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第43話-2:正義か悪か

「ニニィが……いない」

「!?」


 ウインドウの存在を知るユイはさっと顔を曇らせた。一方、当然ながらキャンたちには事態が呑み込めていない。


「何言ってんだシマノ。ニニィがいねーのは見りゃわかるじゃん」

「やはり一発叩いておくか」

「ごめん! 今ちょっと、それどころじゃないかもしれない」


 妙に焦った様子のシマノに目をぱちくりさせながら、キャンとムルは互いに顔を見合わせ首を傾げている。


 そんなことには構っていられないとばかりに、シマノは次々とウインドウを切り替えていく。無い。ここにも無い。

やはり、どこを見てもニニィの項目が消滅している。ステータスも、スキルツリーも、装備品も、全て。


 シマノは黙ってウインドウを閉じた。考えられる可能性は三つ。「いつもより長く離脱するだけ」「裏切り等による永久離脱」そして、「死亡」このいずれかである。


「シマノ……」


 ユイが気遣わしげにこちらを見ている。駄目だ、落ち着かないと。


 とりあえずニニィの長期離脱はほぼ確定なのだから、ここで待っていても仕方がない。今はまず先に進むべきだ。シマノは必死に自らに言い聞かせる。

 しかし、いくら頭では理解していても、気持ちが全くついていかない。


 焦るシマノに、見かねたバルバルが声をかけた。


「こっからは一人で問題ねェ。世話ンなったな、シマノ」

「バルバル、なんで」

「お前はピクシーの嬢ちゃんを探しに行け。森の問題は俺らリザードマンの問題だ」


 バルバルの配慮にシマノは心から感謝する。

 だが、それに乗るわけにはいかない。今すぐ探しに行ったところで、ニニィが戻ってくる可能性は限りなく低いのだ。


「ありがとうバルバル。でも、俺たちも森へ行くよ」


 その言葉に驚いたのは、話を横で聞いていたキャンだ。


「ええっ!? ニニィのこと待たねーのか!?」

「ああ。いつ戻るのかわからない以上、先に進むしかない」

「いや、でもさ……」


 ニニィを置いていくことに負い目を感じるのか、キャンはもじもじと何か言いたげにしている。

 もちろんシマノだって、このままニニィを放っておくつもりはない。


「ラケルタの森に行って、試練の神殿に行って、それでもニニィが戻らなければファブリカに行こう。その頃には指輪が一個ぐらいは出来ているはず」

「私もシマノに賛成」


 ユイが賛成すると、キャンの隣にいたムルもこくりと頷いた。


「じゃーオレも賛成!」


 元気に右手を挙げ、キャンはそのままバルバルに向き直った。


「っつーわけで、まだまだよろしくな、オッサン!」


 屈託なく笑うキャンに対し、バルバルは険しい顔を向ける。


「気持ちはありがてェが、こいつァ俺たちの問題だ。付いてくんのは構わねェ。ただ、手は出すんじゃねェぞ」


 バルバルの念押しを聞き入れ、シマノはもちろんと頷いた。


「俺たちはただ森についていくだけ。あんたらの争いには首を突っ込まない。これでいいだろ?」

「あァ。それで頼む」


 シマノは林を離れ、仲間たちとともにラケルタの森を目指す。ニニィの離脱をまだうまく受け止めきれないまま。


 ***


「バルバルだ! バルバルが戻ってきやがった!」


 バルバル帰還の報せが駆け巡り、ラケルタの森はあっという間に驚天動地の大騒動となった。


 新ボスの部下であろうリザードマンたちが次から次へと襲い掛かってくる。バルバルはそいつらを物ともせず、自慢の巨大斧で薙ぎ払っていった。


 今の彼はかつての姫様たちと同じ、所謂「ゲスト加入」扱いである。つまりシマノたちパーティの一員であり、彼が倒した分の経験値がシマノたちにも加算されるというわけだ。


 つまり、シマノたちはただバルバルの後ろをついていくだけで経験値がもらえるというわけだ。


 ついでに、弱そうな人間から仕留めてやろうと背後から襲い掛かる不届きなリザードマンを、ユイの光線銃で数人返り討ちにして経験値の肥やしにしてやった。

 一応手は出さない約束だが、これは正当防衛なのだから仕方ないだろう。


 やがて一行は、森の最奥部――リザードマンのアジトに到着した。


 そこは粗末な砦のような造りになっていた。手前側に狭く汚い牢のような部屋がいくつも並び、その中に何人ものリザードマンが詰め込まれている。恐らくかつてのバルバルの部下たちだろう。


 それを見下ろすような一段高い位置に、貢物らしき大量の肉や木の実が積まれていた。その食料の山の奥に、豪奢な木製の椅子が一つ。

 そこに、一人のリザードマンが腰かけている。


「来たか、バルバルよ」

「久しいのォ、ルナーダ」


 バルバルが斧を握り直し、一歩前に出る。

 ルナーダと呼ばれた森の新しいボスもまた立ち上がり、特徴的な長い柄の斧を手にシマノたちを見下ろしている。その目に、シマノは思わず声を上げた。


「あの赤い目……まさか!」


 シマノの声にキャンとユイも同じ反応を見せた。


「あれ、ムルのときと同じだ!」

操師(あやつりし)ティロ……!」


 ルナーダの瞳の色は、操られていた時のムルと同じ柘榴のような赤色に染まっていた。


「これはまずいぞ……!」


 ムルや骸骨兵士とは違う、生きたリザードマンまで操作できてしまうとは。

 シマノは急いでウインドウを開き、デバッグモードを起動しようとしたその手を、止めた。


 ――待て、今はニニィがいない。ニニィがいなければ、ルナーダからソースコードを盗めない。


 ならせめて警告だけでもと、シマノはバルバルに声をかけるべく顔を上げた。その動きが止まる。


 眼前に立つ、かつてのリザードマンのボスであったその男から凄まじい怒気と重く地を這うような殺気が溢れ出していたのだ。


「お前ら、手ェ出すなよ。森の掟だ。サシでやる」

「決闘か。良かろう。今度こそ貴様の息の根を止めてくれるわ」


 静まり返った森の最奥部で、二人のリザードマンによる決闘が静かに始まろうとしていた。

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カプコンのゼルダ 大地の方が難易度易しめだと思うので初見はこちらから推奨

カラーになったゲームボーイで見る季節の切り替えがとても楽しかった

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