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第20話-1:※よい子は真似しないでください

「おーい置いてくぞー!」


 先ほど仲間になったばかりの獣キッズ「キャン」の声が遥か頭上から響いてくる。シマノたち一行は、次の目的地である採掘所を目指して今まさに岩山登山の真っ最中だ。


「ま……待ってぇ……」


 パーティの最後尾で情けない声を発しているのがシマノである。アルカナに来る前のことをはっきりとは思い出せないシマノだが、たぶん運動は苦手なタイプだったのだろう。そう思わせる程度の疲労困憊ぶりだった。


「早くしねーと夜になっちゃうぞー」


 キャンがここぞとばかりに煽りちらしている。その横を涼しげな顔でムルが追い越していく。


「あっ、こらっ、先行くなって!」


 何が何でも先頭を歩きたいのか、キャンは慌ててムルの後を追っていった。取り残されたシマノを気遣い、ユイが歩を緩める。


「シマノは体力の限界が近い。私の背に乗ることを推奨」


 そう言ってユイはシマノに背を向けてかがみ込んだ。


「おんぶってこと?」


 ユイはさも当然といった風に頷いている。


「シマノ、早く」

「いやいやさすがにそれは無理だって!」


 いくらなんでもシマノにだって男の矜持というものがある。機械製とはいえ自分より推定年下(?)の少女におんぶされるなんて情けなさすぎてとても耐えられない。


 あまりにも必死で拒否してくるシマノに、ユイは少し戸惑っているようだ。


「シマノは私をおぶってファブリカまで運んだのでしょう?」

「それはそれ、これはこれ!」


 シマノの的を射ない説明に、ユイはますますわからないといった表情を浮かべる。


「シマノがイヤならあたしをおんぶして~! あたしもうヘトヘト~!」


 どうやらニニィにもこの山道はきつかったらしい。少し先を歩いていたところをわざわざ戻ってきてユイに泣きついている。仕方ないなとユイが僅かに微笑み、ニニィをおぶって歩き出した。


「また笑った……?」


 修理から戻って以来、シマノにはユイの表情がほんの少しだけ柔らかくなったように思えて仕方ないのであった。


 さて、そんなことより登山である。キャンとムルが先頭を歩き、ニニィを背負ったユイが続き、最後尾で息切れしながらシマノが何とか食らいついている。

 ユイは心配そうに時折立ち止まってこちらを見てくれてはいるが、それでシマノの疲労が回復するわけでもない。


「くっそー……これがゲームならスティック倒しとくだけなのに……」


 ぶつくさと文句を言いながら、シマノはふと自分の言葉を反芻し立ち止まった。


「ゲームなら……?」


 そうだ、確か移動時に使える裏技があったはず。シマノはしばらく道が真っ直ぐ続いていることを確認すると、くるりと真後ろを向き、そのまま後ろ向きに歩き出した。


「うおおおおお楽だあああああ」


 プレイヤーが視点を固定したまま後ろ向きに移動すると、何故か移動速度が上がる。ゲームプレイ時に大変お世話になった定番グリッチだ。

 足取り軽く、シマノはずんずんと先へ進んでいく。あっという間にユイたちを追い越し、そのままの勢いでキャンたちに追いつこうとする。


「これならいくらでも登れそうだな!」


 有頂天で歩くシマノは、とうとうキャンとムルに並んだ。


「お・さ・き~」


 渾身のドヤ顔でキャンに手を振り、シマノは二人を追い越してさらに先へ進もうと加速する。

 その後頭部に前触れもなく強い衝撃が走った。


「ぁだっ!!」


 突然の痛みにシマノは頭を押さえながらしゃがみ込んだ。振り向くと、シマノ一人分とほぼ同じサイズの岩壁が生えている。


「敵だ。止まれ」


 ムルが生やしたばかりの壁を崩して手短に告げた。


「も、もうちょっと優しい止め方にしてほしかった……」


 涙目で訴えるシマノに、ムルははて? と言いたげな顔で首を傾げる。その様子を見たキャンがゲラゲラ笑っているところに、ニニィとユイが追いついた。


「で、敵……って、どこなの?」


 ニニィがそう言って辺りを見回す。シマノも同じく見回すが、確かに敵らしき姿はどこにも見当たらない。


「どうだ?」

「んー逃げたなー」


 ムルの問いかけにキャンが答える。要するに、今この場に敵はいないということだ。


「ぶ、ぶつかり損……」


 シマノががっくりと肩を落とし、ニニィがぽんぽんと背中を叩いた。


「でも、まだ近くにいるぜ?」


 皆の前に出て鼻をヒクヒクと動かし、キャンは真っ直ぐ前方を指差す。


「あっちだ。採掘所の方にいる」

「へー、すごいなキャン」


 シマノに感心されると、キャンは急に腕組みをし目を逸らした。


「べ、別に? こんなん全然大した事ねーし?」


 そう言いながらも尻尾はブンブン千切れんばかりに揺れている。わかりやすいやつだ、とキャン以外の全員が思った。


「さ、採掘所はもうすぐそこだ! 行くぜっ!」


 キャンの掛け声に続き、一行は採掘所へと向かっていった。

今回の好きなゲーム【スプラトゥーン3】

ヒーローモードありがとう クマサン商会ありがとう

バイトがこんなに進化すると思ってなかったのでとても感謝しています

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