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第42話-1:おねぇさんとキャンプ♡

「まさかこんなところにいい場所があるなんてなぁ」


 シマノが感嘆の声を漏らすと、ニニィがウインクで答える。


「でしょ♡ あたしの情報網、ナメてもらっちゃ困るんだから」


 そう言いながら、ニニィの視線がふと遠くの一点に移る。シマノもそちらに目をやると、そこにはバルバルとキャンの姿が見えた。


「あの二人、意外と馬が合うみたいね」

「ええっ、本当に?」


 それはシマノにとって俄かには信じがたい光景だった。あの「力こそすべて」を体現したかのような凶悪な存在が、キャンと仲良く薪を拾っているように見える。

 実際には、暇を持て余したキャンが一方的にバルバルに付きまとっているだけではあるのだが。


「うーん、全然いい枝落ちてねーなー。なーなーバルバルのオッサン~、その辺の木からテキトーに枝折ってくれよ~」

「お前は森のことが何も分かっちゃいねェ。いいか? 折った枝じゃ火がつかねェ。燃えやすいのは落ちて乾いたこういうヤツだ」

「へー、オッサン物知りだな! すげー!」

「うるせェ。黙って手ェ動かせ」


 どうやらキャンはバルバルにすっかり懐いたようで、何度もオッサンオッサンと呼びかけては鬱陶しがられている。

 その様子を見て呆気にとられたシマノであったが、一方でどこか安心している自分にも気が付いた。たとえ少しの間だとしても、共に戦うメンバーである以上仲良くできるに越したことは無いのだ。


「ちょっとシマノ~! サボってないでそっち結んで~!」


 ニニィの声にシマノはハッと我に返った。二人でバルバルたちを眺めていたつもりだったのに、いつの間にかニニィはキャンプの設営作業に戻っていたようだ。


「ごめんごめん、ちょっと待ってて」


 ニニィに言われた通り、シマノは頑丈なロープを高い木の枝にしっかりと結びつける。そこに大きなぼろ布を張り、タープのように屋根を作った。


 そういえば、こっち来てからここまで本格的なキャンプって初めてだなぁ、とシマノは空を見上げた。だいぶ日の傾いた空は、ほんのり赤く染まり始めている。


 元の世界での記憶が無い以上正確なところは分からないが、恐らく自分はみんなでキャンプとかするタイプじゃなかっただろうな、とシマノは分析する。

 だが、夕暮れ前、だんだんと暗くなっていくこの時間帯特有の、全てがうすぼんやりとしていくような感覚。人工の光が入らない場所でしか味わえないこの感覚は、素直に心地よいと感じていた。


 いや、感傷に浸っている場合ではない。本格的に暗くなる前に、設営を終わらせなくては。ニニィの咎めるような視線が痛い。


 日が完全に沈みきる少し前、シマノたちは無事キャンプの設営を終え、ちょうど戻ってきたユイとムルを交えて全員で焚火を囲んだ。

 なんと、バルバルが薪拾いのついでに兎によく似た一角の小動物――ウサックスというらしい―を仕留めたというのだから驚きだ。

 生で喰うのが一番うめェと豪語するバルバルを必死で説得し、食べやすく捌いてもらったその肉を何とか焚火にかけることができた。


 炎に焙られ食欲をそそる香りを発する肉を前に、シマノはふと、キャンプによる体力の回復量って宿と違ったりするのかな、などと考える。……今回の場合は強制イベントっぽいし、ちゃんと全快してくれないと困るな。


「我は寝る。火の番が必要なら起こせ」


 地底まで行ってきた疲れもあるのだろうか、食事を必要としないムルは一足先に眠りについた。

 シマノとしては王都の要求に地底のみんながどう反応したのか聞いておきたかったし、何より大切な仲間の一人としてムルにも一緒に火を囲んでほしかったのだが、まあ無理強いは出来ない。

 おやすみ、と声をかけてその背を見送った。


「まさかこのバルバル様が人間のガキと同じメシを喰うなんてなァ」


 焼きたての肉を豪快に噛みちぎりながら、バルバルがぼそりと呟く。不思議とその声には、人間という種に対する侮蔑の色がなかった。

 それよりも寧ろ、何もかもを失った自身への落胆が多分に含まれているように聞こえる。


「バルバル……」


 振る舞いこそラケルタの森で出会った時から変わらず粗野で豪快に見えるが、見下していたはずの人間に敗れ、部下に裏切られ、冷たい地下牢にたった独り閉じ込められていたのだ。

 シマノが思っている以上に、その心は深い傷を負っているのかもしれない。


 何と声をかけようかと逡巡しているシマノの脇からキャンがヌッと顔を出し、陽気に話しかける。


「だよなー! バルバルのオッサン、ニニィおねーさん、ユイ、ムル、凡人のシマノ、あと姫様と何かこえーやつ。オレもこんなにいっぱい仲間ができるとは思わなかったぜ!」

「おいなんで今わざわざ凡人って付けた?」


 シマノのツッコミを完全にスルーし、キャンはウサックスのこんがりモモ肉に夢中になっている。

 そんな二人の間の抜けたやり取りを目にしたためか、バルバルはフッと笑みをこぼした。


「全く、ガキどもには敵わんのォ」

「シマノはともかくオレはガキじゃねーし!」

「おい」


 キャンに厳しくツッコミを入れつつ、シマノ自身もいつの間にか笑顔になっていた。

 バルバルは、一度は命の奪い合いをした相手だ。そんな相手と同じ火を囲み、同じ肉を食べるのは確かに不思議な気持ちではあった。

 だが、案外悪くないものだなとシマノは感じていた。


 和気藹々と過ごすシマノたちの様子をユイが静かに見守っている。揺れる炎が彼女の白い肌を暖かく照らす。


 その隣に、不自然に空いた空白を見つけ、シマノは初めてニニィの不在に気がついた。


ほーひふぁ?(どーした?) ふぃまの(シマノ)


 突然辺りをせわしなく見まわし始めたシマノに、キャンが口の中を肉でいっぱいにしながら声をかけてきた。


「ニニィ、どこ行ったんだろって」

「ニニィなら、先に休むって」


 ユイの答えに、シマノはいつの間にと驚く。ウサックスの肉が口に合わなかったのだろうか。気にはなるが、一先ず目の前の肉を食べきることに集中しよう。


 食事を終えると、ユイが火の番を申し出てくれた。ありがたく甘えて、シマノたちは簡易タープに向かい寝床に就くことにする。

 当然寝袋などというものは存在しないため、適当に敷き詰めた葉の上に何となく敷いたぼろ布の上で各々雑魚寝である。


 驚いたことに、そこには先に休んでいるはずのムルの姿もニニィの姿もなかった。ムルは手頃な岩場を探して一人で休んでいるのかもしれないが、ニニィがいないのは気がかりだ。


 おなかいっぱいでほとんど目が閉じかかっているキャンをバルバルに託し、シマノはユイにニニィとムルの不在を告げ、探しに行くことにした。

今回の好きなゲーム【ペーパーマリオRPG】

マリストからのペパマリ どっちも好き

ランペルのところ当時結構本気で怖かった

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