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第54話:フラグを立てるつもりじゃなかった

「げっ、ゼノ幹部の蜘蛛女……!」


 シマノの顔色がサッと青ざめる。すぐにでも王家の正規軍が攻め込んでくるかもしれない今の状況で、ゼノの幹部まで相手取っている暇は、はっきり言って皆無だ。


 聞き間違いでなければ、この蜘蛛女は今シマノたちに助太刀を申し出た。だが、そんなに都合のいいことがあるだろうか。ユイもムルも同じ考えのようで、警戒の色を強めている。


 一方キャンは初対面のセクィに対し、貴重な助っ人が来てくれたと嬉しそうだ。


「ラッキーじゃんシマノ! このおねーさんに手伝ってもらおーぜ!」

「駄目だ、こいつはゼノの幹部なんだ」


 シマノの言葉を聞いたキャンは、えーっ!? と大袈裟に驚いてみせると、すぐさま警戒態勢を取った。その変わり身の早さにシマノは苦笑しつつも、一つ深呼吸をし、冷静に蜘蛛女の出方を窺う。


 蜘蛛女セクィはこれ見よがしに溜息を吐き、苛立たし気に髪をかき上げた。

 今日はゼノ幹部特有の装備と思しきフード付きマントを身に着けておらず、服代わりの深紅の紐と深紅のピンヒールだけが白い肌を引き立てている。


「これだからバカの相手は嫌なのよ。オマエたちだけで軍に勝てるわけないでしょ? このアタシが助けてやるっつってんだから大人しく従いなさい」


 彼女の言うことも一理ある。確かにシマノたちの力だけで王都正規軍を追い払うことは限りなく困難だろう。

 もし本当に助けてくれるというのであれば、ありがたく助太刀いただく方がよさそうだ。


「……来るぞ、備えろ」


 ムルの声で一同に緊張が走る。石の声を聴いたのだろうか、まだはるか遠く姿すら見えない王都正規軍の気配をムルは誰よりも早く感知した。


 ついに来てしまったか、とシマノは頭を抱える。こうなったらもう背に腹は代えられない。


「ここにいたら里が危ない。なるべく前に出て軍を迎え撃とう。ゼノ幹部のあんたも協力してくれ!」

「フン、言われるまでもないわ」


 セクィが踵を踏み鳴らすと、無数の小蜘蛛たちが出現した。蜘蛛たちは列を成し、軍が来ているであろう方向へと向かっていく。


「シマノ、私たちも行こう」


 小蜘蛛たちの様子を無視し、ユイはシマノに語り掛ける。その声に頷き、シマノは里の手前にある開けた場所――以前セクィと戦った地点へと向かっていった。


「里の者たちも呼んできた」

「助かるよ。ありがとうムル」


 どうやらムルはテレパシーで里に住む他の地底民たちに連絡してくれたようだ。

 里を代表し、何人かの地底民が出てきてくれている。その中には、長老のような個体も含まれていた。


「オ゛ォッ……ユウシェ……!」

「お久しぶりです、長老」


 ユウシェ、の声が懐かしい。長老というのはシマノが勝手に付けた呼び名だが、ついポロッと口から出てしまった。

 ……まあいいだろう。長老本人も呼ばれ方には特にこだわりがないようだ。


「そうだ長老、本物の勇者を紹介しますよ」

「ユウシェ……?」


 そう、今のシマノのパーティには勇者がいる。長老には是非とも紹介しておきたいところだ。

 しかし、あいにく今はそれどころではない。


「この戦闘が終わったら、改めてゆっくり紹介しますね」


 ただ後回しにしようとしただけなのだが、完全に死亡フラグのようになってしまった。一人焦るシマノを気にも留めず、長老は他の地底民たちと並んで既に迎撃体制に移っている。


「シマノ、早く」


 ユイに急かされ、シマノもウインドウを開きレンズを掛けて戦闘体制に移行する。


 シマノの立ち位置は最後尾の地底民たちよりやや前寄り。ムルと同じ位置だ。

 その少し前にユイ。さらにその前にキャンと蜘蛛女セクィがスタンバイし、前方には無数の小蜘蛛たちが蠢いている。


 里の前の開けた空間で、シマノたち一行は王都正規軍が姿を現すのをじっと待った。


 それは突然だった。

 爆発音とともに、前方の小蜘蛛たちの一部が消し飛んだのだ。


「来やがったわね」


 セクィが舌打ちをし、踵を踏み鳴らして小蜘蛛を増産する。その間にも前方では爆発音が続き、小蜘蛛たちが次から次へと潰されているようだ。


 その状況に焦ったのか、キャンが堪らず声を上げた。


「オレ様子見てくる!」

「お待ち! オマエ一人が行ったところで、吹っ飛ばされて終わりだよ」


 セクィの制止にキャンは飛び出したい気持ちをグッと我慢した。


「で、でも、蜘蛛が……」

「アタシの可愛い小蜘蛛ちゃんたちを痛めつけた報いなら、後でたっぷり味わわせるわよ」


 そう言いながら、セクィはどんどん小蜘蛛を量産していく。その魔力はとどまることを知らない。さすがはゼノの幹部といったところだ。


 そんなキャンとセクィのやり取りを見ながら、ユイとシマノはこの場を打開する策を考える。


「シマノ、セクィの蜘蛛が盾になっているうちに次の手を考えることを推奨」

「そうだな。といっても、攻撃はされてるけどまだ敵の本隊が見えきてないんだよなぁ」

「それなら、もう少し引き付けよう」


 ユイが四基の小型射出機を飛ばす。射出機はまっすぐ前方――王都正規軍がいるであろう方面へと飛んでいった。


「射撃開始」


 合図とともに射出機が展開し、敵の頭上から無数のレーザー攻撃を浴びせた。

 早速効果があったようで、小蜘蛛たちへの攻撃がぴたりと止む。


「ホラ、出るよ! ついてきな!」


 セクィの声掛けで、キャンは待ってましたとばかりに前進した。ついてこいと言われたわりに、勢いあまってセクィより前に出ようとしては怒られているようだ。


「俺たちも行こう、ユイ。ムルたちもこっちへ」

「了解」

「わかった」


 これでシマノたち側は全軍前進。王都軍側は若干後退しながら戦況を整えているようだ。


 暫くすると再び小蜘蛛たちへの攻撃が再開された。少し近づいたことで見えてきたのだが、どうやら後方から何らかの魔法が撃ち込まれているようだ。


 さらにその魔法攻撃に紛れて、王都軍の先鋒隊が動き出した。

 先鋒隊だけで百人はいるだろうか。ガチャガチャと金属製の鎧がこすれ合う音を立て、剣や槍を構えてこちらに向かってくる。


 小蜘蛛たちは堅固な鎧の前に為すすべなく、踏みつぶされ、叩き斬られ、いとも簡単に蹂躙されていった。


「いよいよ勇者の聖剣の出番だな……!」


 先鋒隊を前に武者震いしながら、キャンは先ほど試練の神殿で手に入れたばかりの専用装備に手をかけ、じっとその時を待った。


「その剣一本でアイツらに勝とうって?」

「そーだよ! 勇者の聖剣はムテキなのであーる!」


 ガキが、と呆れ溜息を吐くセクィに対し、キャンはガキじゃねーしとムキになっている。しかし、ここはさすがにシマノもセクィと同意見だ。


「ユイ、ムル。キャンのサポートを頼む。ユイは射出機で相手の魔法攻撃を止めて。ムルたちは石の力で相手の足を止めてほしい」


 ユイとムルがそれぞれ了承の意を返す。それを受け取ったシマノは前方の二人にも指示を出していく。


「えーっと、セクィ? 小蜘蛛でキャンのフォローをお願い。勇者はユイやムルたちの攻撃が終わってから聖剣で暴れること!」


「オッケーだぜ!」

「アタシに指図するんじゃないよ!」


 シマノの指示に、キャンは自信満々に頷いてみせ、セクィは苛立ちを隠さず反論してきた。

 だが、反論はしてきたもののシマノの指示通り小蜘蛛を召喚し、キャンのフォローに回ってくれそうだ。ホッと胸を撫で下ろしたシマノは、改めて全体に号令をかける。


「それじゃみんな、無理はしないで。作戦開始!」


 シマノの合図で、仲間たちはそれぞれ行動を開始した。

今回の好きなゲーム【ファイナルファンタジー零式】

バトルがとても楽しい~! \ミリテス皇国に栄光あれ/

主題歌のゼロがとても良かった

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