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第68話-2:廃都の王は泡沫に踊る

※血が出ます。苦手な方はご注意ください!

 黒のゆったりとしたローブに、目深に被られたフード。ゼノの幹部エトルは、シマノたちとティロの間へ割って入るかのように、突如として姿を現した。


 それを見たティロは、僅かに眉根を寄せ、口を開く。


「城に置いてた人形を壊したのはキミかい? 困るんだよね、勝手な事されるとさぁ」


「いいえ、僕ではありません。ついでに忠告しておきますが、貴方はとっくに僕と血縁関係ではなくなっているはずですよ。()()貴方を産んだのは、妹ではありません」


「別にいいだろ? 何度王家に生まれようと、ボクにとってかあさまはキミの妹だけだ」


 何度王家に生まれようと――ティロは確かにそう言った。


「転生……?」


 そうか、だとすると全て辻褄が合う。ティロは、エトルの甥として生まれ、その後何度も繰り返しこの世界に生を受け、とうとう姫様の弟として生まれたのだ。しかし、いったい何のために?


「ボクは()()されるのが嫌いなんだ。キミならわかるだろ? せっかくかあさまが永遠に甦る呪いをかけてくれたんだ。これはボクに、この世界の支配者で在り続けてほしいって、そう思っていたとしか考えられないよね?」


 何を言っているんだ、とシマノは思わず頭を抱えた。こっそりユイに救いを求める視線を送ると、ユイは表情を変えることなく淡々とシマノを諭した。


「論理の飛躍が著しい。シマノ、真面目に相手にしては駄目」


 さすがはユイ。一刀両断である。


「だから仕方なかったんだよ。キミたち同胞を地の底に沈めたのも、お人形を全部ボクのものにしたのも、当時の(ボク)が支配者であり続けるためには、そうするしかないもんね? それこそが、かあさまの望みなのだから」


 何だかティロがさっきからとんでもないことばかり口走っているような気がして、シマノの胃はキリキリと痛みだしていた。何より、このティロの言葉が真実なら、間違いなくムルが黙っていない。


「……沈め、石の底へ」


 案の定、ムルの上級術が飛んできた。だが、ティロは全く避けようとしない。


「人形風情が」


 ティロの操りの力が、エトルを躱し真っ直ぐムルへと襲い掛かる。


「させねーーーーっ!!」


 キャンの光る聖剣が、赤い魔力を真っ二つに裂いた。


「ムル! 操りのことは気にすんな! やっちまえ!」

「恩に着るぞ、キャン」


 しまった、いつの間にか戦闘を開始する流れになっている。もうこうなってしまっては腹を括るしかない。シマノはウインドウを開き、エトルが助力してくれることを心の底から祈った。


 そのエトルが、静かに声を発した。


「今、彼と話しているのは僕です」


 身の毛がよだつ、としか喩えようのない感覚がシマノを襲った。全身の筋肉が硬直し、言うことを聞かない。

 見れば、シマノ、ユイ、キャン、ムルの足元から無数の黒い腕が生え、身体の自由を完全に奪っていた。これが、ゼノ幹部の真の力なのか……。


「さて。今回の転生では、王権を得ることができなかったようですが」


 エトルに痛いところを突かれたのか、ティロの表情がみるみる歪んでいく。


「盲点だったよ。このボクに、ねえさまがいるなんてね……。初めはすぐに殺してやるつもりだった。けど、せっかくこのボクの邪魔をしてくれたんだ。たっぷり遊んで、絶望の底に叩き落してから手にかけてあげないと可哀想だろ?」


 怒りと欲望に歪んだその顔を、ティロは徐に上げたかと思えば、エトルに向かって外見年齢相応のあどけない笑みを見せた。


「だってボクはエトルの妹(かあさま)の子で、ねえさまの異母弟(おとうと)なのだから」


「そして、ピクシー狩りの首謀者、ね」


 ティロの背後の人影が、静かに呟く。鮮やかな桃色の髪が揺れ、止まる。その小さな柔らかい手はダガーの柄をきつく握り締め、切先はティロの背に深く突き刺さっている。


「……気づかなかったなぁ……なかなかやるね、キミ……」


 白いローブに紅色の染みが広がっていく。込み上げる血液に、少年の細い喉は耐えきれず噎せ返る。何らかの臓器を損傷してしまったらしい。


 ティロは前方に二、三歩よろめくと、倒れるでもなく中途半端な姿勢のままぴたりと動きを止めた。


「動かないで。もう動けないだろうけど」


 ティロの背後に立っていた人物は、円らな瞳を伏し目がちにしながら冷ややかにそう告げた。


「ニニィ……?」


 目の前の光景を受け止めきれないまま、シマノの口からその名が漏れる。だがニニィがそれに反応することはなかった。


「毒、塗ってるの。魔法の毒よ」

「……なぜ、ボクだとわかった?」

「お城のお人形たちに聞いたのよ。特に王様が、とっても親切に教えてくれたわ」


 ニニィはそこで一度言葉を切った。だがその双眸がシマノたちを捉えることはない。


「邪魔だったんでしょ、あたしの力が。あなたは誰がこの力を持っているのかわからなかった。だから全員狩ったのよね」


 ニニィの言葉の断片から、シマノは必死に状況を組み立てる。先ほど彼女はティロのことをピクシー狩りの首謀者だと言った。


 仔細は不明だが、ニニィの持つ何らかの力がティロにとって脅威となり、一族丸ごと狩られてしまったということらしい。あまりにも雑で非道なやり口だ。


 では、お城のお人形とはどういう意味だろう? まさか、城にいた人物が全てティロの操り対象だったとでもいうのだろうか。


 ティロは黙ったままニニィの言葉を聞いていた。彼の口の端からは負傷に伴う血液がごぶ、ごぼ、と溢れ出していた。


「けどおあいにく様。あなたがあたしたちを狩らなければ、あたしは力に目覚めることなんて無かったのよ」


 そう聞いた途端、これまで黙っていたティロの顔色は急激に青褪め、唇がわなわなと震え出した。


「お前、まさか、まさかもう……」

「あなたの魂の記憶なら、もう()()()わ」


 それは、ティロにとって決定的な一言だった。


「はっ……ははあははははは……ははは……!」


 目を大きく見開いたティロは、傷に響くことなどお構いなしに全身を震わせ笑い声をあげた。


「嘘だ……嘘だ、ボクはまた甦るんだ、何度でも、何度でも、だってボクは選ばれたんだ、ボクの力は特別なんだ、だからボクは甦る! 今度こそまた王家の正統なる後継者としてボクが、このボクこそが支配者に相応しい! 誰にも邪魔はさせない何度でも何度でも甦って支配し続けてやる……ボクはかあさまとは違うんだ……ボクは、ボクだけは、誰にも支配されてたまるものか……!!」


 何度も血を吐きながら、ティロは喉を削り呻くように吐露していた。その恨みの矛先が、ニニィからエトルへと移る。


「エトル!! お前が、こいつを導いたのか? 何故だ!? ボクはお前の妹の、トワの力を継ぐたった一人の継……」


 瞬間、ティロの開いた口を闇の魔力で作られた鋭い槍が貫いた。続いてその額を、胸を、脇腹を、一本また一本と生成された槍が貫いていった。


「その名を口にできる者は、もうこの地上には残っていませんよ。一人も、ね」


 エトルの意思に呼応するかのように、闇の槍に貫かれたティロの肢体は朽ち、砂と化して霧散していった。

今回の好きなゲーム【スーパーマリオ ヨッシーアイランド】

楽しい横スクロールアクション 音楽がとても良かった

カメックさんがちょくちょく出てくるのもありがたい

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