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第64話-1:もう一度ニニィと

 誰もいなくなってしまった王城で、シマノは混乱する姫様を宥めながら、自身もこの状況を受け止めきれずにいた。


「何がどうなってるんだ……?」


 シマノはレンズをかけ、たった今姫様が出てきた謁見の間に足を踏み入れる。玉座に王様の姿はなく、周囲に隠れていた側近たちの気配もまるでなかった。HP、MPバーや顔マークもどこにも見当たらない。


 謁見の間を出てもそれは変わらなかった。どこを見渡そうと、城内にシマノたち以外の人物は存在していない。


「シマノ、一度城を出て情報収集することを推奨」


 ユイの助言に、シマノは素直に頷く。


「そうだな。ずっとここにいても仕方ない」

「わたくしは……城に残りますわ。皆様、お父様の手掛かり、どうかよろしくお願いいたします」


 俯く姫様とウティリスを残し、とりあえず一行は城の外に出た。


「で? こっからどーすんだ、シマノ?」

「うーん、情報収集……といってもなぁ……」


 正直なところ、王様の行き先を知っていそうな人物なんてシマノには一切思いつかないのだった。


「城から出てくる王様を目撃しました~みたいな人、いないかなぁ?」


 そんな甘い考えを抱きながら、城下町の住人たちに手当たり次第声をかけてみたものの、やはり収穫はゼロである。


 完全に手掛かりを失いあてもなく城下町を歩いていると、どこからか聞いたことのあるような声が耳に届いた。やや舌足らずで、鼻にかかったような高い声。


「おにーさん♡ 久しぶり♡」


 そう言いながらシマノたちに向かって手招きしていたのは、初めて王都を訪れた時に声をかけてきたカラコン・ウィッグ売りのピクシー族だった。

 彼女は左右で色の異なる瞳でまじまじとシマノたち一行を眺めると、満足げに深く頷いた。


「レベルも上がって、新しい仲間も増えたみたいね。いい素材もいっぱい手に入ったんじゃない?」


 売り子のお姉さん(仮)の言葉に合わせ、初めてこの売り場を訪れた時と同じように自動でウインドウが開く。

 確かにしばらく見ない間に素材リストが充実してきたようだ。王家の証「ロイヤルゴールド」や黒髪黒目の「アビスブラック」といったレア色も今なら作れるかもしれない。


 しかし、残念ながら今はそれどころではない。もぬけの殻となってしまった王城についての手がかりを探さなくては。


「お姉さんごめん、俺たち聞きたいことがあって。今日、お城から王様や兵士が出てくるとこって見た?」


 シマノの突拍子もない質問に、売り子のお姉さん(仮)は目をぱちくりさせると、少し考えるようなそぶりを見せた。


「うーん……王様とかは見てないわね……けど、」

「けど?」

「おにーさんのお仲間のおねーさんが出てくるのは見たわよ♡ ニニィちゃん、だったかしら?」


 まさかの展開だ。予想外の人物の関与にシマノたち一行は思わず顔を見合わせた。


「ありがとう、お姉さん! また今度買いに来るから!」


 笑顔で手を振る売り子に軽く頭を下げ、シマノたちは今得た情報を報告すべく王城へと踵を返した。


 ***


「つまり、お父様の失踪にはゼノが関わっている可能性が高い、ということですわね」


 あくまでも気丈に振舞う姫様だったが、先ほどかけたレンズの効果でシマノには不安げな顔マークがはっきりと見えている。

 ゼノが関わっているということは、姫様の異母弟であるティロも関わっているとみて間違いないだろう。不安に思うのも無理はない。従者ウティリスも心配そうに姫様の様子を気にかけている。


 シマノとしても、ニニィが関わっている以上この件を放っておくわけにはいかない。ゼノのアジトへ向かい、真相を確かめるべきだろう。


「ユイ、俺をゼノのアジトへ連れて行ってほしい」

「シマノ……」


 シマノの提案に、ユイはあまり前向きではないようだ。……まあ、敵地のど真ん中にいきなり案内しろと言われたら誰だって気は進まないだろうけれど。


「頼むよ。ニニィともう一度話がしたいんだ」


 こんなことでユイが折れてくれるとは思わないが、シマノはダメもとで今思っていることをぶつけてみた。


「あの日、キャンプの夜に、俺もニニィと話したんだ。ニニィの過去についても聞いた。……それなのに、俺はニニィの苦しみに気づけなかった」


 ユイは黙ってシマノの言葉の続きを待ってくれている。


「ニニィが一人でゼノのアジトに行って、このままどんどん俺たちの手の届かないところに行ってしまうかもしれない。もし、本当にそうだとしたら……それはきっと、俺のせいだ。ニニィの苦しみをわかってやれなかった俺のせい」


 そんなこと、と言いかけるユイを制し、シマノはユイの目を真っ直ぐ見て、告げた。


「だから、もう一度ニニィと話がしたい。取り返しがつかなくなる前に」

「……わかった」


 意外にもユイは納得してくれたようだ。ホッと胸を撫で下ろし、シマノは装備していた指輪にそっと触れた。


「無駄ですよ」


 突如背後から響いた闖入者の声に、シマノたちは一斉に振り返る。


「エトル……!」


 いったいいつからそこにいたというのか。黒いフードを目深に被ったゼノ幹部の男エトルは、シマノたちの背後に一人で立っていた。

今回の好きなゲーム【Five Nights at Freddy's】

普通に怖い マジで怖い チカちゃんはかわいい

最終的に緻密な作業が求められるので怖さを感じる余裕がほぼなくなる

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