表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/62

第42話-2:おねぇさんとキャンプ♡

※ちょっと倫理的にしんどめの話あるので苦手な方は注意してください~!

 キャンプの最中、忽然と姿を消したニニィとムル。シマノは二人の不在をユイに告げ、自分一人で探しに行くことにした。


「シマノ、一人で大丈夫?」

「大丈夫、ちょっと近くを見てみるだけだから。もしいなかったら一度戻ってくるよ」

「わかった。気をつけて」


 ***


 夜の林は特有の怖さがある。風に草木が揺れ、ざわざわと音を立てる。すぐそばの茂みから突然何かが飛び出してくるかもしれない不安感。


 だが一方で、澄んだ空気の心地よさ、夜空を彩る星々、昼間の強い日差しとは異なる穏やかな月明り――夜しか味わえないこの空気感と、一人で出歩く背徳感。それを堪能したくてニニィたちの捜索を名乗り出たという面も、シマノには確かにあるのだった。


 とはいえ、もちろん怖いものは怖い。自分の足が枯れ枝を踏んだ音に自分で驚きながら、シマノはおっかなびっくり夜の林を歩いて行った。


 満月の明かりが浩々と輝き、下生えに木々の影を落とす。その明るさのおかげで、夜目の利かないシマノでも辛うじて出歩くことができた。


 しばらく歩くと、いきなり開けた場所に出た。そこは、水をなみなみと湛えた広大な湖だった。まさかこんな林の中に大きな湖があるだなんて。昨日命がけで下ったリーヴ川もここに繋がっていたりするのだろうか。


 その湖のほとりに、小さな影が座っているのが見えた。


「ニニィ」


 呼びかけるとその影はピクリと反応し、こちらに振り向いたように見える。

 シマノが近づいてみると、特徴的な桃色の髪が月明りを反射して幻想的な光を纏っているようだった。その儚げな美しさに思わず息を呑み、足を止める。


「キミかぁ。どうしたの? 眠れない?」


 一切悪びれることなく、穏やかに問いかけるニニィにシマノは少し呆れた。


「眠れない? はこっちの台詞だよ。いきなり一人でいなくなるから心配しただろ」

「あらぁ、ゴメンね♡」


 ニニィと並んで湖畔に腰掛け、広大な湖面を眺める。湖面は月明りを映し、ゆらゆらと怪しく、どこか神秘的な輝きを放っていた。


「あたしなら大丈夫だから心配しないで。この辺詳しいのよ」

「ニニィってこのあたりの出身なの?」


 シマノの質問に、ニニィは少し考えるようなそぶりを見せた。


「うーん……このあたりっていうより……ここかな♡」

「ここって……この林?」

「……そう」


 ニニィの少し言い淀む様子にシマノは違和感を覚えた。それに、この林自体が故郷だとニニィは言うが、集落らしきものもなければ他のピクシー族だって一人も見当たらない。


 シマノの疑念を察したのか、ニニィが重い口を静かに開いた。


「ここにはね、昔、小さな集落があったの。あたしと母さん、他にも何人かのピクシーが住んでいた。木の実を拾ったり、この湖で魚を取ったりしながら静かに暮らしてたのよ」


 どうやら会話イベントに突入したようだ。ニニィの過去を知るチャンスにシマノは密かに胸を高鳴らせる。

 静かに暮らしてた、とニニィは言った。では、そのピクシーたちはどこへ行ってしまったのだろう。ニニィの言葉尻に不穏さを感じ取り、シマノは固唾を呑んだ。


「あの日。あたしが成人してすぐのことだった。集落を盗賊たちが襲ったの。奴らの狙いはピクシー。高く売れるのよ、あたしたちって」


 自嘲するように乾いた笑いを漏らすニニィに、シマノは何も声をかけられず当惑することしかできない。


「そんな……」

「特に成人したてのピクシーは高かったみたいね。集落にいたピクシーは全員捕まったり殺されたりして、あたしたちの集落は――消滅した」

「……酷い」

「ここだけじゃない。他にもたくさんの集落が襲われた」


 そこまで語ったニニィがふと口ごもり、シマノをちらりと上目遣いで見上げる。どうしたのだろう、とシマノが顔色を窺おうとしたその時、ニニィがシマノの両手をそっと握った。小さく柔らかい手が、シマノの手を包み込むように握っている。


「ねぇ、シマノ。ピクシーって世界中どこにでもいるじゃない? みんな襲われて売られて、何とか逃げ延びて生きてるの」

「……」


 シマノは言葉を詰まらせた。脳裏に、ファブリカギルドの受付嬢が、城下町のカラコン屋が、サピ中央図書館の司書が、次々と浮かんでくる。彼女たちも、そして今隣で手を握っているニニィも、凄惨な人身売買の被害者だったのだ。


「あたしは『ピクシー狩り』を絶対に許さない。首謀者を突き止めて、必ず復讐するわ」


 俯き握った両手に視線を落としながら、微かに上擦った声で誓うニニィに、シマノは黙って頷くことしかできなかった。復讐を肯定したくはないが、否定する権利もないような気がする。


「ゴメンね、こんな話に付き合わせちゃって。もう少ししたら戻るから、先に行ってて」

「……わかった。気をつけて」


 暫く一人にしてほしい、と言外に伝えるかのように笑顔を見せて手を離したニニィを残し、シマノはみんなのいるキャンプ地へと戻ることにした。


「……シマノ!」


 歩き出したシマノの背に、ニニィの声が届く。振り返ると、ニニィは座ったまま上体をこちらに向けていた。


「……ありがと」


 満月の光が湖面を煌めかせる。逆光でニニィの表情はよく見えなかったが、何となく微笑んでいるような気がした。


 ……まだ確認することは出来ないが、さすがに今の会話イベントは好感度が上がっただろう。


 おおよそこの雰囲気に似つかわしくない身も蓋もないことを考えながら、シマノはその場を去った。


 そこはかとなく満足気なシマノを見送り、一人になったニニィは静かに立ち上がった。その手には、先ほどまでシマノの指に嵌まっていたはずの、金色の指輪が握られている。


「ゴメンね、シマノ」


 ニニィは指輪を自らの指に嵌め、目的地を念じる。その時、少し離れた茂みがガサリと音を立て大きく揺れた。


「っ! 誰!?」


 素早くダガーを抜き、ニニィは茂みの奥を注視する。数秒の間を置いて、小さな人影が姿を現した。


「我も連れて行け」


 ムルだ。背丈ほどの茂みを掻き分け、こちらに向かってくる。その途中でフードが草に引かれて外れた。

 透き通るような銀髪と白い肌が月明りを受け神秘的な美しさを纏う。


 小さな二つの影が、湖のほとりで静かに対面した。

今回の好きなゲーム【MOTHER2】

どせいさんきっかけで興味を持ってやってみた作品

ポップでキャッチ―で王道で優しくて今でも大好き ギーグとポーキーの来し方行く末を想わずにはいられない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ