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第69話-1:今年のプレゼント係

「さて、行きましょうか」


 操師(あやつりし)ティロを始末したゼノの幹部エトルは、俯くニニィに柔らかな声色で呼びかけた。ニニィは黙って頷き、エトルの元へと歩く。


「ちょっと待って! ニニィ!」


 ニニィが足を止めた。どうしよう、早く何か呼びかけないと。だが、シマノの喉は焦るばかりで、次の言葉を絞り出せない。


 ニニィはこちらを向かないまま、ぽつりと言葉を落とした。


「お姫様に伝えて。王様も、側近たちも、みんな()()()だったって。誰も帰ってこないって」


 それは聞き捨てならない話だった。情報の深刻さはもとより、シマノに伝言を依頼するということそのものが、ニニィがもう戻らないと告げているに等しい。


「何だよ、それ……自分で言えばいいだろ? 俺たちと一緒に王都に戻って、一緒に言えばいいだろ? そうだろ!?」


 ニニィ! とシマノは珍しく声を荒げた。しかし、それでもニニィは動かなかった。途方もない無力感がシマノに圧し掛かる。


「どうしても……だめなのか……?」

「ゴメンね、シマノ。みんなも」


 消え入りそうな声で告げると、ニニィはエトルとともに黒い魔法陣の中へ消えていった。


「ニニィ……」


 やっと再会できたのに。何もできないまま、結局また離れ離れになってしまった。もう、戻ってきてはくれないのだろうか。


 ピクシー狩りの首謀者――それがティロであったという事実。そのティロに復讐を遂げたニニィには、これ以上ゼノに関わる理由などないはずだ。


 それなのに、戻ってこなかった。


「シマノ」


 シマノの様子を案じ、ユイが声を掛ける。落ち込んでいても仕方ない、ただこのゲームが()()()()()()()()()()()()、それだけだ。わかっている。それでも、わかっていても、実際に状況に直面してしまえばやはりショックは受ける。


 いつもは元気すぎてうるさいキャンも、今は尾も耳もしょんぼりと下げて大人しくしていた。ムルも何か考え込んでいるようだ。


 最初期からの仲間であるニニィにこうも正面切って拒絶されるのは、さすがのシマノもだいぶ堪えた。


 だが、シマノの胸には僅かばかりではあるものの確かに希望が残っていた。そう、ニニィは最初期からの大切な仲間だ。育成期間も長い。そんなキャラクターがこんな終盤ともいえる状況で永久に離脱するなど、()()()()()()()()()()()()()のだ。


 ニニィは必ず戻ってくる。しかも長期にわたって離脱した穴を埋めるべく、何かすごい強化とかされてくる。もしこのゲームを作ったシマノが、クソゲーを作ろうとでもしていない限りは。


「行こう、みんな。ニニィとは必ずまた会える」


 当然仲間たちにはそんなメタ読みは通用しない。だが、ただ無根拠に前向きなだけに聞こえてもおかしくないシマノの言葉にも、みんなは素直に頷いてくれた。


 シマノたちはニニィの残した言葉通り、状況を報告すべく王都アルボスへと向かう。


 ***


 指輪の力で王都アルボスに戻った頃にはすっかり夜も更け、酒場もほとんど閉店するような時間になってしまっていた。


 砂漠越えの疲労と、廃都ペリーレでの出来事による心労を癒すため、シマノたち一行は一度宿に向かい、翌朝城で待つ姫様の元へ向かった。


「そう……お父様も、側近たちも、皆……」


 シマノたちの報告を聞いた姫様は、思いのほか取り乱していないように見えた。

 いや、姫様のことだ。きっと虚勢を張って弱みを見せないようにしているのだろう、とシマノは考える。何せ弟と父親と家臣たちを一度に喪ったのだ。その痛みは想像するに余りある。


 姫様の背後に控えるウティリスも、シマノと同じことを考えているようだ。今すぐ姫様に駆け寄って差し上げたくて仕方ないのを、必死に歯を食いしばって耐えている様子が見て取れる。

 この従者がいる限り姫様は大丈夫だろう。


「シマノ、あなた方はこれからどうなさるの?」


 姫様からの質問に、シマノは素直に答えた。


「これからみんなで話し合うつもりです」

「でしたら、わたくしから依頼を出しますわ」


 何ということだろう。王家からまさかの勅命である。心持ち背筋を伸ばしつつ、シマノは姫様の言葉の続きを待つ。


「わたくしはアルカナ王家唯一の正統なる後継者として、シマノ、あなたに『ゼノの殲滅』を正式に依頼します」


 姫様からの依頼に、シマノは思わず息を呑み言葉を詰まらせた。

 ゼノの殲滅。それは確実に、強敵エトルを打ち倒すことを意味している。それだけで既にとてつもない困難が待ち受けているわけだが、さらにシマノに追い討ちをかけたことがある――今のゼノには、ニニィがいるのだ。

 ここで姫様の依頼を受けてしまえば、ニニィを敵として倒さなくてはならなくなる。


「嫌だ絶対ニニィと戦いたくねぇーーーー!(お請けしたいのですが少し考えさせてください!)」


 例によって例の如くウティリスがこの上ない殺気を込めて睨みつけてくるが、姫様は慣れた様子で駄々洩れた心の声をスルーしてくれた。


「シマノ、あなたの気持ちもわかりますわ。けれどゼノの殲滅はわたくしたち王家の悲願。愚弟の罪を償い、父の無念を晴らし、この世界を、魔王の脅威なき平和の世へと導くために、どうしても為さねばならない(わざ)なのです」


 姫様はそう言うと一歩前に出て、なんとシマノたちに向かって深々と頭を下げた。


「どうか、お願いしますわ。シマノ、ユイ、ムル、キャン」


 仮にも王家唯一の生き残りである姫様に頭を下げさせるなんて、本来あってはならないことだ。現に従者ウティリスが今にもシマノたちに飛び掛かりその頭を床に叩き付けんと全身の筋肉を震わせている。


 まずいことになる前にさっさと退散した方が良さそうだ。


「やります! はい喜んで!」


 物凄く雑に姫様のご依頼を引き受け、餞別としてなんと金色の指輪を2つ受け取り、シマノたち一行はそそくさと城の外へ出て行った。

今回の好きなゲーム【しゃべる!DSお料理ナビ】

初めての一人暮らしの時にとてもお世話になりました とても感謝

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