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第7話:地底民に会いに行こう

 宿屋の窓からファブリカの午後の街並みを眺めつつ、シマノはニニィの話を思い返していた。

 この世界、アルカナにおいて最下層の身分とされる地底民。その地底民から搾取した鉱石を使ってこの街は発展を遂げてきたのだろう。まだ昼間だというのに止まったまま動かない工場たち。これらも皆不当な搾取によって動き続けたのかもしれないと思うと、とてもではないが無邪気に景色を楽しむ気持ちにはなれなかった。


 もちろん、本当は正当な対価が支払われていたのかもしれない。真相は自ら確かめる他ないだろう。


「地底民に会いに行こう」


 ユイを部屋に寝かせ、身軽になったシマノはニニィと落ち合うや否や開口一番にこう言った。なかなかぶっ飛んだ提案にニニィも思わず二度見三度見する。


「ほ、本気で言ってるの……?」

「もちろん。どこに行けば会えるか、ニニィ知らない?」


 あんまりユイを一人にしたくないから近場だと助かるなぁ、などと(のたま)うシマノに驚き半分呆れ半分、ニニィは地底民について先ほどの住民から盗んだ情報をシマノに共有した。


「橋渡し役?」

「そう。地底民の中で一人だけ地上に出ることを許されている役。時々この街にも来るみたいなの」


 その人に会えれば話が早そうだ。シマノとニニィは早速その橋渡し役が訪れるという場所、ファブリカ職人ギルド本部に向かった。


 本部は閑散としていた。ピクシー族らしき受付嬢が暇そうに頬杖をつきながら本を読んでいる。


「……あらお客さん? 工業都市ファブリカにようこそ。今は何もないけどゆっくりしていってね~」


 初見の観光客に一応形だけの挨拶をし、受付嬢は再び本に視線を戻した。


「あの、俺たち地底民に会いたくて。橋渡し役の人って来てないですか?」

「この状況で来れるなら大したものね。もし来たらあたしがファブリカを代表してぶん殴ってやるわ」


 ずいぶんと血の気の多い受付嬢である。とはいえ、橋渡し役が来ないのであればそれはそれで別の手段を考えなくてはならない。

 とりあえず当たって砕けろの勢いで地底とやらに飛び込んでみるしかないか。行ってみれば何か思い出せることだってあるかもしれない。


 シマノは腹を括り、受付嬢のお姉さん(仮)に礼を言って本部を後にしようと踵を返した。


「あらぁ、来たみたいよぉ~」


 ニニィの間の抜けた声が響く。入り口の方を見ると、ニニィとあまり変わらない背丈の人物が一人立っていた。ボロボロの大きなフード付きポンチョを頭からすっぽり被り、裾から覗く枝のように細い素足には靴も履いていない。


「来やがったわね……」


 受付嬢がポキポキと指を鳴らす。その様子から察するに、あの人物が橋渡し役で間違いなさそうだ。


「子ども……?」


 ニニィの例があったため今一つ確信が持てないものの、人間でいうと十二、三歳ぐらいの子どもに見える。

 橋渡し役はぺたぺたと歩いて受付嬢の前まで来ると、真っ直ぐ彼女の目を見て口を開いた。


「王都と話はついたか?」


 殴られることなど全く想定していないかのような堂々たる態度。それを見た受付嬢の額に青筋が立つ。さらにそれを横で眺めるシマノは何だか胃が痛くなってきてしまった。


「……アンタね、ナメたこと言ってるとマジでぶん殴るわよ」

「こちらの意思は伝えた。後は王都とお前たちの問題だ」

「いい? 王都の命令は絶対。アンタたちに選択の余地は無いわけ。わかったら今すぐ不足分の鉱石持ってきなさい」

「我らが聞くべきは石の声。王都の声ではない。下らない地上の覇権争いに我らを巻き込むな」


 まさに一触即発。見た目だけなら完全に小中学生同士の口喧嘩であるが、二人の醸す険悪すぎる雰囲気に早くもシマノの胃が限界を迎えてしまった。


「ストップストップ……! 二人とも、一旦落ち着こう、ね?」


 二人の厳しい視線がシマノに集まる。生徒の喧嘩を仲裁する担任の先生ってこんな気持ちなのかな……とシマノは一人思う。


「どうして鉱石を送るのをやめちゃったの?」


 ついつい小さな子どもに諭すような口調になってしまったが、シマノは橋渡し役に声をかけた。


「王都の要求は石の意思に反する。これ以上耳を貸す余地などない」


 不意打ちのダジャレで笑いそうになるのをグッと堪え、シマノは何とか原因を探ろうと試みる。


「えーっと、今までは鉱石を地上に送ってくれてたんだよね? なのにどうして?」

「石の意思だ」


 まさかのダジャレ追撃である。シマノは俯き肩を震わせじっと耐えた。今度は受付嬢が口を開く。


「魔王討伐のためには大量の武器が必要なの。だから王都はアンタたちにもっと鉱石を送れって言ってんのよ。地上だけじゃない。アンタたち地底民も、この世界に住む全員の命運がかかってんの、わかる?」

「石の声も聞けぬ地上の者がこの世界の何を知る? 耳を傾けるに値しない」

「はい! ストップ! そういうこと言わない! もう!」


 シマノの雑な仲裁に、見かねたニニィが口を挟む。


「ねぇねぇ、この世界が滅んだら、アナタたち地底民も困っちゃうんじゃない? 何とか協力してもらえないかしら?」


 橋渡し役は少し下を向き何か考えた後、ぼそりと呟いた。


「……石が怒っている」

「どういうことなの?」

「王都の無茶な要求が来てから石は何も語らなくなった。石の周りには魔物が蔓延り、我らの接近を拒んでいる」


 シマノとニニィは顔を見合わせた。いかにも冒険者向きの、シマノ的にはメインクエストっぽいといえる案件だ。


「それ、俺たちに詳しく聞かせてくれないかな!?」


 期待を隠せないシマノの様子に、橋渡し役は怪訝そうな表情を見せる。


「地上の者に頼るつもりはない」

「……俺たちの仲間、身体が機械でできてて、直すためにどうしても鉱石が必要なんだ。絶対直したいんだ。頼むよ、手伝わせて! お願いします!」

「あたしからも、お願いします!」


 シマノもニニィも頭を下げ必死で頼み込む。橋渡し役は黙ったまま踵を返した。


「我らは助力を望まない。手伝いたいなら勝手についてこい」

「それってつまり……」

「OKってことよね?」


 無言でギルド本部を去ろうとする橋渡し役に、シマノとニニィは急いでついていった。


「えーっと、よくわかんないけど、あの二人が何とかしてくれる感じよね? いってらっしゃーい、頑張ってきてねー!」


 受付嬢は小さな手をめいっぱい大きく振り、二人の背を見送った。


 人通りのない裏道を通り抜け、橋渡し役とシマノたちはファブリカの外れ「地下洞窟」の入り口に出た。


「この先は魔物が出る。自分の身は自分で守れ」


 橋渡し役はそう言うと一人で先に洞窟の中へ入っていった。


「予想はしてたけど……あたし暗いの苦手なのよねぇ……」


 ニニィが溜め息を吐きながら橋渡し役に続く。一方シマノは魔物が出れば新スキル「レンズ」を試せるのでは、と少しばかりワクワクしながら洞窟に足を踏み入れた。

今回の好きなゲーム【スプラトゥーン2】

2から始めた民なのでサーモンランにドハマりし、無事鮭畜になりました。

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