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第28話-1:来ちゃった♡

「報告は済んだか?」


 酒場を出ると、喧騒を嫌い外で待っていたムルが声をかけてきた。目深に被ったフードの奥に隠された青い瞳が、ジェニィの姿を捉え、止まる。


「あらっ、この方がムルさんかい!? キャンの母のジェニィです~! 息子が大変お世話になってます~!」

「……」


 ジェニィの怒涛の挨拶にムルは完全に固まっている。数秒の後、ムルはぎこちなく会釈だけを返した。


「かーちゃん、ムルが困ってるだろ!」

「やだあたしったらごめんなさいねぇ~!」


 ジェニィはあっはっはと豪快に笑うと、パンパンと手を叩きシマノたちに声をかける。


「さぁさ、立ち話もなんだ、皆さんウチでお昼でも食べてっとくれ!」


 既に日は高く昇りきり、お昼の時間を大分過ぎている。風の魔物や亀裂のことですっかり忘れていた空腹が急激に蘇り、シマノのお腹に豪快な音を立てさせた。


「アッハハハハ~シマノ腹ペコじゃねーか!」


 散々笑い転げているキャンだったが、こちらもシマノ同様、いやむしろ上回る音量でお腹の虫が吠えた。


「ほらほら、二人とも早くいらっしゃい! ユイさんとムルさんも!」

「ごめんなさい、ジェニィさん。私の身体は食事を必要としません」

「我もだ」


 二人に断られ、そうなのかい……とがっかりした様子のジェニィを見て、シマノは何だか申し訳ないような気持ちになった。


 とはいえ、この騒がしい親子に対して自分一人ではあまりにも心許ない。せめてニニィがいてくれたら。


「あらぁ、じゃぁニニィちゃんがご一緒しちゃおうかしら♡」


 待ち望んでいたその声に、シマノもユイもムルもキャンも振り返る。鮮やかな桃色のストレートロングヘアー。上向きにピンと尖った耳。パッチリとした大きな瞳にぷにぷにのほっぺた。


「ニニィ!!」


 シマノたち四人が一斉にニニィに駆け寄り、ジェニィもその後に続いた。


 ***


「さぁさ、遠慮せずたぁんと食べとくれ!」


 次から次へと食卓に並ぶ大皿、大皿、大皿。思わず胃をさすりながら、一人じゃなくてよかった、と心の底から実感するシマノであった。


 だが、シマノの自身の胃に対する心配は杞憂に終わるかもしれない。次々と並ぶ料理を、これまた次々とキャンが平らげていくのだ。いったいその小柄な身体のどこに大量の食材が格納されていくのか。シマノもニニィもただ呆然と見守ることしかできなかった。


 酒場から歩いてすぐのところにあるキャンの家は広く、母子二人には手に余る数の部屋を有していた。ジェニィのご厚意に甘え、今日はその部屋をいくつかお借りして寝泊まりすることになっている。食事を取らないユイとムルは一足先に部屋で休んでいるようだ。


「ウチは五人兄弟だったからね。他の子たちはもうみんな出ちまったけどさ」


 思う存分料理の腕を振るいきったのか、満足した様子のジェニィがようやく食事の席についた。


「兄弟って、結構歳離れてるんですか?」

「何言ってんだよシマノ。兄弟なんだからみんな一緒だろ」

「コラッ失礼な口きくんじゃないよ! ごめんなさいねシマノさん~。あたしらは一度に三、四人産むのが普通なのさ。外の人はそうじゃないんだろ?」


 恐らく元となっている獣の種類にもよるのだろうが、獣人とヒトとの生態の違いにシマノは素直に感心した。


 同時に、年齢が同じなら何故キャンだけが残っているのか、という疑問が浮かぶ。


「この町の子はみんな年頃になったら修行の旅に出ていくのさ。一人前の獣の戦士になるためにね」


 シマノの疑問を見越したかの如く語りだしたジェニィに、シマノもニニィも黙って耳を傾ける。


「ただ、この子は身体が小さくてねぇ。力も無いもんだから送り出そうにも心配で」

「まあ、そうだったんですねぇ……」


 ニニィが共感して頷いてみせる。当のキャン本人は、そんなやり取りを全く意に介さず一心不乱に食事をかき込んでいるが、その耳は赤く染まっている。


「おまけにこの子ったら勇者になるんだー、パーティを組むんだーって、言い出したらもう聞かなくて。そんなこと言ったって組んでくれるような人もいないし、毎日毎日酒場に行ってはがっかりして帰ってきてねぇ……」

「ごちそうさま! おやすみ!」


 ジェニィの話を遮るように大声で言うと、キャンはそのまま勢いよく自室へと戻っていった。


「寝る前にハミガキしな!」


 ジェニィの言葉が聞こえたのかいないのか、キャンの部屋の扉がバタンと大きな音を立てて閉まった。


「シマノさん、キャンとパーティを組んでくれて本当にありがとうございます。どうか、息子をよろしくお願いします」


 改まって深々と頭を下げられ、シマノも、さらにつられてニニィも頭を下げた。


「お茶でも淹れましょうかね。どうぞゆっくりしてってちょうだいね」


 ジェニィが淹れてくれたお茶を湯呑みから啜り、シマノとニニィは満腹感に浸りながらぼーっとしていた。ジェニィは食事の片づけを手早く終えると、二人に先に休むと告げ寝室へと向かったようだ。


「あたし、ゼノのアジト行ってきちゃった」

今回の好きなゲーム【地球防衛軍2】

EDF! EDF!

うっかり近所のゲーム屋で買ってものの見事にハマってしまった

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