彼女に関する情報が少な過ぎる。

 一応、ハンカチを渡す時に周囲の不自然な人影が気になり対処はして置いたが、それだけでは安心は出来そうにない。

 この事を踏まえた上で潜入しなければ、予想外の事が起こった時に対処出来ない。

 そうしっかりと心に言い付けると、突如として身体が重くなってくる。

「じゃあ…潜入は明日の明け方に実行するから、今日はもうお休み………」

 そう言い終わると、誰の反論も受けずに寝息を立て始める。周囲にいた四人は呆気に取られ、苦笑が連鎖していく。

「泉は緊張感が無いな……」

「じゃあ……俺も眠いから、寝るよ。」

 欠伸を咬み殺しながら燐と真人は部屋を出て行く。

「じゃあ、私も寝るね。」

 おやすみ、と言いながら愛も部屋を去っていく。

 最後まで残っていた優は部屋の電気を消し、他の皆と同じように自分の部屋に戻っていく。

 まだ、やる事は残っている。あの時、優や愛は二人掛かりでも泉には敵わなないとさえ思う強さがあった。

 自分達が勝てたのも手加減をされていたからだ。その事に怒りはない。本気で戦えばどちらが勝つかなど最初から決まっている。

 だからこそ、迷惑を掛けない為にも魔方陣を完璧に仕上げなければならない。自分の為に戦ってくれているのだ。その本人が途中で逃げ出すようでは格好が付かない。


 部屋に戻った真人は荷物を確認し、ベッドのすぐ傍に片付けて置く。

「ふあ~、眠いから寝よ!」

 倒れ込むようにベッドに寝入ってしまった。

 今の時間はまだ夕日が沈んだ直後だ。けれども、潜入作戦は明日の四時に行われる。その後は安心して睡眠出来るか分からないからだ。

 昨日は一日中、作戦の為に考えを練っていたので、疲れが溜まっているのであろう。

 普段なら眠れない時間でも、数秒を数える暇も無く、深い眠りに落ちていく。

 こうして、平穏な日々は一夜の間に去っていく。

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