第63話-1:KOUKANDO
ウインドウのスキル一覧に記された「KOUKANDO」の文字。シマノの指がその文字に触れると、新たにもう一つウインドウが開いた。
開いたウインドウの一番左上にはシマノの名前が表示されている。その下には仲間たちの名前が一覧で並んでいた。
それぞれの名前の横には数値が記されていた。人によって数値に差はあるものの、どれも0.0~5.0の間に収まっているようだ。
「つまりこれがみんなの俺に対する好感度ってことか」
こんなものを覗いてしまっていいんだろうか、と幾ばくかの罪悪感を覚えたシマノは、ふとある一点に目を留める。
好感度の値の両脇に、小さな記号のようなものが付いているのだ。左側に-、右側に+。
「これって、まさか……」
シマノは躊躇いがちに、ユイの好感度「3.8」の脇に付いた+をタップしてみた。ピロン、と軽快な効果音とともに、なんとユイの好感度が3.8から4.8に変化してしまった。
「うへっ!? ちょっ、待っ、そんなつもりじゃ……!」
正直+マークに期待していなかったといえば嘘にはなるが、増えるとしてもせめて0.1刻みだろう。そう高を括っていたシマノは、まさかの1.0上昇に激しく動揺した。
どうしようと慌てふためくシマノの様子に、和気藹々と過ごしていた仲間たちもさすがに違和感を覚えたようだ。
「おーい何やってんだシマノー」
キャンがこちらに近づいてくる。と思いきや、それよりも早くシマノに近づいた人物がいた。
「シマノ、何かあった? 大丈夫?」
ユイだ。一瞬のうちにシマノの正面へと回り込み、両手でシマノの両頬を包み込むと、切なげに眉根を寄せてシマノの顔を覗き込むように見つめてきた。その瞳は潤み、頬はほんのり紅潮している。
「あっ、いや、えっと、その、」
嬉しいやら恥ずかしいやら申し訳ないやらでシマノの頭は爆発しそうだ。とにかく、上げてしまった好感度を急いで元に戻そう。シマノはウインドウをタップしようとした。
が、そこにはユイがいる。半透明のウインドウを、ちょうど正面に立ったユイの身体が貫通してしまっているのだ。
つまり、今のシマノを傍から見ると、人差し指をピンと立ててユイの身体にそっと触れようとしたように見える、ということだ。
「シマノ……っ、こんな所では駄目、恥ずかしい……」
「違う違う違います誤解なんです」
恥じらいを見せるユイに対し全力で首を横に振る。
そんなシマノとユイを見て、さすがのキャンもただならぬ雰囲気を察知したのだろうか。こちらに向かってきていたはずの足をまるで逆再生するかのように高速で後ずさっていく。完全にあらぬ誤解を与えてしまったようだ。
シマノはダッシュでその場を離れ、ユイの好感度の-マークをタップした。4.8に上がっていた好感度は3.8に戻り、ユイはハッと我に返ったようで、シマノの方を見て不思議そうに首をひねっていた。
ほっと一息ついたシマノは改めて好感度のウインドウを確認しつつ、この+、-のマークは触らないようにしようと心に誓った。
ウインドウの名前一覧をよく見ると、ウティリスや姫様などパーティ外の人物も一部掲載されているようだ。
さらに、ウインドウの右端に矢印のようなマークが出ている。タップすると、ページが切り替わって左上の名前がユイに変わった。どうやら他の仲間たち同士の好感度も確認できるようだ。
見てはいけないものを見てしまっているような罪悪感に苛まれながらも、シマノはあることを思い出し、次々とページを移動し始めた。
表示したのはキャンの好感度ページだ。シマノはそこに並んだ名前の一覧をチェックする。
「あった!」
探していた名前を発見し、シマノは思わずウインドウ上で指差した。そこには「ムル」の名前と、その隣には「2.8」と表示されている。
「おっ、2.8か」
シマノは別のウインドウから「ツリー」のスキルを発動し、キャンのスキルツリーを表示する。
そのツリーの一部、分岐している根元に小さく書かれた文字。ツリーのスキルを獲得した後、廃屋で寝転がりながら発見したあの文字だ。
「好感度3以上で解禁」
シマノはその文字をさらにタップする。すると、小さく吹き出しのようなものが現れた。吹き出しにはムルの顔とキャンの顔、そして間にムルからキャンへの矢印が描かれている。
「3ならあとちょっとだな」
キャンのツリーは途中で二手に分かれている。ちょうど上級職になる辺りだ。
片方は何の条件もない、所謂通常ルートと呼ばれるものだ。もう片方は特定の条件を満たさないと進むことのできない、所謂隠しルートというものだ。
その条件が「ムルからキャンへの好感度3以上」というわけだった。2.8から3なら然程苦労はしないだろう。ちょっとした普段の行動だけでも上げきれそうだ。
ユイからシマノへの3.8を見た後だと、2.8はかなり低いように思える。だが、ムルからユイやニニィへの好感度を確認してみると、キャンに対する2.8は決して低くないどころか最も高い値だった。
単純に、ムルの好感度は上がりにくい仕様なのかもしれない。ちなみに、シマノへの好感度は2.4である。
「まあ、地上の人間にそんなにいい印象は持たないよな」
普段は特に意識しないものの、こういったところで根深い溝のようなものを感じ、シマノはなんだか気分が重くなった。
まあ、そんなことを気にしていても仕方ない。ルート分岐がそこにあるのなら、条件達成を何としても目指すべきだろう。
「ってかそもそもなんでキャンとムルなんだよ。俺とユイにはそういうのないのか?」
無論、何度確認しようと凡人のスキルツリーに分岐や条件など一切存在しないのである。それならばとユイのツリーを表示しようと考えたシマノのもとに、当のユイ本人が現れた。
「シマノ、そろそろ次の目的地へ行くことを推奨」
「うわわっ!?」
ユイの身体がまたしても半透明のウインドウを貫通したせいで、またしてもうっかり触れてしまいそうになる。慌てまくるシマノにユイは訝しそうにしていたが、それ以上特に気にしている様子もなさそうだ。
今回の好きなゲーム【スーパーマリオアドバンス】
初めて遊んだUSA キャラごとに性能の違いがあって面白かった
鍵取ったとき追いかけてくる仮面は怖すぎた




