表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/56

第16話-2:ユウシェ

「地上の者は地底で暮らせない。ここには食物も日光も届かない。行くのならば『サピ』へ行け」

「知の街『サピ』ね……確かにあそこなら王都の追手も入れないかも……」


 地上に戻れそうな流れに気をよくしたニニィがうんうんと頷きながら呟いている。姫もユイも納得しているようだ。一方シマノはひとり話についていきそびれてしまった。


「ちょっと待って。まず、地底に食物がないって……?」

「我らは石に触れることで力を貰っている。地上の者たちのような食事は必要としない」


 それは初耳だった。地底に追いやられた一族、にしては随分と適応しているんだな……とシマノは考える。


「で、サピっていうのは?」

「世界中の叡智が集まる『知の街』。自治権があり、たとえ王都の軍でも強制捜査は不可能」

「へえー、なんか賢そうな街だなー」


 知性の欠片も見受けられないシマノの回答にユイが呆れたような視線を向ける。


「サピも洞窟を経由して行くことができる。我らの次の目的地に適した街だ」


 ムルの隣で長老がコクコクと頷いている。


「よし、じゃあ早速そのサピに行ってみよう!」

「わたくしはここに残りますわ」


 ずっと黙ったまま話の流れに身を委ねていたはずの姫から出た唐突な宣言をうまく呑み込めず、皆の動きが停止する。


「……姫様、話聞いてました? 地底には食べ物も何も無いって……」

「構いませんわ。わたくし、ここで為さねばならないことがありますの」


 駄目だ、全然話が通じない。シマノがニニィに目線で助力を願い出ると、ニニィは眉間に皺を寄せながらも小さく頷いてくれた。


「ねぇねぇお姫様。それって地底じゃないと出来ないことなの? あたしたちでもお手伝いできるかしら?」


 ニニィの申し出に姫はふうと溜息を吐く。


「心配ご無用。ここまで連れてきてくださったこと、感謝しますわ。ここからはわたくし一人で十分ですの」

「でもでも、帰るときとか困っちゃうんじゃない?」


 食い下がるニニィに姫が右手の甲を見せた。姫の中指には豪奢な金色の指輪が輝いている。


「これさえあれば、何も問題なんてありませんわ」


 言い終えると同時に指輪の石が強い光を放つ。シマノたちが思わず目を閉じ、数秒ののちに目を開くと、そこに姫の姿はなかった。


「姫様っ!?」

「ここですわ」


 背後から聞こえた声に急いで振り返ると、姫は何事もなかったかのように涼しい顔で立っていた。


「……ワープ機能」


 ユイの言葉に姫が目を丸くする。


「あら、よくわかりましたわね」

「えーっ! 便利アイテム! 羨ましい!」


 相変わらず心の声が駄々洩れなシマノに、姫もさすがに慣れたようで軽くスルーしている。


「そういうわけで、帰ろうと思えばいつでも帰れますの。だからわたくしのことは気にせず先にお行きなさい」


 その言葉に遠慮なく甘え、シマノたちは姫を残して次の街『サピ』へと向かうことにした。


「ユウシェ……キヲッケ……」


 長老がシマノに何か一生懸命話しかけている。


「えっと……?」

「『勇者、気をつけて』と言っている」

「なるほど。ありがとうございます、気をつけて行ってきます」


 勇者だと思い込まれているのは気にかかるが、まあこういうのは深く気にしたら負けだ。


「ユウシェ……」


 鳴き声みたいで微笑ましいな、と頬を緩ませつつ、シマノは里を後にした。


 ***


「あの機械の小娘!! よくも!! アタシを!! コケにしてくれたわね!!」


 人の姿に戻った幹部の女が声を荒げ、壁を殴り、椅子をなぎ倒して暴れまわっている。


「許さない……許さないわ……アタシの蜘蛛たちの恨み……!!」


 滅茶苦茶に荒れた部屋で俯きわなわなと怒りに肩を震わせる女を、一人の男が眺めていた。

 ゆったりとしたローブのようなものを羽織った背の高い男。その表情はフードに隠れているが、口元には穏やかな笑みを浮かべているように見える。


「困りましたね。彼らにはまだ利用価値がある。貴女に殺させるわけにはいかないのですが」


 その声で我に返った幹部の女は慌てて男に一礼し、跪いた。


「申し訳ございません、エトル様。エトル様に連れ戻しのお手間を掛けさせてしまったというのに、アタシったらまた奴らに手を出そうと……」

「気にしていませんよ、セクィ。僕の方こそさっきは荒っぽいやり方になってしまって。怪我はありませんか?」

「!! 勿体ないお言葉......! アタシ次こそ必ずエトル様のお望み通りの働きをしてみせます!」


 セクィの言葉にエトルはふっと優しげに微笑んだ。


「期待していますよ」


 その言葉だけを残し、エトルは姿をくらました。一人残ったセクィは頬を赤らめ、潤んだ瞳でうわ言のようにエトルの名を呟きながら、彼のいた場所をじっと見つめ続けていた。

今回の好きなゲーム【ゼノブレイド】

とにかく楽しくて最初から最後までずっとのめり込んで遊べた作品

最初にガウル平原出た時のワクワク感と縄張りバルバロッサに追われた恐怖が至高

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ