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第59話-2:はやくしてやくめでしょって言うやつ皆キッズ

「……あっ?」


 キャンが不信感を募らせてじっとシマノを見つめている。シマノは何事もなかったかのように笑顔でキャンに親指を立てて見せた。


「あっ……という間に! バッチリ強化できた! 効果が切れる前に早く行って!」

「そうか! サンキューシマノ! 行ってくるぜ!」


 単純なキッズで助かった。キャンは今度こそウティリスに後れを取るまいと、一目散に駆け出していった。


 間違えて防御を強化してしまったが、軽い聖剣を使うなら力の方はそんなに要らないだろうし、まあ結果オーライだろう、とシマノは判断する。


 あっという間にウティリスに追いついたキャンに続き、シマノもティロのいる方へと向かった。


 ティロは筋骨隆々のウティリスと聖剣を持つ勇者を前に、臆することなく堂々と構えている。


「へぇ、(しもべ)と獣人の子どもごときが、ボクと遊びたいんだ?」


 薄笑いを浮かべながらそう言い放つと、ティロは細剣の切っ先を地に向け、突き立てる。禍々しい闇の魔力が地を這い、ウティリスとキャンの足元を捉えた。


「! しまった……!」


 ウティリスが慌ててその場から飛び退こうとするも、既にティロの魔力によって足を取られ身動きを取ることは叶わなかった。

 どす黒い力は彼らの足を絡め取り、そのまま身体を上っていく。やがてその色は黒から赤へ。さながら赤い炎を纏った蛇が這い上がっているかのようだ。


 その赤い色にシマノは見覚えがあった。ムルの深海色の瞳を染め上げた、あの色。


「まずい、操りの術だ!」


 シマノは焦りながらステータス画面を開く。姫様の光の加護は地底民たちにしか掛かっていない。

 これまで実際に見たティロの操りは、いずれも地底民もしくは死者のみを対象にしていた。だからこそ油断していた。


 もし、生きている者も操れるのだとしたら……? ここで二人が敵方に渡ってしまえば、完全に詰む。


「うわああああ助けてシマノ~!」


 キャンの悲鳴にシマノの焦りも加速する。しかしながら、この状況で凡人のシマノに出来ることは皆無だ。

 頼みの綱のスワップも、キャンに掛けたばかりの今は使うことができない。今この瞬間、シマノが取れる選択は、ただ一つだ。


「姫様ーーーー! 何とかしてくださーーーーい!」


 今にも泣き出しそうな感情をグッと堪え、シマノは全力ダッシュからのスライディング土下座で姫様にヘルプを求めた。

 情けないことこの上ないが、事態は一刻を争うのだ。赤い魔力は既にキャンたちの腰の辺りまで迫っている。


「よろしくてよ!」


 姫様の指輪が輝き、聖なる光の魔力がウティリスとキャンに届いた。二人の身体を這い上がっていた赤い魔力が、止まる。


 ところが、ティロの魔力の勢いが強い。姫様の力はティロの操りを何とか食い止めてはいるものの、腰まで至ったその魔力を押し戻すことはできていなかった。


 このままでは、二人は闇の魔力に足を取られて戦えない。


「我らに任せよ」


 ムルたちだ。詠唱を終えたばかりの強烈な火力技がティロを襲う。

 彼の足元は瞬く間に崩れ、蟻地獄のように地の底の底へとその身体を引きずり込んでいく。そして地中に完全に捕らわれたその頭上から、無数の鋭い石片が降り注ぐ。


「……人形風情が」


 低い声でぼそりと呟いたティロの周囲を、黒い闇の膜が包む。


 それはちょうど姫様の光の加護の対になるような、球体状の闇のバリアであった。そのバリアは暗く濃く、中にいるはずのティロの姿は見えない。


「闇の加護か……?」

「恐らくそうですわね」


 当てずっぽうで言ってみたシマノに姫様が同意してくれた。僅かばかりの嬉しさを噛み締めつつ、シマノは加護を纏ったティロがどう動くかを注視する。


 闇の加護は、なんと降り注ぐ石片を全て中へと通過させ、そのまま吸収しているようだ。

 さらにそれは蟻地獄のようにティロの身体を拘束していた周囲の土や石までも吸収し、無効化してしまった。


 身軽になったティロがひらりと宙返りをし、蟻地獄から脱出する。


「あーあ、お人形のせいで服が汚れちゃったよ。弁償してもらおうかな」


 脱出したティロは闇の加護を解き、服に着いた泥や砂を払い落している。


「王族なら自分で払えよ、ケチ!」


 キャンが尤もすぎるツッコミを入れる。ついシマノも同意し乗っかりかけたが、今はそれどころではない。

 というか、さっきまでティロに操られかけていたのに随分余裕だな、とシマノはキャンの方を見て、固まった。


「岩?」

「石の壁だ」


 セクィ戦で小蜘蛛たちから身を守るのに使った技と同じだろうか。キャンとウティリスはいつのまにかそれぞれ小さな岩のドームで守られていた。そのドームもぼんやりと光を纏っている。


「地底の民のおかげで、ティロの魔力から逃れられましたわ。たとえ石の壁が無くなろうと、わたくしの加護の力でもうウティリスたちに操りは効きませんわよ」

「た、助かります~!」


 本音を言えば「俺にも加護を……」だったが、ムルや地底民たちだけでなくキャンとウティリスにまで加護の力を使っているのだ。

 表面上は余裕を装っている姫様も、顔マークでは大量の汗をかいて苦しそうにしている。とても我儘を言える状況ではない。


「ま、凡人なんか操ったりしないでしょ」


 しっかりフラグを立ててから、シマノは改めて難敵ティロと対峙するのであった。

今回の好きなゲーム【新・光神話 パルテナの鏡】

とにかく喋る、ひたすら喋る、常に誰かが喋ってる そんな印象 楽しい

高山さんのピットくんがとても良かった

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