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第60話-1:凡人なんか操ったりしないよね?

「加護をいただくなど……またしても姫様にお手間を取らせてしまった……!」


 ムルたち地底民と姫様の力で作られた、二つの小さな岩のドーム。そのうちの一つからぶつぶつと呟く声が漏れ聞こえている。


「ふ……不覚ゥウウウウッ!!」


 岩のドームが内側から粉砕され、中から光の加護を纏った従者ウティリスが飛び出してきた。


「うげっ、オッサン『不覚スイッチ』入ってるじゃん」


 いつ名付けたのだろうか。キャンの命名にシマノはこっそり感心した。


 そんな呼ばれ方をしているとは露ほども思わず、不覚スイッチの入ったウティリスは筋肉の赴くままに暴れだした。


「ヌゥウウウンッ!」


 まずその拳が、キャンの入った岩のドームを破壊する。突然の出来事にキャンは震えあがった。


「ちょっ、び、びっくりするだろー!?」


 キャンの文句など一切無視し、続いてウティリスはティロに狙いを定める。

 勢いよく地面を蹴ると、間合いを一瞬のうちに詰め、その推進力を活かしながら強烈な回し蹴りを繰り出した。


 ティロの余裕綽々な顔色に、初めて焦りが浮かぶ。


「おっと。随分と躾のなっていない(しもべ)だね、ねえさま?」

「姫様を侮辱することは許さんッ!!」


 従者ウティリスの筋肉が猛威を振るう。フルパワーの拳が唸り、風を切り、嘶き、触れるものすべてを粉砕していく。


 ティロはそれをすべて躱していたが、表情には先ほどまでの余裕が見られない。少なくとも接近戦においては両者の力量は互角であるようだ。


「それならこっちからも行くぜっ!」


 勇者キャンが不意に横から飛び出し、聖剣で飛び込みざまに斬り上げた。

 ティロの細剣がその斬撃を受け、弾く。


 聖剣の軽さに加えキャン自身の力ステータスの低さも相まって、単なる斬撃ではあまりダメージを与えられないようだ。


「あれあれ? 横から不意打ちしたくせにこの程度? 勇者様の力って大したことないんだねー」


 続けて繰り出されるウティリスの拳を回避しながら、ティロは割り込んできた勇者を容赦なく挑発する。


「い、今は指輪が無いからしょーがねーし!」

「まさに『負け犬の遠吠え』だね」


 ティロに完膚なきまでに言い負かされ、キャンは眉間に深く皺を刻み悔しそうに地団駄を踏んでいる。


「遊びはそれまでだ、小童(こわっぱ)ども」


 ティロとキャンのやり取りがふざけ合っているように聞こえたのだろうか。

 怒りでさらに筋肉を膨張させたウティリスが一瞬の隙をついて深くしゃがみ込み、これまでよりいちだんと素早さを増した一発をティロの鳩尾に下から正確に叩き込んだ。


 まともに攻撃を喰らってしまったティロの華奢な肢体は、頭上高く山なりに飛ばされ、数メートル先の地面へと落下していく。

 そのまま仰向けに落ちるかと思いきや、すんでのところで体勢を立て直し、ティロは辛うじて着地に成功したようだ。


 しかし、がくりと(くずお)れるように片膝をつき、細剣を持たない左手で鳩尾を押さえ、端正な顔を苦しげに歪めている。


「かっ……は……っ…………!」


 上手く呼吸ができず、酸素を求めて口を開き喘いでいるティロに、ウティリスは躊躇なく二発目を撃ち込まんと駆け出した。

 その拳が今度は細剣を握る少年の細い腕を、未発達な骨を、粉々に打ち砕かんと迫る。


 まさに空を切る拳がティロの右腕を捉えんとしたその瞬間、漆黒の魔力がティロの周囲を包む丸いバリアとして出現した。


「闇の加護……小賢しい真似を」


 ウティリスはギリギリのところで拳を止め、素早く引く。

 先ほど地底民たちの石片が全て吸収されたように、この状態で攻撃を加えようものならすべて吸収されてしまうだろう。


「乱暴だなぁ……魔力で守ってなかったら死んじゃうところだったよ……」


 黒球の中にいるティロの姿は見えないが、声だけが聞こえてくる。どうやらティロは予め闇の魔力で全身を保護していたようだ。


 吹っ飛ばされるほどの強烈な一撃を喰らいながらも辛うじて喋っていられるのはそのためか、とシマノは敵ながら感心した。


「野蛮な遊びはやめにしよう。直接手を下すのはボクの趣味じゃない」


 闇の加護を纏ったティロの身体がゆっくりと宙に浮く。中で何やら詠唱が始まっているようだが、シマノたちからはよく見えない。


 シマノは考える。ティロの台詞から考えて、恐らく今から発動するのは操りの術だ。


 だが、ここは屍の峡谷ではない。操りの対象となる亡者はどこにもいないのだ。

 しかも、姫様の加護の力で地底民や前線の仲間たちに操りは効かない。となると、考えられるのは……。


「……俺?」


 薄ら寒いものを感じ、シマノは姫様に縋るような視線を送る。当の姫様は余裕がないのかシマノに目も合わせてくれない。


「おあいにく様ですけれど、これ以上はわたくし無理ですわよ」


 姫様からごもっともなお言葉をいただき、シマノは独り絶望した。まさか、ついさっき立てたフラグを自ら即回収することになろうとは。


 このままでは操られた凡人が屈強な仲間たちにフルボッコにされる未来が訪れてしまう。


「さあ、ボクの代わりに遊んでおやり」


 黒球が消え、姿を見せたティロが強大な魔力を放つ。その力は真っ直ぐにシマノのいる方へ向かってくる。


「うっ、うわああああ!」


 情けない悲鳴を上げ、恐怖のあまり固く目を瞑ったシマノはせめて姿勢を低くしようとしゃがみ込んだ。

今回の好きなゲーム【ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 時空の章】

明らかに大地より難しかったけどどちらかといえばこっちのほうが好き

ラルフとネールの関係性も良かった

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