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第29話-2:「八つ裂きを受け入れますか?」 はい/いいえ

 シマノたちがいるこの廃村は、あちこちに瓦礫が散乱し、荒廃の限りを尽くしていた。その中にもまだギリギリ使えそうな廃屋が辛うじて二、三軒残っている。


 キャンの話によれば、ムルは石をぶつけてきた後、そのうちの一軒に入り込んだようだ。たんこぶをさすりながらしょんぼりと尾を垂らすキャンをその場に残し、シマノと姫様とウティリスはムルがいるその廃屋へと向かった。


「ムルー入るぞー……って、あ゛」


 開けようとした玄関扉がそのまま乾いた音とともに外れ、シマノは朽ちた扉を手にしたまま呆然と立ち尽くした。


「騒がしい。何事だ」


 キャンの言葉通り、そこにはムルの姿があった。珍しくフードを外しており、深海色の双眸がじっとこちらを捉える。

 薄暗い廃屋の中、崩れた屋根から差し込む僅かな日の光が、白く透き通るような髪と肌を妖しげに煌めかせている。


 初めて見るその美しさに、ウティリスは思わず息を呑んだ。

 一方ムルの方は姫様と従者の姿を認識すると露骨に顔をしかめた。


「……何故連れてきた」


 微かに、だが明確に怒気の籠ったその声にシマノはたじろぐ。

 ところが、当の姫様本人は何食わぬ顔で前に出て見せた。


「わたくしがお願いしましたの。シマノは悪くありませんわ」


 少しも悪びれない姫様の様子が気に障ったのか、ムルは顔を背け、シマノたちに背を向けてしまった。


「王家の者に語ることなどない。去れ」


 その言動にシマノは違和感を覚える。ムルたち地底民は地上に住む者に決して良い印象を抱いてはいない。だが、かといってここまで嫌悪するということもなかったはずだ。

 特にムルは、王城や地底で姫様と過ごしている間はここまで当たりがきつくはなかった。


 まさか、シマノたちが落とし穴で落下を続けている間に何かあったのだろうか?


「ムル、どうしてそこまで王家を嫌うんだ?」


 外してしまった扉をその辺に放り投げ、シマノは姫様の右隣に立った。逆側では今にも地底の蛮族を八つ裂きにせんと鼻息を荒げるウティリスが、姫様に抑えつけられている。


 ムルは背を向けたまま黙っている。一応屋内であるから石が飛んでくることはないだろうが、事は慎重に運ぶべきだとシマノは判断する。


「俺たちにも……言えない理由か?」

「…………王家の者のいる場では、話したくない」


 どうやら罪を着せられ地底に追いやられただけではない、深い理由がありそうだ。このアルカナ(ゲーム)歴史(メインストーリー)にもかかわってくるかもしれない。


 シマノはこの会話イベントを深堀りしてみることにした。ついでに、地底では詳しく聞けなかった石の声についてや石の涙での出来事についてもなるべく聞いておきたい。


「姫様、ムルがこう言ってるんで……」


 まずはイベントの妨げとなっている姫様とウティリスにご退場いただこう。シマノは恭しく姫様の様子を窺った。しかし残念ながら、シマノは姫様の視界の片隅にも映っていないようだ。


「石の正体に、気づきましたのね?」

「……っ!!」


 姫様の言葉にムルが動揺を見せた。だがそれ以上に動揺したのがシマノだ。石の正体って、何だ? 石は石じゃないのか? そして姫様がその正体を知っている?

 訳も分からず一人混乱していると、幾分落ち着きを取り戻したらしいムルが先に口を開いた。


「それを知るなら、(われ)がお前たち王族を拒む理由も知っているはずだ。失せよ」


 寧ろ先程までより態度を硬化させた様子のムルに、シマノはますます混乱した。


「ちょーーーーっと待った! あの、俺だけ、置いてけぼりなんですけど!」


 このままでは今後の攻略にかかわるようなストーリーの根幹を聞き逃してしまうかもしれない。シマノは無理やり会話に割り込み、何とかここまでの流れを解説してもらおうと企んだ。


「貴様、凡人の分際で姫様の会話に割り込むとは何事だ」

「うっさい今それどころじゃないわ! ムル、姫様。地底の石って、石の声って、いったい何なんです?」


 シマノは八つ裂き選択肢のウインドウを勢いよく払いのけた。その剣幕に、ウティリスが呆気にとられている。


 呆気にとられたのはウティリスだけではない。姫様も、そしてムルも王族に対する拒絶を一瞬忘れ、ぽかんとした表情を浮かべた。

 それから、ムルはいつになく真剣な表情でシマノを見つめる。


「よかろう。我が話す」


 そう言うとムルは、身に着けていたフード付きポンチョを脱いだ。突然のことに慌てて逸らそうとしたシマノの目線が、固まる。


「これって……」


 ムルの身体。その胴体の中央、ちょうど鳩尾から下腹部にかけて、巨大な鉱石が埋め込まれていた。もはや胴体のほとんどが一つの鉱石に取って代わられているといっても過言ではない。

 その色は、ムルの瞳と同じ深い青色をしている。


「我ら地底の民は、この鉱石を動力源とする人形だ」


 人形、という言葉がシマノの脳内で反芻されていく。まさか、地底民全員、誰かに作られた存在ってことなのか。俺の似顔絵を笑った子も、ユウシェ……の長老も、全員。


「じゃあ、石の声って……」

「我らを作りし主の声だ」


 シマノの脳に激震が走った。何ということだ。主が石? 石がどうやってムルたち地底民を作ったというのか。


 いや、まさか。出来れば考えたくはない選択肢が脳裏に過る。主が、()()()()居るとしたら?


「我らの罪は、主殺しの罪。石の声は、我らに裏切られし主の叫びだ」


 その考えたくはなかった選択肢が当たってしまい、シマノは唇を噛んだ。薄暗い廃屋を、重苦しい空気が支配していった。

今回の好きなゲーム【ポケットモンスター ピカチュウ】

初めて遊んだポケモン 対戦勢ではなかったので殿堂入り後はリセットしてストーリー周回して遊んでた

MOTHERより先にこちらに触れたので、現代で自転車乗ったり釣りしたりミックスオレで回復させたりするのが新鮮でとても良かった

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