第41話-1:娑婆の空気は格別にうまい
ザル警備の王城メインホールで、キャンがドスドスと足音を大きく立てながら声を荒げていた。
「あの王様ヤロー、ムルのこと人形人形って、すげーヤなやつだったな!」
なっ! とムルに同意を求めるキャンだったが、ムルの方はあまり気にしてはいないようで涼しい顔をしている。
「我らが創られた存在であることは事実だ。人形という表現も間違ってはいない」
「それは……そうかもだけどさ……」
期待していた反応が得られず、キャンはしょんぼりと尻尾を垂らす。
そんなやり取りを横目に、シマノは先程までの対話と今後の方針について話そうと、ユイに小さく声をかけた。
「ユイ、ちょっといいか?」
「何?」
「王様の言ってたこと……ユイはどう思う?」
シマノの問いかけに、ユイは口元に手を当て少しの間考えるようなそぶりを見せる。
「完全に信用することは困難。王様の言う『記憶操作』がもし本当なら、まず間違いなくニニィの記憶が操作されたはず」
「そう。そうなんだよ。でもニニィには全然怪しいとこないし……」
ユイの言う通りだ。アジトに行ったニニィが何もされずに帰されたとは考えにくい。
だが、シマノから見てニニィの振る舞いや会話内容には特段怪しい点など見当たらないのだった。
「シマノ。王様は、私たちに何かを隠している可能性が高い。姫様やムルから聞いた話も、王様の話も、どちらか一方を完全に信じてしまうのは危険」
「そうだな。ありがとうユイ」
ユイと話せてよかった。こういう時、的確な意見を聞かせてくれるユイの存在は本当にありがたい。
王の話を今一つ信頼できずにいたシマノだが、おかげで少し頭がスッキリした。
まずは予定通り王からの提案に乗っかるとしよう。シマノたち一行は試練の神殿を目指す。
だがその前に、バルバルを地下牢から助け出さなくては。そのために、牢を解錠できる指輪が必要だ。
要するに、指輪作りの進捗を確かめるべくファブリカへと向かう必要がある。
そんなことを考えながら歩いていたら、いつの間にか城から外に出ていた。
「やっっっと堂々と街を歩けるな!」
目いっぱい高く腕を伸ばし、シマノは久々の娑婆の空気を堪能する。
「そうよね~。久しぶりにショッピングでもしたいわぁ♡」
「オレもオレも!」
ニニィもキャンも目を輝かせて城下町を眺めている。
ウィッグ屋にアクセサリー屋、スイーツ屋にレストラン、最新鋭の武器防具店、薬品店、魔道具店……選り取り見取りのショップ街に、シマノもいつの間にか視線も足も吸い寄せられていく。
「三人とも。今はバルバルの救出が最優先。少しの間我慢して」
ユイにしっかりと釘を刺され、三人は渋々はーいと返事をした。
まあ、あまりバルバルを待たせすぎるのも後が恐ろしい。とりあえずは寄り道せず、シマノたち一行は真っ直ぐ工業都市ファブリカへと足を運ぶことにする。
***
「おう兄ちゃん、久しぶりだな! ピクシーの姉ちゃんから聞いたぜ。大変なことになってたらしいじゃねぇか!」
ファブリカの工房を訪ねると、例の職人が元気よく出迎えてくれた。初めてこの街を訪れた時よりも溌溂として見える。
「職人さん久しぶり! いやぁ本当困っちゃったよ~!」
シマノもつい調子を合わせて元気よく答えてしまう。冤罪も晴れ、堂々と街を歩けるようになったのは、やはり気持ちがいい。
ムルも来ればよかったのに、と思うが、王都に近いこの街では、被差別階級である地底民が出歩くことを快く思わない者も多い。
橋渡し役としてファブリカでは面が割れているムル自身も、そのことは重々承知しているようだ。住民に無用な嫌悪感を与えることもなかろうと告げ、一人で地底へ帰ってしまった。
もちろん、それは王家から受けた鉱石の要求を里に報告するための一時的な帰省ではあるのだが。
(やっぱり何かモヤモヤするな……)
ムルの不在が心の隅に棘のように引っかかりながらも、シマノは眼前の職人に指輪の進捗を訪ねようと、元気いっぱいに話しかけた。
「で、指輪は!?」
職人はニッと笑って親指を突き立て、背後の棚を指した。
「見てみな」
来た。いよいよあの便利な指輪が手に入る。シマノは仲間たちと顔を見合わせ、夢中で棚に向かった。
棚の真ん中の段に、小さな宝箱が置かれている。そっと手に取り、期待に震える手でゆっくりと蓋を開く。
中には、一際輝く金色の石を擁した、あの王家の指輪が入っていた。
「すごい……」
「だろ? 光の加護とやらは使えねぇが、瞬間移動だの鍵開けだのにゃ問題ねぇはずだぜ」
早速装備し、ウインドウを開く。確かにステータスやスキルには変化がなさそうだ。
マップ画面に遷移すると、これまで訪れた町や採掘所にピンが立っている。ここをタップすることでワープできる仕組みらしい。
「これは助かる~!」
心の声駄々洩れで喜ぶシマノ。人数に制約があるとはいえ、ワープが出来るのと出来ないのとでは攻略効率が桁違いだ。
しかも、王都なら城や地下牢、地底なら里だけでなく採掘所や石の涙など、結構細かくワープ先が設定されている。ピンポイントで行きたいところに行けるのは非常にありがたかった。
一方で、牢を開ける認証システムの方は、ウインドウからは確認できなかった。こちらは対象に近づいたら自動で発動するものなのかもしれない。
「シマノずりーぞ! オレも指輪欲しい!」
キャンがキッズ特有の我儘を発動させているが、無視だ。この指輪を使って最初に為すべきことはバルバルの救出である。何よりその前に、職人に報酬を渡さなくては。
「職人さんありがとう! これ、約束の鉱石」
シマノの手渡した鉱石に職人は目を奪われたようだ。
「こっ、これは……!?」
「北の山岳地帯で採ってきたんだ」
得意げに語るシマノに、職人は危うく鉱石を取り落としそうになっている。
「北って、魔王がいるって噂のおっかねぇとこじゃねぇか!? そんなとこで……こんな上等な石が掘れるっていうのか……!」
「その通り。あの辺はこっちより良い石が採れるんだ。欲しけりゃもっと掘ってきてやるよ」
シマノの提案に、職人はより一層目を輝かせブルッと肩を震わせた。
「ああ、是非お願いするぜ……! 噂じゃそろそろまた地底から石が届くようになるらしいからな。そこでこの石がありゃ、他のやつらよりもっと強力な装備が作れるってもんよ」
「任せて。その代わり、この指輪をもっとたくさん作ってほしいんだ」
「おうよ、任しときな。ただ、このことはくれぐれも内緒で頼むぜ。王家の秘宝を偽造したなんて、バレたら即あの世行きだ」
職人の言うことは尤もだ。ついさっきまで冤罪に苛まれていたシマノも決して他人事ではない。
「もちろん、約束する」
「よし、交渉成立だ」
職人と固く握手を交わし、シマノたち一行は工房を後にする。
今回の好きなゲーム【ファイアーエムブレム 覚醒】
初めて遊んだFE 初めてなのに調子こいてルナティックで開始したことをだいぶ後悔した
クロム様スマブラ参戦おめでとうございます!




