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第39話-1:トカゲは二足歩行しなくても怖い

「な……んで……お前が……ここに……?」


 リザードマンの長バルバル。シマノがこの世界に来て最初に戦った、決して忘れることのできない強敵。

 部下の手斧で裂かれた腕の痛みも、息を切らして森中を駆けまわった苦しみも、昨日のことのように鮮明に思い出される。


 あの時、ユイの雷魔法で確実にとどめを刺したはずだ。HPは0になっていたし、レベルアップに足る経験値を得ることもできた。


「部下に助けられちまッてなァ……いや、もう()部下か」


 どうやら、この世界におけるHP0は死を意味するわけではないようだ。戦闘不能、あるいはいわゆる「瀕死」状態といったところだろうか。


 それよりも気になるのはバルバルのその後だ。

 元部下とやらに助けられた彼が、いったい何故こんなところで捕まっているのか。元部下がなぜ「元」部下なのか。バルバルのいないラケルタの森は今どうなっているのか。


「バ、バルバル……何が、あったんだ?」


 リザードマンたちに負わされた恐怖と苦痛を思い出し、バルバルの前に立つとどうしても身体が震えてしまう。

 それを必死に抑え込みながら、シマノはなるべく毅然として見えるよう背筋を伸ばし、バルバルと正面から相対する。


「何てこたァねェ。俺はお前らに負けた。()()()()()()――あの森の掟だ」


 なるほど、いかにも荒くれ者の集団らしい掟だ。だが、森を出たからといってここに囚われている理由にはならない。


 シマノが疑問を口にしようとすると、バルバルが先に言葉を続けた。


「掟に異存はねェ……が、今のリーダーのやり方には黙ってらんねェ。あいつは一族を支配し、苦しめ、自分の玩具にしてやがる」

「ひょっとして、その今のリーダーってやつのせいでここに?」


 シマノが思わず尋ねかけると、バルバルは悔しそうに歯を食いしばり、呻くように頷いた。


「あァそうだ。あいつは……もう昔のあいつじゃねェ。俺を池から助け出したかと思えば、リーダーの座を奪い、一族の者を傷つけ……しまいにゃ掟通り森を出た俺に、いきなりゼノが何だのと言いがかりをつけてきやがった。それで俺はアッという間に王都に引き渡され……このザマだ」


 ゼノ、の二文字にシマノとユイは顔を見合わせる。こんなところにまで奴らが絡んでくるとは。


 とにかく、バルバルを王家に引き渡した「元部下」とやらの狙いが気になるところだ。ゼノの構成員である可能性も否定できない。

 奴らなら、邪魔なバルバルを排除し、リザードマンを支配してゼノの戦力に加えるぐらいのことはやってきそうだ。


 だとすれば、このままバルバルを見捨てるわけにもいかないだろう。

 顔を見合わせていたユイが、シマノの意を汲み取ったのか眉間に皺を寄せる。


「シマノに警告。私たちには彼を助けてやる義理などない。当初の目的通り、王家との接触を優先すべき」

「いや、ゼノと関係あるかもしれないっていうなら、放っておくわけにはいかないだろ?」

「……シマノ。ここに来た目的を忘れては駄目」


 ユイの言うことは正しい。ここに来た目的を優先すべきなのはその通りだが、それよりもユイはシマノがバルバルや彼の部下との戦いで怖い思いをしたことを気にかけ、深くかかわらないように引き止めてくれているのだ。


 それでも、一度HPを0にして殺してしまったと思い込んでいた負い目もあるからか、シマノはどうしても今困っているバルバルを放っておく気にはなれなかった。


「バルバル、俺たちはこれから王家の真意を確かめる。ゼノと王家が繋がっているかもしれないんだ」


 シマノはバルバルに語りかける。その言動を見たユイは何かを言いかけたものの、黙ってぐっと飲み込んだ。そんなユイに罪悪感を刺激されつつも、シマノは自身の信じた行動をとる。


 シマノの言葉を聞いたバルバルは目を見開き牢の鉄格子を両手で掴み、今にも身を乗り出さんとする勢いでシマノに迫った。


「なッ、何だとォ……!? じゃァ、あいつも王家も、そのゼノとかいうやつらも全員グルってことか!?」

「っ……そ、その可能性は否定できない」


 バルバルの勢いに気圧され、シマノは思わず怯んでしまった。

 すると、シマノとは対照的に淡々とした様子のユイが、助太刀に入ってくれた。


「バルバル。もし貴方が望むなら、私たちは貴方をここから出して、森へ連れて行ってあげる。どうする?」


 その助太刀に、誰よりも驚いたのがシマノだ。口では反対しつつも、何だかんだシマノの望みに寄り添おうとしてくれたことに、思わず心が暖かくなる。


 一方、聞き捨てならないと反対したのは、ムルだ。


「待て。まずは我らの目的、王家との接触が先だ。そいつを連れて行っては話が拗れる」


 ムルの言うことも尤もだ。まずは自分たちの冤罪を晴らすことを優先しなくてはならない。


「そうだな。バルバル、俺たちは王家の人に会って話をしてくる。その時、お前の釈放も頼んでみるよ」

「もしダメって言われても、後でこっそり助けに来てあげるからね♡」


 ニニィが横から顔を出し、バルバルにウインクを飛ばした。

 バルバルは少し逡巡する間を見せたが、すぐシマノたちに向き直り、深く深く頭を下げた。


「…………わかった。お前らに頭下げんのは(はらわた)が煮えくり返る気分だが……頼む、この通りだ。俺とともにリザードマンの一族を救ってくれねェか」

「ああ、約束だ」

「……かたじけねェ」


 こうしてシマノはバルバルを牢から救出すること、ラケルタの森のリザードマンたちを救うことを約束した。


「よっしゃー! 勇者キャン様に任せとけっ!」


 ついさっきまで地下牢をあちこちうろうろ探検していたらしいキャンがちょうど話の終わったタイミングで現れ、おいしいところを全て攫って行った。

今回の好きなゲーム【あの日は燃えるゴミの日だった】

こちらもスマホゲームですが サクッと遊べて面白い、印象的なストーリーなのでネタバレ踏まずにぜひ

広告はまあまあ鬱陶しいので消し課金した方がいいかも

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