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聖域戦線  作者: 桐ヶ谷港
SOD事件
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プロローグ

始まりは百年前。

この世界は混沌に満ちている。それは比喩でもなく、ただ率直な感想を述べただけに過ぎない。世界には、地球温暖化や砂漠化、エネルギー資源枯渇、経済状況の悪化など様々な問題を抱えていたのは、事実である。

しかし、たったそれ等の問題だけで混沌と呼ばれる程に浅はかな闇ではなかった事は確かである。


百年前、当時はまだ架空想像上の生物であると信じられていた存在が顕れた。それは、漆黒の影を身に纏い、人間を咀嚼しようと企み近付いてくる魔物。人間を虐殺し、残った魂さえも冥界に連れていく悪魔。天上の光で、全ての邪悪な存在を浄化しようとした天使達。全ての根源―――創造主である神々等、それこそ人間が知っている様な存在から、その片鱗すら掴めない様な存在まで多種多様であり、まるで夜空に浮かぶ星々の様であった。



 第二次世界大戦がアメリカやイギリスなどの大国連合側の勝利が確定してから、一世紀が経過した頃。突如として顕れた存在に、人間達は驚きを隠せなかった。

先程も挙げた様に、未知の存在との接触である。悪魔や魔物、天使以外にも多くの異なる種族が顕れ、地域によっては人間と同じ様にして受け入れられた所もあったそうだが、大部分の異なる地域では自分達と違う存在を受け入れる事が出来ず、家畜以下の奴隷として扱われる事や、迫害を行う事もあったそうである。

その事に業を煮え滾らせた彼等は、怒りを爆発させ、たった一週間の間に北アメリカの半分が為す術もなく占領された。占領地はそれだけに収まらず、一週間後には北アメリカ大陸全土が、一ヶ月後には南アメリカ大陸の殆どが占領地となった。勢いはそれだけでは留まらず、次々と侵略、制圧を繰り返していった。

 世界各国が慌てて戦力を整え、主に悪魔や魔物、神々、天使と呼ばれるべき存在との全面戦争に発展していく。後にこの戦争は第三次世界大戦と呼ばれるようになる。


 しかしその時、人間達は自分達の愚かさに気付く事となる。

どうして世界でもトップクラスの戦力を保有するアメリカが、瞬く間に占領された訳。それは、多種多様に現存する種族の中でも、人間は極めて最弱の部類に位置していた事にある。例え、奴等に数百発の銃弾を撃ち込もうが、都市を壊滅させる程の威力を含んだミサイルを撃ち込もうが、人間側の最終手段である核兵器を持ち出そうが、威力を削がれ逆に弾け飛ばされる。また、着弾前に気付かれ瞬時に破壊され、放射能や熱など、彼等の皮膚には物理攻撃は通用しない。


 しかし、人間達もただ殺られるだけでは終わらず、世界的にも有名な科学者達が集まり、彼等が行使した力を解析し、人間側にも奴等と対等に戦える力が備われる様になる。世界の理――魔法の発見である。

魔法は、たった一つの理論によって成り立っていた。

アニメや漫画の様な長々しい言霊を紡ぐ様な事はなく、自身の身体の内側に流れるエネルギーである魔力を掌握し、それを糧として魔法の構築を行う。

当然、それまでオカルト、非科学として捉えられてきた分野でもあり、誰もが簡単には魔力を理解、掌握する事は出来なかった。また例え、魔力を掌握出来たとしても、戦闘訓練を積んで居る者が必ずしも魔力総量の数値が高いという訳ではなかった為、戦力としてはほんの一握り程度にしか集まりはしなかった。

しかし、それを克服する為に発見された、たった一つの方法。

 その名を―――魔道具と呼ぶ。

 魔道具は魔力を自身が循環機器となり、少量の魔力であろうとも、その数倍近くまで威力を増幅させる事が出来る。

また第一世代の魔道具は、簡素な作りではあった物の、魔道士の魔力、性質を効率良く放出出来る形状を模り、それまでの戦闘経験を覆す程の力を与え、唯一無二の相棒として活躍した。


 戦争当時、敵味方から最強とまで唄われた魔道具は、一本の灰刀であった。その刀の外見から『灰色の刀身』と二つ名で呼ばれた魔道士は、魔力総量の数値もさることながら、身のこなし、魔道具の扱いも一流であり、その刀の一振りは、どんな危機的状況であろうともそれを覆し、仲間の危機を救ったと言われている。灰色の刀身は、第三次世界大戦が終了を告げる、と同時に姿を消し、いつしか真実は、空想上の伝説と判断が付かなくなっていった。

今から百年前、甚大なる被害の為、第三次世界大戦の休戦が告げられ、天使や悪魔など主要種族を中心とした多くの種族は連合国家を作り上げ、世界には人間側と連合国側の二大国家が建設される。

 それ以来、二つの国家は表面上での和解を行い、時だけが過ぎていった。

 人間側は大戦前とは全く違った社会となっていた。民間人が簡単に、強大な力を手に入れた事によるテロ活動や犯罪行為が頻繁に勃発し、それまでの警察だけでは対応出来ていた事件も、手が回らない様になっていった。

 次第に、彼等は同じ様な目的を持つ、幾つかの集団と結合し巨大化していく。彼等の団体を総称して裏ギルドと呼ぶ。

 こうした事から政府は新たな犯罪達を取り締まる為に、特に魔力総量や戦闘技術に特化した者達を集めた騎士隊を発足した。それ以外にも、騎士隊が手の回らない事件を解決する為に、戦闘技術を持った者達が集まり、自発的にギルドを建設した。

 また、将来性を兼ね備える者達を育成する場として魔道学院が設立される様になる。





 ―――第三次世界大戦が休戦を告げてから百年後の世界。

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