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外れたひとり、世界を歩く  作者: ルーラ
第一章 王国編

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1章10話 名前なんだっけ??

食堂を出て廊下を歩いていると、

 前方から足早に近づいてくる影があった。


 「お前だな。司令官が呼んでる。すぐに来い」


 短く告げると、兵士は振り返りもせず歩き出す。


 (予想はしてたけどなんか嫌な感じだなー・・

  もっと愛想良く出来ないもんかねー)


 と内心を吐露せずソルはその背中を静かに追った。


 廊下は朝の冷気がまだ残っていて、

 足音だけが静かに響く。


 司令官室の前に立つと、兵士は扉を二度叩いた。


 「連れてきました」


 「入れ」


 低い声が返る。


 ソルは扉を押し開け、静かに中へ入った。


 部屋の中は、外よりもさらに静かだった。


 司令官は机に向かい、書類をめくる手だけが動いている。


 「座れ」


 ソルは指示に従い、椅子に腰を下ろした。


 紙の擦れる音がしばらく続いた。


 やがて司令官は手を止め、ソルを見据えた。


 「……まず確認する。お前の名前は?」


 (あー覚えてねー。なぜか断片的に抜け落ちてるんだよな、この身体の記憶)


 男は一拍置いて答えた。


 「……ソル」


 (……まあ、なんとなく思いついたしこれでいいか。深く考えても仕方ないし)


 「所属は?」


 ソルは少しだけ視線を落とした。


 (うわ、来た。所属とか言われても……

  本当に覚えてないんだよな。どう言えば角が立たないんだろ)


 「……覚えていません」


 司令官の眉がわずかに動く。


 「覚えていない?」


 「はい」


 (嘘じゃないし。たぶん。

  でも、こういうのって説明しづらいんだよな)


 司令官は短く息を吐き、机上の報告書を一枚持ち上げた。


 「ロウザ村での件だ」


 ソルは静かに聞いている。


 「村の見張り、治療師、兵士──

  複数の報告に“お前の言動が異常だった”とある」


 紙がめくられる。


 「死体を抱えて平然としていたこと。

  動揺も焦りもなく、

  まるで荷物でも運ぶように扱っていた、と」


 (ああ……そう見えるのか。

  別に変なつもりはなかったんだけどな)


 「次に、所属を問われても答えられなかったこと。

  “ただ歩いていただけ”と答えたらしいな」


 司令官の声には感情がない。


 「さらに──

  “外側から落ちてきた”と発言した、という報告もある」


 ソルの指先がわずかに止まった。


 「総じて、“普通ではなかった”という評価だ」


 短い沈黙。


 「何か説明できることはあるか」


 司令官は書類を軽く叩いた。


 ソルは少しだけ考え、静かに口を開いた。


 「所属に関しては……先ほどの通り覚えておりません。

  それと……魔物に吹き飛ばされてから、ところどころ記憶が曖昧で。

  自分がどう見えていたのか、どう答えていたのかも……よく分かりません」


 (まあ、これは本当だし。

  説明しろって言われても困るよな)


 司令官はその言葉を嘘とも本当とも判断しないまま、

 ただじっと見つめた。


 「そうか」


 別の書類が持ち上げられる。


 「……それと、戦場の調査結果だ」


 ソルは静かに聞いている。


 「お前がいたと思われる地点だけ、魔物の死骸が形を保っていなかった。

  焼けたわけでも、斬られたわけでもない。

  ただ崩れていた。灰のように、砂のように」

 ソルの呼吸が、ほんのわずかに浅くなる。


 (ああ……あれか。

  あれは……説明しづらいな)


 「村での不可解な言動。

  戦場での異常。

  ……偶然とは思えん」


 司令官は椅子に深くもたれた。


「しばらく後方勤務に回す。

  身体の状態も確認したい。医務官の診断を受けろ」


 ソルは静かに頷いた。


 (診断ね……まあ、別にいいか)


 司令官は最後に、少しだけ声を柔らかくした。


 「……無理をするな。

  お前はまだ生きているんだ」


 ソルは立ち上がり、軽く頭を下げた。


 「失礼します」


 (“生きている”か……

  そう言われると、なんだか不思議な感じだな)


 扉を閉めると、廊下の空気がひどく澄んで感じられた。


やっと名前だせたぜ みんな名前聞いてくれないから困ったわ

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