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第80話-2:仲間とはいいとこで現れるものである

※流血ほかかなり痛そうな描写が出ます!

 それはエトルにとって、決定的な一言だったようだ。


「は…………?」


 告げられた事実を受け止めきれなかったのか、半ば笑うような、混乱した声がシマノの背後から聞こえてきた。シマノはさらに語り続ける。


「あんたが死んだ直後だった。魔王は自分で自分のデータを破壊して……死んだんだ」

「そ……んな……」

「たぶんあんたの妹は、今だって死のうと思えばいつでも死ねる状態なんだ」


 その時、シマノには背後にいたエトルが膝をついたのが分かった。と同時に、飛び散った生温かい何かがシマノの背に掛かる。


 エトルが、自らの腹を剣で貫いていた。


「この馬鹿……っ!」


 シマノが一目散に駆け寄ると、エトルが縋るようにしがみついてきた。自らの腹に刺した剣を引き抜き、今度はシマノの手に無理矢理握らせようとしてくる。


「僕を殺してくださいシマノ……早く……」


 遠くでニニィが悲鳴を上げている。周囲の炎は消えているようだが、腰を抜かしたのかこちらに来る様子はない。

 頭上の魔王も激しい叫び声を上げ、これまでより大きく次々と形を変え始めた。二人の様子に胸を痛めながら、シマノは縋るエトルを振り払い、剣を叩き落とし、逆にこちらから肩を掴んで懸命に呼びかけた。


「何言ってるんだよ……!」

「僕のせいでトワが死ねないなんて、そんなこと耐えられません、早く、早く」


 譫言(うわごと)のように繰り返すエトルに、シマノはとうとう堪らず叫んだ。


「っざけんな!!!!」


 凡人の握力で、シマノはエトルの胸倉を両手で掴む。凡人の腕力で、掴んだ胸倉を僅かに持ち上げる。

 そして凡人の石頭で、全力の頭突きをお見舞いした。


「トワは、あんたの妹は、まだ生きてるんだ。あんなにぐちゃぐちゃになっても、それでも生き続けてる。それがなんでか、ここまで来てわからないのかよ!?」


 シマノもエトルも、全身を貫く苦痛に慣れ切った彼らは既に頭突きの痛みなど感じることはできない。

 だがそれでも、激しくぶつかり合いほんのりと熱を持った額が、二人の想いを過熱させていた。

 胸倉を掴まれた腕を振り払い、エトルはシマノの横面を殴り飛ばした。


「貴方にはわからないでしょう。妹を救えず、同族も全て喪い、一人だけ途方もない時を生きながらえたくせに、何の役目も果たせないどころか、よりによって僕の存在自体が妹を苦しめていたなんて……!」

「わかるよ!」

「何がわかるというんです」


 このままでは平行線だ。シマノはエトルに、自身の、この世界に来る前の過去を明かすと決めた。


「俺にもさ、妹が()()んだ。妹のためなら、何だって出来るって思ってた。でも、駄目だった。間に合わなかったんだ」

「……亡くなった、のですか」


 シマノは頷いた。


「結局俺は、妹のために何もしてやれなかった。……あんたの妹は、まだ生きてるだろ。俺は、あんたたちを助けたい。俺の妹はもう死んじゃったけど、あんたたちはまだやり直せるんだ」

「……」


 シマノの話を聞き、エトルは黙り込んでしまった。シマノは殴られた頬をさすりながら、じっとエトルの言葉を待つ。既に腫れも痛みも完全に引いていた。


 暫く待ってもエトルはじっと何かを考えこむように黙ったままだった。痺れを切らしたシマノが声を掛けようとしたその時、先にエトルの名を呼んだものがいた。


「ねぇ、エトル」


 闇の炎から解放され、漸く落ち着いた状況に安堵したのだろうか。ニニィがおずおずとこちらに歩み寄り、エトルに声を掛けた。


「あたしからもお願い。あたしの力ならいくら使っても構わない。でも、あなたもあたしも、シマノたちも、誰かを犠牲にするのは、もうやめて」


 ニニィの言葉の終わりに被せて、騒がしい声がシマノたちの耳に届いた。


「シマノ!」

「エトル様!!」


 岩のドームのすぐ横の地面に穴が開き、ユイが、続いてセクィが、そしてムル、キャンまでも何故かひょっこりと顔を覗かせていた。どうやらドームの中から穴を掘って無理矢理出てきたらしい。


「私も、シマノと想いは同じ。この世界を生み出してしまった者として、シマノの妹から想いを託された者として、エトル、私も貴方たちを助けたい」


「アタシの命はエトル様と共に在ります。エトル様のお力が無ければ、この体を維持することも出来ません。エトル様のいない世界で生きるなんて耐えられません。そんなこと、エトル様ご自身が、一番、よくわかっているでしょう……?」


「勇者は、ムエキナセッショーはしないんだぜっ!」


聖騎士(パラディン)ではなかったのか……? まあ良い。エトル。我らは今も、主の声と共に在る。お前の妹も例外ではない。今、我に届くその声は、この部屋に足を踏み入れてから最も凪いでいる。それが答えではないか」


 皆の声を聞き、それでもエトルは黙っている。だが、僅かにたじろぐような素振りが見えた。


「エトル」


 もう一押しだ。シマノは短く息を吐き、エトルに思いの丈をぶつける。


「『もうあなたは十分傷ついた。ここからは、私に任せて』……って。きっと、俺の妹ならそう言うんだ。もう遅いけどさ、俺だって妹のために一度ぐらい、主役ぶってみたいんだよ」


 右手を差し出し、シマノはエトルの返事を待つ。


 その手を、エトルの両手が、掴んだ。


「……どうか妹を、トワを……救ってください」


 膝をつき、項垂れるエトルの表情は、長い髪に隠れて窺い知れない。

 しかしその想いを、強く握られた掌からシマノは確かに受け取った。


「任せとけ。あんたの妹を、この世界を救うのは、俺だ」


 珍しくバッチリ決まったその空気をぶち壊すがごとく、キャンがシマノの後頭部を思いっきりひっぱたいた。


「なーに言ってんだよシマノ! 独りでカッコつけんなって」

「ぁだっ!?」


 見れば仲間たちは全員穴から抜け出し、シマノとエトルの周りに集まっていた。セクィは我先にとエトルに駆け寄り、傍に寄り添っている。


「主の助けとなる貴重な機会、お前一人に譲る気はないぞ」


 そう言ってムルは少し離れた地点に顔を向ける。


「お前も同じ気持ちなのだろう? ニニィ」


 ニニィは気まずそうに視線を逸らしている。そうだ、この二周目のニニィとはまだ和解できていないんだった、とシマノは俄かに焦り出した。

 こうなったら勢いで何とかするしかない。


「ニニィ! 一緒にトワを救おう! そろそろこのパーティには大人のおねぇさんが必要です!!」


 もう少し言い方というものがあったのではないだろうか。勢いだけでぶちまけてしまったシマノは、正直後悔した。

 ところが、思いの外ニニィにはこれが刺さったようである。


「仕方ないわね、困ったときはニニィちゃんにお任せ♡」


「JOINED」


 無事、ニニィのパーティ再加入を完了することができた。勢いも意外と侮れないものである。


「シマノ」


 ユイが、シマノ以外でこれが二周目であることを知る唯一の人物・ユイが、いつになく真面目な様子でシマノに声を掛ける。


「これが本当に最後の戦い。覚悟は、できている?」

「もちろん」

「了解。一緒にこの世界を救おう。私の中のカナミの記憶(データ)も、一緒に」


 シマノとユイは互いに頷き合い、頭上の魔王を見上げた。

 魔王トワの救済。これが本当に最後の大仕事だ。

今回の好きなゲーム・番外編【ときめきメモリアル Girl's Side】

高校卒業後の春休みに合宿してみんなで攻略した思い出。

全員完全初見で葉月珪を狙いにいったらパラ上げ全然足りなかった。無謀だったと思う。

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