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第一章 天才児と問題児と奮闘記(後編) その2




            6



 引ったくり犯は路地から大きい通りに出た。ここはこの時間帯、通行人が異様に増える。


 あの少女から金が入っているのであろうポーチを引ったくった後、何かチャラチャラした野郎が追いかけてきたが、大丈夫だと思う。ここらへんはガキの頃からの馴染みの道だから、誰よりも早くスムーズに進める自信がある。あのチャラ男は今頃、道に迷ってオロオロしていることだろう。あとはこの人ごみに紛れて、完全にサヨナラさせてもらう。


「ははっ。この金があれば、当分は遊んで暮らせるぜ」


 お約束のセリフを吐きながら、引ったくり犯がポーチの中身を確認しようとしたその時、


「うらあっ! 某有名小説でもないんだから、思い切って皮剥ぎなんかしちゃだめでしょーがッ!」


 後ろから叫び声が聞こえたと思ったら、突然体に激痛が走った。崩れ落ちる直前、自分の体に突きつけられたそれが目に入った。


「……て、めっ。スタンガンとかせけえぞ……!」


 後ろに立つ少年は手に持った護身用の武器をバチバチさせながら、にたあ、と悪魔のような笑みを浮かべていた。


「ふっ。頭良いやつは頭使って、より安全に、より楽に相手を倒すんだよ」


 なかなか威厳のないセリフだった。


「んじゃ、ポーチは回収させてもらう。通報はしないでやるから、有難く思うんだぜ」


 少年は地面に転がったポーチを拾い、引ったくり犯の目の前でこれ見よがしにぷらぷらさせた。すっごいイラついた。


「覚えてろよ……!」


 意識が朦朧とする中、引ったくり犯は恨めしそうに声を上げた。


「ああ? 覚えててはやるけど、それ以上はないよ?」


 少年はポーチを肩に掛けながら、軽い口調で言った。


「……はっ。言うじゃねーか」


 引ったくり犯は続けた。


「お前、普通の人間じゃねーだろ?」


「あ?」


 引ったくり犯は、くくく、と声を漏らした。


「分かんだよ。お前は普通じゃない」


「だったら何だっつーんだ」


 気持ち悪いやつだな、と少年は思っているだろう。


「こんなことして、お前に得はねえぞ。あの女だって、お前なんか信じてない。なんたって、俺らみたいなやつは所詮、世間のつまはじき者なんだよ」


「……」


「上でも下でも、飛び出たヤツははじき出される……。普通、っつうレールからはみ出した俺らに、普通の幸せなんて……ぐへっ!」


 二回目の電気ショックに、引ったくり犯の意識が完全に吹っ飛んだ。


「んなもん百も承知。次、あいつに何かしたら、これで心臓マッサージしてやっからな」



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