## 番外編 「何でもない休日が、少し特別になる日」
## 番外編 「何でもない休日が、少し特別になる日」
風邪が治って数日後。
土曜日。
目覚ましもない朝。
学校もない。
予定もない。
---
つまり――
暇だった。
---
「朔」
ソファの上でルナが言う。
---
「ん」
---
「暇」
---
「知ってる」
---
「すごく暇」
---
「それも知ってる」
---
ルナはクッションを抱きしめながら天井を見る。
---
「どうしよう」
---
朔はゲーム機を触りながら答える。
「寝ればいいだろ」
---
「さっき起きた」
---
「じゃあ漫画読む」
---
「読んだ」
---
「散歩」
---
「昨日行った」
---
沈黙。
---
### 退屈な二人
ルナはごろりと寝転がる。
---
「ねえ」
---
「ん」
---
「恋人って何するの?」
---
朔が吹き出しそうになる。
---
「今さら?」
---
「だって普通の日って何すればいいかわからない」
---
確かに。
遊園地も映画も誕生日もない。
今日は本当に普通の日だ。
---
### 提案
しばらく考えたあと。
朔が言う。
---
「買い物行くか」
---
ルナが起き上がる。
---
「買い物?」
---
「冷蔵庫空だし」
---
「それデート?」
---
「半分くらい」
---
ルナは少し考える。
そして頷く。
---
「行く」
---
### スーパー
結果から言うと。
めちゃくちゃ楽しかった。
---
理由は二人にもわからない。
---
「どっちのアイスがいい?」
---
「こっち」
---
「なんで」
---
「パッケージ」
---
そんな会話ばかり。
---
特別なことは何もない。
---
でも。
---
ルナはずっと笑っていた。
---
### 帰り道
買い物袋を持ちながら歩く。
夕方。
空が少し赤い。
---
「ねえ朔」
---
「ん」
---
「今日、何もしてないね」
---
「買い物しただろ」
---
「そうじゃなくて」
---
ルナは少し笑う。
---
「イベントとか」
---
「ないな」
---
「でも楽しかった」
---
朔も少しだけ笑う。
---
「俺も」
---
### 本音
しばらく歩いて。
ルナが小さく言う。
---
「前はさ」
---
「うん」
---
「特別な日じゃないと幸せになれないと思ってた」
---
朔は黙って聞く。
---
「でも今は違う」
---
ルナは買い物袋を揺らしながら続ける。
---
「何もない日の方が好きかも」
---
「なんで」
---
ルナは少し考える。
---
そして答える。
---
「明日も同じだから」
---
その言葉に。
朔は少しだけ立ち止まりそうになる。
---
### 夜
夕飯は二人で作った。
---
ルナは野菜を切る。
朔は隣で味付け。
---
以前ならできなかった。
---
でも今は自然だ。
---
当たり前みたいに。
---
食卓。
---
「いただきます」
---
声が重なる。
---
ルナはふと笑った。
---
「ねえ」
---
「ん」
---
「明日も暇かな」
---
朔は答える。
---
「たぶん」
---
ルナは嬉しそうに頷く。
---
「じゃあ楽しみ」
---
## 番外編タイトル
**「何もない日を楽しめるようになったら、それはきっと幸せだ」**
---
そしてその夜。
ルナは眠る前に小さくつぶやいた。
---
「明日も、明後日も、その先も」
---
隣では朔がもう眠っている。
---
ルナは少しだけ笑う。
---
「ずっと一緒ならいいな」
---
そう言って、静かに目を閉じた。




