表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外れたひとり、世界を歩く  作者: ルーラ
第一章 王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/15

1章14話 医務室にて

ソルが去ったあと、医務室には静けさが戻った。

扉が閉まる音が遠ざかり、薬品の匂いだけが残る。

医者はしばらくその背中を見送っていたが、

やがて机の上に広げた診断板へ視線を落とした。

「……どうにも、腑に落ちん」

診断板には、触れた者の魔力回路の流れが色として浮かぶ。

強ければ濃く、弱ければ薄く。

乱れていれば波が歪む。

この世界の医療では最も基本的な診断道具だ。

だが──

ソルが触れた部分だけ、色が“抜けて”いた。

魔力が弱いわけではない。

むしろ、触れた瞬間に微かな圧を感じた。

だが板は反応しない。

「魔力回路が……板に乗らない?

そんな馬鹿な……」

医者は首を振る。

魔力回路が“測れない”など、聞いたことがない。

次に、ソルの脈を測ったときの感触を思い出す。

脈は正常。

体温も正常。

呼吸も安定している。

ただ──

「……脈拍が、妙だったな」

一定のようで、一定ではない。

規則的なのに、どこか“ずれている”。

病気の脈とも違う。

疲労でもない。

魔力枯渇の症状とも一致しない。

医者は腕を組み、深く息を吐いた。

「……来訪者の特徴、だったりするのか?」

自分で言って、苦笑した。

来訪者といっても、昔の記録に少し残る程度。

本当に別の土地から来たのか、ただの伝承なのかも分からない。

だが、ソルの身体は──

どうにも“この世界の人間”のそれと噛み合っていない。

魔力の流れが薄いのではなく、

“流れ方そのものが違う”ように見える。

「……魔法の後遺症か?

いや、あれは……」

言葉が続かない。

医者の知識では説明できない。

診断板の色の抜けた部分を指でなぞりながら、

ぽつりと呟いた。

「……こんな症例、聞いたことがない」

その瞬間、医務室の窓がかすかに鳴った。

夜風が吹いたのだろう。

だが、医者は妙な胸騒ぎを覚えた。

医者は診断板を閉じ、

深く息を吐いた。

「……あれは、いったい何者なんだ……」

答えはどこにもなかった。

ただ、遠くで魔道具の灯りが一瞬だけ揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ