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対決!婚約破棄!

作者: ぺいた
掲載日:2026/10/04

「アナスタシア・フォン・ローゼンベルク! 貴様との婚約は破棄する!」


学園の卒業パーティーの華々しい場所で、婚約者であるルーファス・フォン・グランチェスター公爵令息に宣言された。

彼の左側にはピンク頭のリリア・キャンベル男爵令嬢。

よくある設定のよくある状況だ。


「理由は、君がここにいるリリアを虐めたからだ! 次期公爵夫人として似つかわしくない!」


虐めた記憶なんかまったくないので、

「お言葉ですが、いつどのように虐めたのか、具体的に説明していただけますか?」

と聞いてみた。


「君はいつでも! リリアを見かけるたびに睨みつけていただろう! 『ルーファス様に近づくな』と言ったことも一度や二度ではない! さらには、教科書を破いたり、ドレスを汚したり、池に突き落としたり、廊下でつきとばしたりしたそうじゃないか!」


しがみついているピンク頭が、わざとらしく肩を震わせながら

「そうなんです、怖かったですぅ…」

と弱弱しい声で言った。


ドヤ顔するルーファスをしばらく黙って見つめてから、聞いた。

「言いたいことはそれだけですか?」


すると彼は、わかりやすくムッとして、

「なんだ、言い訳でもするつもりか!」

と聞いてきた。


「そうじゃありません、じゃあ次は私の番ですね」

と言うと、背筋を伸ばしてあごをあげ、彼を睨みつけながら宣言した。


「ルーファス・フォン・グランチェスター! 貴様との婚約は破棄する!」


「な!? 呼び捨て!? 貴様呼ばわり!?」


まったく同じように言ったのに、驚いてることにびっくりだ。


「理由は、あなたがここにいるエドガー・クリフトン子爵令息を虐めたからですわ! 公爵令嬢である私の夫に似つかわしくない!」


私の横には、幼馴染であるエドガーが小さくなって震えている(ガタイいいのに)。


「あなたは、ここにいるエドガーとすれ違うたびに肩をどつき、『顔を見るだけで気分が悪くなる! 死ねよ!』と悪態をつき、ペッと唾を吐き、ちょっと学校の用事で話をしただけで『俺のアナスタシアに近づくな!』と怒鳴り散らしてつきとばしました。身分を笠に着てのその横暴さは目に余りました」


「そうなんです、怖かったですぅ…」

エドガーがわざとらしくリリアと同じセリフを言う(ガタイいいのに)。


「そ、それは、昔の話だろうが!」

ルーファスがうろたえて言い返してきた。


「そうですね、まだルーファス様がその女に入れ込む前の話ですわ。でも事実ですわよね」


「そうそう、ただの幼馴染だって言ってるのに、変な嫉妬して、ずっと難癖つけてたわよね」

「俺も見た事ある。エドガーは端っこ歩いてるのに、わざわざ寄って行って必ずつきとばしていくんだよな」

「婚約すると幼馴染ってだけであんなに迫害されるのかってびっくりしたよね」

同級生たちがうんうんと頷く。


ここでエドガーがうつむいていた顔をあげて、大声で言った。

「それだけじゃないんです。ルーファス様は、俺の教科書を破いたり、夜会服を汚したり、池に突き落としたりしたんです!」


「はあ!? 私はそんなことはしていない! なぜそんな嘘を!」


エドガーにつかみかかろうとするルーファスに向かって

「私もしてませんわ!」

と大声を出した。


「教科書も破いてない、ドレスも汚してない、池にも突き落としてないし、つきとばしてもいません。やってもいない罪で責められる気持ちが、少しはわかりましたか!?」


「し、しかし、リリアがやられたと…」

「そうですわ! 私は嘘なんて言ってません!」

ピンク頭はまだ言い張るつもりのようだ。


「誰か、私が彼女の教科書を破いたり、池に突き落とすのを目撃したかたはいらっしゃいますか!」

会場に向かって呼びかける。もちろん、誰も手をあげない。


「私がしたのは注意だけです。そちらのかたが、ルーファス様に近づきすぎるから、貴族の礼儀としてはしたないと。それを何度も、です」


ルーファスが、鬼の首でも取ったかのように言う。

「それだ! 上位貴族に何度も注意されたら、怖いのは当たり前だろう! 怖がらせた自覚はないのか!」


「上位貴族に注意されたら、態度を改めるものではありませんか?」


「……」


「何度言っても変わらないから何度も注意したんです。実際、エドガーはあなたに『近づくな』と言われてから、二度と私に話しかけなくなりましたわ」


「俺が証言してもいいよ! エドガーがローゼンベルク嬢に話したいことがある時は、俺に伝言を頼んでた。二人が直接話をしたところは、一度も見てないよ!」

「私も!」「僕も!」「私も頼まれたことあります」

同級生たちと先生が手をあげて発言してくれた。


「てことは、婚約者の幼馴染というだけで、一切関わってないのに……」

「嫌がらせをしてたの?」

「それでいて、自分は男爵令嬢と仲睦まじく過ごして……」

「冤罪をふっかけて婚約破棄しようとしたってことぉ?」


会場のヒソヒソ声(にしては大きく響いたその声)に、ルーファスの顔が真っ赤になる。

しかし会場中の雰囲気を見て、自分の分が悪いことを自覚したらしい。


「き、気分を害した! この話はまたあとで!」

と言って会場を後にした。


「ルーファス様ぁ、おいてかないで~」

とついていくピンク頭を見て、私は


(勝った)


と思った。


その後、ルーファスが廃嫡になったとかピンク頭が伯爵子息を狙い始めたとかエドガーといい感じになるかと思いきや実はとかそのへんは、みなさまのご想像におまかせします。

10月5日、[日間]コメディー〔文芸〕 - すべて

で1位になってましたー。嬉しいですー! ありがとうございますー!

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― 新着の感想 ―
たしかにこれ、令息の幼馴染いじめてたほうが目撃者多数で心象的に勝ってる…!いや、負けてる?? のか?? どっちだ?? でもぶつけ方としてはうまいと思います。
タイトル見たとき同レベルの仁義無き、どっちのほうがもっと凄い婚約破棄が出来るかでバトッてる的な話かと思ったけど違った。令嬢の方は結まともでしたね。 あと、二組のどっちのほうが凄い婚約破棄出来るか競争か…
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