最終章 真堂守哉と神掛ゆんと奮闘記(後編)その4
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玄関に駆けつけた爺やはその場に立ち尽くしていた。
彼の目に映るのは、業火のように燃える大広間……などではない。爆発による広間の被害はそんな大層なものではなく、まるで大型の手榴弾で吹き飛ばされたようなボロボロの玄関の扉だけがそこにはあった。
「これは……?」
犯人が玄関を爆破して屋敷に侵入したのか、と考えたが、瓦礫や塵が埋め尽くす床に誰かが歩いたような痕跡は見当たらない。だとすればこれは……。
「フェイク……。っ! お嬢様が!」
そう言って走り出そうとする爺やに、どこかから声が掛かった。
「じ、爺や」
振り返ると、そこには先ほど自分から事情を聞きだすなり飛び出していった明歌がいた。
「め、明歌殿! 今までどこへ……心配しておりましたぞ!」
「す、すいません……。そ、それにしてもこれって」
明歌は無惨に吹き飛ばされた玄関を指差す。
「これは罠です! 明歌殿、行きますぞ! 早くしないと、犯人がお嬢様の部屋に辿り着いてしま……」
「犯人なら、別邸にいるらしいですよ。守哉君が、間違いないって……」
「は、は?」
呆気にとられる爺やに、「ですから」と明歌が口を開く。
「守哉君が言うには、犯人はグレネード弾で殺すことに執着を持っているから、直接ゆんちゃんの元に出向いてくる、ということはないらしいです。犯人はきっと犯行後の逃走も考えているっても言っていたから……、きっとこれは私たちを錯乱させるためのものじゃないでしょうか?」
明歌の説明も、爺やは唖然として聞いていた。
「な、なるほど……。な、なら、お嬢様は無事なのですな……?」
「そういうことになりますね」
その一言に、爺やはほっ、と胸を撫で下ろす。そして、真剣な顔で明歌を見る。
「守哉殿は、行ったのですか」
「……はい」
「そうですか」その意味を悟ったように、爺やはため息を漏らす。
「私は守哉殿がここに来てくれて、本当に良かったと思っています。彼は、とても誠実で、とても素直で、とても……心優しい好青年でした」
「爺や……」
「彼はお嬢様にとっても、私にとっても特別な存在でした」
「ええ。私もです……」
「だから、彼にはもっと生きていて欲しかった。そう、もっと生きていて……!」
爺やの頬には、涙が伝っていた。爺やは「すいません」と言ってハンカチを取り出し、皺の刻まれた頬を伝うそれを拭き取る。
その様子を眺めてから、明歌は小さく微笑んだ。
「爺や、大丈夫ですよ」
「……? 何がですか?」
「守哉君は死んだりしません。根拠とか、そういうものは全く無いですけど……。とにかく、彼がこんなところで死ぬなんて、ありえませんよ」
自分で言っていて恥ずかしくなったのか、明歌は顔を赤くして笑った。
「約束、しましたから」




