1章4話 はじめのいーっぽ
案内役の兵士が、ぎこちない足取りで歩き出す。
男はその後ろを、軽い足取りでついていった。
村の中は、戦場とは違う匂いがした。
干し草、煮込みの香り、鍛冶場の鉄の熱気。
どれも“生きている世界”の匂いだ。
「……へえ。思ったより賑やかだね」
男がそう言うと、案内役の兵士は振り返らずに答えた。
「賑やかじゃねえよ。 前線が崩れたら、ここも終わりだ」
男は首を傾げた。
「終わるって、どういう意味?」
「どういうって……魔物に襲われるって意味だよ」
男は少し考えた。
「そっか。じゃあ、守らないとね」
兵士は足を止め、振り返った。
「……お前が言うのか、それを」
男は笑った。
「言ってみただけだよ。 僕は別に、誰も守らないから」
兵士は言葉を失い、再び歩き出した。
村の中央にある広場へ着くと、 簡素な井戸と、木造の宿舎が見えた。
「ここが宿舎だ。空き部屋を使え。
……何かするつもりなら、先に言えよ」
男は首を横に振った。
「何もしないよ。 ただ、見てるだけ」
その言葉に、兵士は背筋を震わせた。
男は宿舎の扉を押し開けた。
“外側の存在”が、
エル=アーカの生活圏へ初めて足を踏み入れた瞬間だった。
はじめのいーっぽって懐かしいなー




