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第37話-1:ドキドキ♡川下り

「わたくしもそうしたいと思っていましたわ」


 シマノが出したアジト突入案。それに真っ先に賛成したのは、姫様だった。

 話の早い王族で助かるとシマノは内心ガッツポーズをする。


「それはなりません」


 予想外だ。従者のウティリスが、主である姫様が賛成しているにもかかわらず反対してきた。それを聞いた姫様は眉間に皺を寄せている。


「愚弟を窘めるのも立派な姉の務め。止めても無駄ですわよ」

「いいえ。不肖ウティリス、危険と分かりきった場所に姫様をお連れするわけにはまいりません。力づくでも、ご遠慮いただきます」

「チッ。随分堅いことを仰いますのね」

「ティロ様のこと、王家の一員としてまずは王様にご報告差し上げるのが筋では?」


 紛うことなき正論である。姫様は痛いところを突かれ、反論できずにぐぬぬと悔しがっている。


「うー……仕方ありませんわね。ごめんなさいシマノ。わたくしはご一緒することが難しいようですわ」


「我は行くぞ」


 まさかのムルからの賛同にシマノは驚く。ムルの隣で肩を支えていたキャンも驚いたようだ。


「何言ってんだよムル、無理すんなって!」

「別に無理ではない。少し休めば問題なかろう」

「けどさ……」

操師(あやつりし)の力。我ら地底の民に主を殺させる力を持つ、ティロとやらを追わねばならぬ」


 尤もな理由だ。もちろん、姉である姫様が王家の関与を知らなかった以上、弟のティロが地底民の主殺しに直接関わっている可能性は低そうである。

 だが、その能力の出処を探り、主殺しの黒幕を突き止めるには、まずティロを追うことが有効だろう。


「ちょっと、本当に大丈夫? お姫様もウティリスも来てくれないんでしょ?」


 ニニィが心配した様子でシマノに声をかける。

 確かにニニィの指摘通り、いくら少しずつレベルが上がっているとはいえ、今のシマノたちにはまだゼノ幹部を倒すほどの力は無い。最初に出会ったエトルの能力の秘密さえ、まだ解明できていないのだ。


「うーんでもせっかくここまで来たし、このチャンスは逃したくない……そうだ、獣人の皆さんにも来てもらえば、何とかならないかな!?」

「もうみんな帰ったぜ?」


 何ということだろう。一仕事終えた獣の戦士たちは酒場で勝利の祝杯を挙げるべく、さっさと町に戻っていってしまったのだ。


「ええええ……早すぎぃ……」

「シマノ、今回は諦めて。私たちも町に戻ろう」


 シマノが現状を受け入れるのを見てムルも渋々納得し、一行は獣の町へと引き返すことにした。


 ***


「あーあ、解かれちゃった」


 薄暗く閉鎖的なゼノのアジト。その中では珍しく窓のある部屋で、退屈そうに窓辺で独り頬杖をついていたティロは、操り状態の解除を感知した。


「いかがでしたか? 彼らの様子は」


 何の前触れもなく現れた気配に、ティロは事も無げに振り返り部屋の隅を一瞥する。


「別に。キミが期待するようなことは何もなかったよ」

「それは残念」


 言葉とは裏腹に一切残念そうに見えないエトルの様子に肩を竦め、ティロはひらりと窓台に腰かけた。窓からの光に、ティロの影が落ちる。


「あの()()()はまだまだ使えそうだ。今度は何してねえさまと遊ぼうかな」

傀儡(くぐつ)に現を抜かす暇があるなら、もう少しこちらに協力していただきたいところですが」

「やだなぁ、怖い顔するなよ。あれはもうボクのおもちゃだ」

「所有権を主張するつもりはありませんよ。僕はただ、一刻も早く魔王様をお救いしたい。それだけです」

「はいはい、まあ気長に付き合ってよ。ボクにはボクのやるべきことがあるんだからさ」


 雑に会話を打ち切ったティロは、窓台から下り、歩いて部屋を出ていった。


 エトルはその姿が見えなくなるまで見送ると、再び気配を断ち何処かへと姿を眩ました。


 ***


 町に帰ってきた途端、シマノたちは屈強な獣の戦士に(つか)まり、気が付けば町民総出の大宴会に巻き込まれていた。

 その大宴会をそこそこに切り上げ、シマノ、ユイ、ニニィ、ムルの四人は戦いの疲れを癒すべく宿屋に向かう。キャンは兄弟たちとともに実家に泊まるらしい。


 宿に着くと、疲れからか早々に部屋へ向かったムルを除き、ユイとニニィは何となくシマノの部屋に集まっていた。各々ベッドやら椅子やらに腰掛け、適当に寛ぎながら特に当てもない会話に興じる。


「さてと、これからどうしよっかな……」

「まずは強くなるために修行、かしらねぇ」


 頬に手を当て、小首を傾げながらニニィが呟いた。所謂レベリングというやつか、とシマノは気を重くする。正直なところ、シマノは地道なレベル上げ作業の類があまり好きではなかった。


「うへぇ……どっかに効率いい経験値稼ぎスポットとかないかなぁ……」

「経験値稼ぎなら、クエストが一番」

「確かに。でもこの町のクエストだけじゃすぐやり尽くしちゃうよなー」


 既にシマノたちは採掘所の討伐クエストを終えてしまっている。残るクエストを全てやったとしても、一つの町だけで満足な経験値が得られるとは考え難い。


「かといって、俺たち自由に出歩けないしなぁ……」


 溜息交じりにぼやくと、シマノは背中からベッドに倒れ込んだ。


「あーあ、姫様の指輪があればなぁ」

「そ・れ・な・らっ、ニニィちゃんにおまかせよ♡」


 ふと気が付くと、いつの間にかニニィの顔が目の前にある。ニニィは寝転がったシマノの腹に馬乗りになり、愛くるしい瞳で上からシマノの顔を覗き込んでいた。柔らかな桃色の髪が垂れ、シマノの頬を擽る。


「ちょっ、ちょちょっ降りて! 降りて!」


 見た目一桁年齢女子(大人のおねぇさん)に翻弄され、シマノはあたふたと取り乱している。


「ニニィ、シマノはそういうのに慣れていない。あまりからかうことは非推奨」

「あらあら、ごめんね♡」

「……あれっ、何か俺馬鹿にされてない?」


 ふと冷静になったシマノの言葉もどこ吹く風。ニニィはサッとベッドから離れ、部屋の真ん中に立つと人差し指で自らの頬をぷに、と突いた。


「実はね、ユイの修理の時、あたしファブリカの職人に指輪を見てもらったの」

「ナイスニニィ! で、どうだった?」

「これなら出来そうだーって言ってたけど、今どうなっているかはわからないわね」


 これは朗報だ。職人が指輪を量産してくれるなら話は早い。是非とも現状を見に行きたいところである。


「じゃあファブリカに行って指輪の進捗を確認しないとだな」

「でもでも、どうやって?」


 ニニィの懸念通り、仮にもし指輪が完成していたとしても、今のシマノたちでは受け取りに行く途中で捕まってしまう。


 ――いや、さすがにもう王家も姫様の無事を確認できているだろうし、そろそろ冤罪を晴らせる頃合いではなかろうか。


「王都に行こう。今なら姫様も戻っているだろうし、俺たちの無罪を証明できるはず」


 シマノたちは自由の身となるため、今一度王都アルボスを目指すことにした。

今回の好きなゲーム【ゼルダの伝説 夢をみる島】

コンサートの背景映像でエンディングのネタバレを喰らっていたため、何も恐れることなく清々しい気持ちでSwitch版を遊んだ

原作未プレイなので比較とかはできないけどとても楽しかったです リメイクありがとうございました

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