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--- ## 第7話 「言えなかった言葉の距離」



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## 第7話 「言えなかった言葉の距離」


夕方の教室は、やけに静かだった。


窓の外の空が、オレンジから夜に溶けていく途中。


朔は机に肘をついたまま、ぼんやりしていた。


その隣に、ルナがいる。


最近はもう、それが“当たり前”になっている。


でも――当たり前になった瞬間から、怖くもなる。


「ねえ、朔」


ルナが小さく呼ぶ。


「ん」


「今日、ずっと考えてたことがある」


珍しい。


ルナは“考えを途中で言葉にする”タイプじゃない。


朔は顔を上げる。


「何を?」


ルナは少しだけ間を置いた。


その沈黙が、いつもより長い。


「私、いなくなったらどうなるのかなって」


その一言で、空気が少し重くなる。


「またその話かよ」


「だって、気になる」


ルナは笑う。


でもその笑い方は、いつもより弱い。


---


### 放課後の帰り道


二人で歩く道は、もう慣れたはずなのに、今日は違った。


距離が近い。


でも、なぜか遠い。


「朔ってさ」


ルナが言う。


「うん」


「私がいなくなっても、普通に生きていけるタイプでしょ」


「……は?」


「そういう顔してる」


冗談みたいな言い方なのに、目は笑っていない。


朔は立ち止まる。


「ふざけんな」


「ふざけてない」


即答だった。


その速さが、怖い。


---


### その瞬間


風が吹く。


ルナの髪が揺れて、輪郭が一瞬だけ薄くなる。


朔の中で何かが跳ねる。


「おい……!」


思わず手を伸ばす。


ルナの腕を掴む。


触れた瞬間、ちゃんと“そこにいる”。


でも、ほんの少しだけ冷たい。


「朔」


ルナが小さく言う。


「なに」


「近い」


そう言われて初めて気づく。


顔が、かなり近い。


呼吸が混ざる距離。


---


沈黙。


時間が止まる。


言ってはいけない言葉が、喉の奥で引っかかる。


でも、もう誤魔化せない。


「ルナ」


「うん」


「お前さ」


そこで一度止まる。


喉が詰まる。


でも続ける。


「いなくなったら嫌だ」


ルナの目が、少しだけ揺れた。


「……それって」


「言葉にするとダサいけどな」


朔は苦笑する。


「お前がいないの、普通に無理だと思う」


その瞬間。


ルナの指が、そっと朔の袖を掴んだ。


弱い力。


でも、離さない力。


「それって」


ルナが小さく繰り返す。


「好きってことじゃないの?」


言ったあと、自分で驚いた顔をする。


---


沈黙。


夕日が完全に落ちる直前。


世界が一番オレンジで、一番不安定な時間。


朔は少しだけ目を逸らしてから、言う。


「……たぶんな」


それ以上は言わない。


言えない。


でも、その一言で十分だった。


---


ルナが一歩近づく。


距離が、ほぼゼロになる。


朔のシャツを、軽く掴んだまま。


顔が近い。


呼吸が触れる。


でも――


キスには届かない。


ほんの数センチだけ、届かない。


ルナは小さく笑った。


「それ、ずるい」


「何が」


「ちゃんと最後まで言わないところ」


朔は少しだけ笑う。


「お前もだろ」


---


そのまま、時間が止まる。


どちらも動かない。


ただ、近い。


ただ、それだけ。


でもそれが一番、危険だった。


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## エピソードタイトル


**「届きそうで、届かないまま世界は壊れかける」**


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